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安価なエネルギー貯蔵方法となる環境に優しいプロトン電池

Credit: RMIT University

豪ロイヤルメルボルン工科(RMIT)大学の研究チームが、リチウムイオン電池などの二次電池技術に代わる、プロトン電池を開発した。すでに、同技術に関して国際特許を取得しており、安全で手頃な価格の環境に優しいエネルギー貯蔵技術を提供できるとしている。

国際合意されている2030年までの温室効果ガス削減目標達成には、世界の再生可能エネルギーシステムへの移行が不可欠であるため、低コストで環境負荷の少ない蓄電システム開発が必要とされる。

今回開発したプロトン電池は、水電解と燃料電池反応が同一のセルで生じる可逆セルと、水素貯蔵電極を組み合わせたシステムだ。充電時には、水は酸素ガスと水素イオンに分解され、水素イオンは水素側の炭素電極に貯蔵される。放電時には、燃料電池のように働き、炭素電極から水素イオンが酸素極に移動して酸素ガスと反応し電気と水を生成する。燃料電池と異なり、高圧下で水素ガスを貯蔵し、再び水素分子を分解する、エネルギーを消費して安全上問題のあるプロセスを回避できるという。

RMIT大学のJohn Andrews教授は、「私たちのプロトン電池は、従来の水素システムよりもはるかに低損失で、さらに単位質量当たりのエネルギーがすでに市販のリチウムイオン電池に匹敵しています。また、非常に高速な充電が可能です」と説明した。

プロトン電池は、使用する材料が比較的安価で豊富であり、さらに、再生と再利用、リサイクルが可能であるため、使用後の環境負荷が少ない。また、ほぼ常温/常圧で作動でき、低コストで安全な運用が可能だ。

2022年7月9日、「Journal of Power Sources」誌に掲載された研究チームの報告によると、同プロトン電池は炭素電極内に2.2wt%の水素を貯蔵可能であり、この値は他の電気化学的水素貯蔵システムの2倍以上とのことだ。

RMIT大学の研究チームは現在、自動車部品サプライヤーの伊Eldorと2年間の共同研究に着手しており、家庭用と商業用のさまざまなニーズを満たす蓄電容量を持つバッテリー開発に取り組んでいる。

fabcross for エンジニアより転載)

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