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超巨大レーザーカッターで家具をつくる

どこのメイカースペースでも人気のレーザーカッター

レーザーカッターは全国のメイカースペースでも大人気の機材だ。fabcrossの読者であればご存知の方が多いだろう。アクリルや木材などの板材をはじめ、紙や布などまでカットや彫刻をすることができ、Adobe Illustratorなどのソフトで描いた図面通りに加工してくれるという手軽さが人気の理由だろう。

とにかく巨大なレーザーカッターがあるらしい

そんな大人気なレーザーカッターなのだが、trotecブランドでレーザー加工機を製造、販売しているトロテック・レーザー(以下Trotec)の巨大なレーザーカッターが東京都東村山市にあるという情報が入ってきた。

「SP2000」と呼ばれるその機材は、加工エリアが1680x2510mmとシハチ(4×8)板(1230x2430mm)が余裕で入るサイズだ。そんな巨大なレーザーカッターがあるならぜひ見てみたい! ということで事前に木材と加工データを送り、東村山市の久米川駅に向かった。

ちょっと写真だとサイズ感が分からないけど大きそうな「SP2000」(トロテック・レーザー・ジャパンのWebサイトより引用) ちょっと写真だとサイズ感が分からないけど大きそうな「SP2000」(トロテック・レーザー・ジャパンのWebサイトより引用)

見にいってみた

東村山のレーザー・ソリューション・センター(LSC) 東村山のレーザー・ソリューション・センター(LSC)

西武新宿線の久米川駅からバスに乗り、閑静な住宅街を少し歩いたところにTrotecのレーザー・ソリューション・センター(LSC)がある。こちらの一階にSP2000があるということだが、一見すると普通の事務所っぽさがある。

そして一階の扉を開けると実際に巨大レーザーカッターSP2000とご対面するのだが……

機材はキングサイズのベッドよりもはるかに大きく、排気用のダクトの柱もかなり高さがある。 機材はキングサイズのベッドよりもはるかに大きく、排気用のダクトの柱もかなり高さがある。

デカい!!!!!!

とにかく想像していたより大きかった。というのも、建物1階のほぼ半分がこの機材のためのスペースに割り当てられているのである。これだけ大きいと加工エリアを分けて2つの作業を並行して行うことも可能だそうで、片側でレーザー加工中に、もう片側では加工物を取り外したり次の材料をセットしたりするなど、別の段取りをすることができる。しかもカバーがないので蓋の開け閉めが不要。なんて便利なんだろう……。

桁違いに巨大なSP2000だが、購入するとかっこいい作業台と巨大なメンテナンスセットの箱(というかケース……?)も全て付いてくる。このメンテナンスの箱にはちょっとした工具などは全てそろっている。

専用の作業台(左)と、メンテナンス類が収納された巨大な工具ケース(右) 専用の作業台(左)と、メンテナンス類が収納された巨大な工具ケース(右)

事前に用意したデータ

今回はこの巨大なレーザーカッターをただ見るだけではなく実際に使わせていただけるということなので、事前にMDF9mmのサブロク(3×6)板と加工データを送付してカットの体験をしたいと思う。

用意したデータは主に3つあり、机、椅子、有孔ボードに取り付ける棚兼簡易デスクだ。机に関してはサブロク板を目一杯使ったデザイン。椅子はAutodesk Fusion 360のトポロジー解析を使い、力学的に最適な形状を基に設計している。棚は開閉式になっており、同じくレーザーカットで作る有孔ボードに固定して使うことができるようになっている。

加工用のデータは、小型のレーザーカッターと同じくAdobe Illustratorなどでベクター形式のパスを用意すればSP2000でも加工することができる。今回は3種類ともAutodesk Fusion 360でデータを作成しているので、それぞれ2次元図面を書き出してAdobe Illustratorで面付けを行った。

サブロク板を目一杯使っているので割と大きめな机 サブロク板を目一杯使っているので割と大きめな机
左が解析結果、右が結果を基に作成した椅子。 左が解析結果、右が結果を基に作成した椅子。
(GIF)閉じると棚、開くとノートパソコンが置ける程度の簡易デスクになる。 (GIF)閉じると棚、開くとノートパソコンが置ける程度の簡易デスクになる。

いざカット!!

