NASA、火星の大気から酸素を生成する装置「MOXIE」を開発——有人探査へ向けた第一歩
2021/05/01 07:00
NASAの火星探査車「Perseverance」は、2021年2月18日(米国時間)、火星に無事着陸した。NASAは火星有人探査の準備を進めており、Perseveranceは火星の空気を酸素に変換する装置「MOXIE」を搭載している。
宇宙飛行士を火星に送るにあたって最も難しいことの1つは、彼らを帰還させることだ。火星の表面でロケットを発射させるには、ロケット燃料と共に推進剤を作り出す莫大な量の酸素が必要になる。乗組員が4人の場合、ロケット燃料7トンから推力を得るには25トンもの酸素が必要になる。これは人間の呼吸量の何百万倍にも当たる量だ。
目的地の火星で大気から酸素を生成できれば、火星への最初の有人飛行がより簡単で安全になり、より安価になる。MOXIEは「Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment(火星酸素現場資源活用実験)」から名付けられた第1世代の酸素生成器であり、今回の火星探査ミッション中にその技術を実証実験する予定だ。
MOXIEは、火星の大気中から大気の96%を占める二酸化炭素を取り込み、電気化学プロセスを利用して二酸化炭素分子(CO2)を酸素原子1個と一酸化炭素(CO)に分解する。システム内で生成ガスを分析し、生成された酸素の量や純度、システムがどの程度効率的に機能しているかを確認する。その後、ガスは全て火星の大気中に放出される。この電気化学変換処理時には約800℃という高温になるため、MOXIEにはさまざまな耐熱素材が使用されている。
MOXIEはPerseverance内部(前方右側)に設置されており、質量17.1kg、体積239×239×309mmと、自動車のバッテリーほどの大きさだ。1時間あたり約6〜10gの酸素を生成するように設計されている。これは小型犬が呼吸するのにほぼ十分な量だ。
実験は火星探査ミッション期間中に断続的に実施される予定で、1回の実験で約1時間、酸素を生成する。
(fabcross for エンジニアより転載)