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日本のファブ施設調査2020——アンケートから見た新型コロナの影響

fabcrossは国内外のファブ施設(メイカースペース)の動向を紹介するWebメディアとして、2015年から定点調査を実施しています。今回は第6回目に当たり、レギュレーションを改定するとともに、ファブ施設関係者へのアンケート調査を初めて実施しました。

新ルールの策定を経て、確認できた施設数は122

調査を初めて実施した2015年、編集部ではファブ施設を以下のように定義していました。

  • 有料/無料を問わず工作機械が利用可能な施設
  • 利用者が自ら工作機械を操作できる施設(制作/加工委託のみの施設は対象外 )
  • 社員や生徒などに利用者を限定する企業/学校内ファブ施設は対象外

2020年の調査から、新たに小売店舗内のファブ施設を対象外とすることにしました。近年、ホームセンターや雑貨を扱う店舗内にレーザーカッターやCNCなど、購入した商品を加工できるスペースを提供する事業者が増えていますが、それらは店舗内のサービスの一環であり、一般的なファブ施設と成り立ちや事業モデルが大きく異なります。また用途も購入した部材の加工などが中心で、ファブ施設の特徴であるコミュニティが生まれにくいことが、対象外とした理由です。

これを踏まえての2020年のファブ施設数は日本全国で122となりました。今回の調査から対象外となった施設を差し引いても、閉鎖した施設は2019年とほぼ同じペースで推移しています。東京・六本木の「TechShop」や、古舘伊知郎氏の事務所が立ち上げたことで話題になったファッション系ファブ施設「andMade」、2019年に開業した横浜駅直結の複合娯楽施設「アソビル」内のファブ施設「MONOTORY」など比較的大きなファブ施設の閉鎖が相次ぎました。

一方、一時期ほどのペースではありませんが、地方都市を中心に新しいファブ施設が増えています。新潟県三条市内の町工場経営者らとJR東日本が共同で立ち上げた「EkiLab 帯織」 、Hub Tokyoと浜松いわた信用金庫が共同で浜松駅前のビルに立ち上げた工房付きコワーキングスペース「FUSE」、大垣共立銀行のシンクタンクであるOKB総研とロフトワークは名古屋にFabCafeオープンさせるなど、企業同士が地域をまたいで連携してファブ施設を立ち上げるケースが2020年に相次ぎました。

こうした地方都市における新しいファブ施設が、地域にフィットしていけるかどうかが2021年以降の鍵を握ることになると思われます。

特別アンケート「ファブ施設と新型コロナ」

fabcrossでは、2020年4月の緊急事態宣言以降にファブ施設の休止・運営再開動向のまとめ記事を掲載、またDMM.make AKIBAとMakers’ Baseに、2020年初頭から取材時点に至るまでの運営についてインタビューするなど、「ファブ施設とコロナ」にまつわる取材を重ねてきました。

そこで今回のファブ施設調査では、これまでに取材したファブ施設を中心にインターネットによるアンケート調査を実施しました。施設名を伏せた形で掲載可能とする施設も含め27件の回答を得ました。(以下、回答は原文ママ)

Q.新型コロナ感染拡大の影響を受けて、利用者の動向にどのような変化がありましたか?

A.全体的に自粛される方が多かった。特に愛知県など感染者が多い地域にお住まいの方は、利用を控える方が多かった。

(ツバキラボ/岐阜県)

A.小学生を含む学生や家族連れの訪問が極端に少なくなった。医療現場の方の制作相談等が増えた時期(2月末〜5月頃)があった。

(匿名)

A.5月の自粛要請中は利用者が減少していましたが、6月からは例年と同じかそれ以上に増加しています。ただし、大人数の集まるワークショップなどは利用者が減りました。

(ファブラボ世田谷/東京都)

A.何回かしか来ない一般利用者は減ったが、ヘビーユーザーが増えました。

(匿名)

A.良くも悪くも、ふらっと来た、という初見ユーザーが来なくなった。

(クリパカフェ/石川県)

A.より、プロ/セミプロの割合が増えました。趣味ベースの方はほとんど来ないようになりました。逆に、プロ/セミプロの方が、まとめて1回で長い時間、使用されることが多くなりました。
(プロ/セミプロ=加工の後にビジネスがある方)

(Makers’ Base/東京都)

影響はなかったと回答する施設がごく少数で、大半の施設は利用者が減少したという回答が多数を占めました。一方で特定の利用者層が伸びたと回答する施設もあり、こうした新しい需要に、どのように答えていくかがポイントになると思われます。

では、提供するサービス面では、どのような変化があったのでしょうか。

Q.新型コロナウイルスを受けて、提供するサービス面にどのような影響があったかお聞かせ下さい

A.ラボ利用は一時休止しましたが、オンラインで実施しているFabAcademyや長期研修などの事業は完全オンライン、ホームラボ、キット郵送に切り替えて継続して行いました。オンライン講座に関しては、休校期間中に無料提供した際に、400名以上の方が学んでくれたのは、これまでにない状況かと感じています。

(ファブラボ鎌倉/神奈川県)

A.休止中の時は、登録しているユーザーの方向けにマシン利用料とあまり変わらない価格で、加工代行サービスも行っていた。

(ファブラボ仙台/宮城県)

A.定期的に開催していた大勢の人が集まるイベントの開催が難しくなった。イベント、ワークショップなどでは人数や時間に制限をつけるため、集客の加減が難しい。

(匿名)

A.検温・消毒・換気、利用者管理の徹底。またワークショップは人数制限にて実施。影響はほぼありません。逆に利用率が高いため、機器増設による分散など、ものづくり施設として前進しています。

(匿名)

A.シフトに入ることができる担当者の人数が減ったためオープン日が不定期となった。
ワークショップや交流会などのイベントの開催ができなくなった。

(ファブラボ北加賀屋/大阪)

全体を通じて、消毒や換気、人数制限などの一般的な対策を講じていると答えた施設が大多数を占める中で、イベントやワークショップができなくなったと答える施設がいくつかありました。一方でオンラインイベントや受託制作のオーダーに活路を見出すファブ施設もあり、大人数で利用できないからこそ、所有する機材やスタッフのスキルを生かしたサービスに新たな付加価値を見出す施設が今後増えてくるかもしれません。

調査概要

2020年ファブ施設調査は、2019年11月1日から2020年12月15日にかけて、主にこれまでの取材記録やインターネット検索、Eメール及び電話での取材を基にしたものです。学生・教職員しか利用できない大学内施設や、社員限定の施設など、一般利用不可の施設は対象外としています。また、2020年の調査から小売店舗内の付帯サービスとしてのファブ施設も対象外としています。

調査結果をまとめたグラフの著作権はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示–非営利–改変禁止 4.0 国際)を採用しています。ライセンスで認められている範囲において自由にご利用下さい。

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