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ものづくりラボ大船|ロボット部品からサーキットまで揃う、エンジニアたちの交流場(神奈川県鎌倉市)

日本全国のfab施設を紹介するfabなび。今回紹介する施設は「ものづくりラボ大船」だ。

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ものづくりラボ大船は神奈川県鎌倉市、JR大船駅から徒歩5分ほどの場所にある。2階建ての建物をフル活用した空間で、工作機械のみならず工作用のパーツもぎっしりと並ぶ。

ロボテナ代表の黒川旭さん。 ロボテナ代表の黒川旭さん。

ものづくりラボ大船を運営するのは、「ロボテナ」の黒川旭さん。高校生の時に初めて参加したマイコンカーラリーをきっかけにロボット競技にのめりこみ、大学時代には国内の競技大会で優勝も経験した人物だ。

大学卒業後、エレクトロニクス企業で半導体の技術開発に従事したのち、社屋の移転に伴う早期退職制度を利用して2015年に独立。教員として学校に勤めることも考えたが、自身が没頭したマイコンカーラリーの発展をより広く支えるため、パーツやキットの開発や製造、販売を行う個人事業主として開業した。

黒川さんが制作したマイコンカー。 黒川さんが制作したマイコンカー。
施設内にはマイコンカーを走らせるためのスペースも。学生から社会人サークルまで多くの人が集い、記録会などを楽しむという。 施設内にはマイコンカーを走らせるためのスペースも。学生から社会人サークルまで多くの人が集い、記録会などを楽しむという。
建物の2階にはロボテナのネットショップ用在庫がずらりと並ぶ。 建物の2階にはロボテナのネットショップ用在庫がずらりと並ぶ。

開業当初はネットショップだけを行なっていたが、事業拡大に伴う法人化と合わせ、2018年の夏にものづくりラボ大船をオープンした。マイコンカーや商材製作のために取り揃えた工作機械のシェアをベースに、子ども向けのロボットプログラミング教室も開校している。

「大船は、大手メーカーのオフィスや研究所が多い場所です。近くにホームセンターもありますし、秋葉原までのアクセスも良いです。ですから、エンジニアの方の需要はあると見込んでいました。実際に始めてみると、通勤途中に立ち寄って3Dプリントをスタートし、お昼休みに受け取りに来る方もいらっしゃいました」(黒川さん)

施設1階の作業スペース。 施設1階の作業スペース。

ものづくりラボ大船には、さまざまな工具や装置が揃っている。なかでもAEON LASER(イオンレーザー)製のレーザーカッターは、ロボテナとして代理販売も行なっている製品。自社で機材や消耗品を仕入れることでラボの運営コスト削減につながっているが、これはショップ運営のノウハウがあったからこその工夫と言えそうだ。性能はパワフルで扱いやすく、利用者からも好評だという。

ラボ利用者の作品「Psyche : プシュケー」(写真左)と「Undrop」(写真右)。 ラボ利用者の作品「Psyche : プシュケー」(写真左)と「Undrop」(写真右)。

ものづくりラボ大船を拠点にプロダクトを開発し、個人メイカーとして活動する利用者もいる。間接照明装置「Psyche : プシュケー」や、レーザーカッターを活用した革財布「LUMY」など、個性的なプロダクトが生まれ続けている。水滴が空中に浮かぶように見えるアロマディフューザー「Undrop」は、量産販売時の製作をラボでサポートしたものだ。

個人でものをつくることはできても、量産や販路を開拓することは容易ではない。そこで黒川さんはロボテナのネットショップや、2022年7月に事業を引き継いだメカ部品会社「レインボープロダクツ」の商流なども活用し、ものづくりラボ大船発のプロダクトの販売支援を積極的に行おうとしている。単なる場所や機材貸しにはとどまらないサポートは、個人メイカーにとって非常に心強いものだろう。

黒川さんは、NHKの番組「魔改造の夜」に技術者として関わっている。赤ちゃん人形が綱を登り切るタイミングを測る計測器には、マイコンカー競技用の装置開発で得たノウハウが詰め込まれているという。 黒川さんは、NHKの番組「魔改造の夜」に技術者として関わっている。赤ちゃん人形が綱を登り切るタイミングを測る計測器には、マイコンカー競技用の装置開発で得たノウハウが詰め込まれているという。
同じく「魔改造の夜」向けに製作した装置を持つ黒川さん。写真左奥は、「Psyche : プシュケー」の作者である木村健人さん。 同じく「魔改造の夜」向けに製作した装置を持つ黒川さん。写真左奥は、「Psyche : プシュケー」の作者である木村健人さん。

ものづくりラボ大船を開いたことで、黒川さんには新しい人とのつながりが生まれ、テレビ番組向けの装置製作なども請け負うことになった。「リアルな場所ができたことで、ネットショップだけでは起こり得ない関係が生まれています」と嬉しそうに語ってくれた。

マイコンカーの愛好家や、自由なものづくりを楽しむ子ども達。さらには自分で作ったプロダクトを売り広めていこうとするメイカーまで、ものづくりラボ大船の利用者はさまざまだ。そうした需要に応える黒川さんの姿勢は、ロボットづくりに没頭した学生時代から一貫して、ものづくりに挑む人を支えようとしているように感じられた。

競技に向けた練習会の様子。(写真提供:ものづくりラボ大船) 競技に向けた練習会の様子。(写真提供:ものづくりラボ大船)
今後は近隣施設との提携や、ロボットキットの開発などにも注力していくという。 今後は近隣施設との提携や、ロボットキットの開発などにも注力していくという。

概要

所在地 〒247-0056 神奈川県鎌倉市大船2-19-7
営業時間 平日10:00~19:00(完全予約制)。
土日祝日や夜間の利用も相談可能。
URL https://mono-labo.net/
料金 【平日使い放題プラン】
月額1万円(税込)で平日の営業時間内、工作機械が使い放題

【一時利用プラン】※60分あたりの料金
レーザー加工機:2000円 (平日1500円)
3Dプリンター:1000円
CNCルーター:1000円
カッティングマシン:1000円
部屋のみ利用(ディスプレイ、はんだごて、ボール盤、バンドソウ、工具類使用可):1000円

※ レーザー加工機、3Dプリンター、CNCルーター、カッティングマシン利用の場合、1時間ごとに+30分の部屋利用料が含まれる。例えばレーザー加工機2時間利用の場合は、加工時間を含めて3時間滞在可能。

その他、詳細は公式サイト参照のこと。

機材

レーザーカッター:AEON LASER「MIRA7(PLUS)」 レーザーカッター:AEON LASER「MIRA7(PLUS)」
3Dプリンター:「Clone Prusa i3 MK3S+」 3Dプリンター:「Clone Prusa i3 MK3S+」
3Dプリンター:Anycubic「Mega X」 3Dプリンター:Anycubic「Mega X」
CNCルーター:China CNC Zone「3040Z-DQ 」 CNCルーター:China CNC Zone「3040Z-DQ 」
ハンドツール類。 ハンドツール類。
バンドソウやサーキュラソウ、卓上ボール盤、デジタルオシロスコープなども利用可能。 バンドソウやサーキュラソウ、卓上ボール盤、デジタルオシロスコープなども利用可能。
ロボテナでは「micro:bit」や「Raspberry Pi」などのマイコンボードや電子工作部品も取り扱っている。 ロボテナでは「micro:bit」や「Raspberry Pi」などのマイコンボードや電子工作部品も取り扱っている。

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