大きいレーザーカッターだからといって簡単に使えるわけではなく、普通サイズのレーザーカッター同様にパラメーターの調整やレンズの交換などが必要になってくる。今回カットするMDFの9mmも厚めの板材なので、レンズを焦点距離の長いものに取り替えてもらった。

レンズ交換の様子 レンズ交換の様子

そしてはめ合わせのテストカットを何度か繰り返して、ちょうど良いはめ具合を調整したあと、やっと本番のカットを行う。

使用したSP2000は、200WのCO2レーザー管を積んでいるということだが、加工スピードは加工精度を優先しているため速くはせず、実際の加工はサブロク板2枚で1時間にも及んだ。ただし、加工データを詰め込みすぎたから長時間になったことは否めない。

机のカット動画(タイムラプスで撮影)、こちらは20分ほどで加工が終わった。 机のカット動画(タイムラプスで撮影)、こちらは20分ほどで加工が終わった。

カットの間の休憩

2階はほとんどこのような棚が所狭しと並ぶ。 2階はほとんどこのような棚が所狭しと並ぶ。

カットの合間には、2階の倉庫も見せていただいた。ずらりと並んだ棚には、この冬発売になるレーザー加工用のマテリアル「トロテック商材」が所狭しと置かれていた。アクリル板、木材、紙など色とりどりの材料を展開しているようである。

また、面白い素材としてはメタリック調の樹脂板がある。こちらはレーザーで彫刻をすると黒くなるため、銘板のような使い方に向いている。金属の銘板だと専用の機材を必要とするか業者に発注するなどが一般的だが、レーザーカッターで銘板が作れるとなるとかなり便利だ。

メタリック調の樹脂素材のサンプル メタリック調の樹脂素材のサンプル

いざ組み立て

椅子と棚のデータを作った筆者(左)と机のデータを作った同じくfabcrossライターの淺野さん(右) 椅子と棚のデータを作った筆者(左)と机のデータを作った同じくfabcrossライターの淺野さん(右)

レーザーカットが終わったらSP2000からMDFを取り出し、組み立てをした。有孔ボード用のフックを隙間に詰めすぎたので、取り外す数が多く少し大変だ。その場で組み立てられるものはその場で組み立て、自宅で組み立てるものは切り出したまま各自持ち帰ったので、最後に出来上がったものを紹介する。

棚の組み立ての様子。速乾の木工用ボンドで仮止めをする。 棚の組み立ての様子。速乾の木工用ボンドで仮止めをする。

筆者作成の、トポロジー解析をかけた椅子。下方向にかかる力に対して最適化されたデザインなのでびくともしないが、ねじれ方向に少し弱い。

筆者自宅にて。鍵をフックに掛けたり、棚にカメラとポストイットを置いたりしてみた。 筆者自宅にて。鍵をフックに掛けたり、棚にカメラとポストイットを置いたりしてみた。

筆者作成の有孔ボード用の棚。ちょうどノートパソコンが入るサイズで設計している。有孔ボード自体は2×4材を2本、床と天井で突っ張り、そこにネジ止めをしている。おまけで作った小さな棚には物が置ける。フックは作りすぎたので空いている穴すべてに付けている。

浅野さん自宅。 浅野さん自宅。
机にノートパソコンを置いてもまだ余裕のあるサイズだ。 机にノートパソコンを置いてもまだ余裕のあるサイズだ。

浅野さん作製の机はかなり大きかったので持ち帰るのが大変だったとのこと。サイズも大きくちゃんと日常使いしている。

ご覧のように、SP2000は大きな加工を難なくこなせるレーザーカッターであることが分かった。機材は大きくとも小型のレーザーカッターと同じ感覚で使えるため難しくなく、今まで加工ができなかった大物を扱えるのはとても魅力的であった。ただし、機材のサイズが大きいため、導入には実際に機材を設置できるスペースと、搬入経路の間口も機材が通る広さが必要だ。また、木材のカットの場合は断面が焦げてしまうので、気になるようであれば大型の木工CNCなどを使うなどうまく使い分けると良いようだ。アクリル板などは相性が良さそうなので、次回使う機会があれば看板のように文字などを大きく切ってみたいと思う。

取材協力
トロテック・レーザー・ジャパン

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