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オーストラリアの科学者、3Dプリントで強固なチタン合金メタマテリアルを開発

Credit: RMIT

オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームは2024年2月26日、3Dプリンティングを使い、一般的なチタン合金を素材として、これまでになく強固な性質を有する、人工材料「メタマテリアル」を作製することに成功したと発表した。管状中空支柱を格子状に組んだ構造に、薄板を格子状に組んだ構造を統合した二重格子構造体を考案したもので、極めて高い重量比強度を達成した。3Dプリンティング技術は「レーザー粉末床溶融結合法」を採用し、数mmから数mサイズまでスケールアップが可能だ。チタン合金の有する優れた比強度および生体適合性、耐食性、耐熱性を活かして、骨インプラントなどの医療デバイスから航空機やロボットの部材まで多くの用途に適用できると期待している。研究成果が、2023年12月31日に『Advanced Materials』誌に公開されている。

3Dプリンティングなど積層造形技術の発展により、自然界にない構造、または自然界に存在するものの従来の製造技術では作製が難しい構造を実現する、メタマテリアルの研究開発が活発に行われるようになっている。その中で、中空支柱を格子状に組んだ中空支柱格子構造「HSL(Hollow-Strut Lattice)」が提案され、高強度と軽量化に基づく優れた重量比強度とともに、マイクロ流体など新しい機能を発揮することが期待されている。

HSLは、ビクトリアスイレンなど中空有茎植物、またはオルガンパイプサンゴ(クダサンゴ)など強くて丈夫な植物からヒントを得ており、その構造の人工的な再現が10数年に渡り試みられてきた。だが、「製造性に関わる課題とともに、荷重負荷条件で中空支柱結節部における応力集中に起因する、構造強度上の問題が発生して必ずしも成功してない」と、研究チームは語る。「複雑な構造のメタマテリアルでは応力が均質に分散されるのが理想であるが、半分以下の材料部分のみが圧縮荷重を支え、材料の大部分は構造的に役割を果たしていない」と説明する。

研究チームは、応力をもっと均質に分散し構造効率を向上するため、HSLに加えて、薄板を格子状に組んだ構造TPLを統合する二重格子構造体TP-HSLを考案した。同時に、3Dプリンティングとして、高出力レーザービームにより金属粉末層を溶融して順次造形するレーザー粉末床溶融結合法を採用した。Ti-6Al-4V合金粉を用いてTP-HSLメタマテリアルを造形した結果、荷重負荷の際の応力を均質に分散することが可能になり、亀裂などが発生しやすい応力集中箇所を回避することに成功した。

材料密度が1.0~1.8g/cm3と超軽量であり、航空宇宙分野で使用されている、鋳造マグネシウム合金「WE54」よりも50%高い強度を示すことも確認された。研究チームは、数mmから数mサイズまでスケールアップできると考えており、チタン合金の特徴を活かした高比強度および生体適合性、耐食性、耐熱性を有し、骨インプラントなどの医療デバイスから航空機やロボットの部材まで多くの用途に対する有望な候補材料になると期待している。

fabcross for エンジニアより転載)

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