日立と東北大、金属用3Dプリンタによるハイエントロピー合金の積層造形技術を開発
2016/02/19 13:30
日立製作所と東北大学は、金属用3Dプリンタを用いて強度と耐食性に優れたハイエントロピー合金(HiPEACE)を作り出す積層造形技術を開発した。化学プラントなどの設備用部品の製造に用いることで、設備の長寿命化や稼働率向上に寄与するという。
化学プラントや油井、ガス井掘削設備などの部品は、強い腐食性ガスにさらされるため、高い強度と耐食性が求められる。日立と東北大は、引張強度や耐摩耗性、耐食性に優れたハイエントロピー合金に着目し、2014年から技術開発を進めてきた。
ハイエントロピー合金は多種類の元素で構成されているため、鋳造時に組成ムラを生じやすく、高硬度であるために加工が難しいという課題があった。そこで日立と東北大は金属用3Dプリンタを用いて、高硬度の金属間化合物を網目状に析出させることにより、鋳造時に比べて引張強度を1.4倍高めることに成功していた。今回はその技術を発展させて、3Dプリンタによる製造工程の局所溶融・急冷凝固プロセスを最適化したハイエントロピー合金の積層造形技術を生み出したことになる。
ハイエントロピー合金を積層造形する際には、平坦に敷き詰められた70µm程度の厚さの金属粉末に電子ビームを照射し、必要な部分だけ溶融・凝固させて層を形成する工程を繰り返す。このとき、凝固速度が速くなるほど金属間化合物が微細になって均一に分散し、引張強度や耐食性が改善されることを突き止めたという。
そこで、電子ビームのエネルギーと照射時の走査速度に加えて、ハイエントロピー合金の粉末を溶融させる前に電子ビームを粉末全体に照射する予熱プロセスに着目。ハイエントロピー合金を材料として、組成ムラがなく均質で複雑な形状部品の製造が可能となった。従来の1.2倍の引張強度と、1.7倍の孔食電位の両立に成功したという
今後は実用化に向けて、実使用環境における実証実験を進める計画としている。