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さあ起き上がれ、そして作れ。 せっかくのお正月だからハッピーな工作をしよう!

明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。

みなさん、2021年のお正月はどのように過ごしていましたか? 例年と違い、あまり外出することもなく家で過ごしたという方も多いのではないでしょうか。

今年も家時間が増えそう。ということで、fabcrossではお正月休みを利用して、ちょっとハッピーな気分になれる工作をしてみました。参加してくれたのは、fabcrossものづくりチームの中でも、ハッピーでクレイジーなこの2人!

(左)
ひとしんし
世の中を台無しにするようなアイデアとクリエーションを創出するひと。会社員をしながらinspireをnextしつづけている。

(右)
ギャル電 きょうこ
今のギャルは電子工作する時代! ギャルによるギャルのための電子工作を提案するユニット「ギャル電」で活動している。 最近ハマってる飲み物はトマトジュース(無塩)。

最高の初夢を見られる「初夢ルンバ」

まずはひとしんしさんから。こ、これは何?

ひとしんし「まあ、見ててください」

ん? 鳥……?

な、ナスビ……?

 

ひとしんし「これをルンバに乗っけて……」

????????

ひとしんし「はいー、初夢ルンバです!」

ど、どういうことですかね? 今のところ困惑しかありませんが、説明していただきましょう。

ひとしんし「まあ、ルンバの上に富士山、鷹、ナスビのオブジェを乗せたものなんですけど。寝ているときにタイマーでルンバを作動させると、自分の頭の周りをルンバが掃除をしてくれます。その上、縁起のいいものが載ってますから最高の初夢が見られるという、たいへんハッピーなルンバなのです!」

あ、はい……。なんか正月1発目からかなり脱力系の工作ですね。個人的には好きですけど。実際どんな風に動作するのか見てみましょう。

なるほどー。一富士二鷹三ナスビが頭の周りを回ってくれるので、いい夢が見られるというわけなんですね。ただし、GIFだと分からないかと思いますが、結構作動音が大きいので、眠れるかな……。

「初夢ルンバ」の作り方

では、制作過程を見ていきましょう。

まずは富士山の3Dデータを用意します。今回はインターネットから拾ってきたものを使用しています。それを3Dプリンターで出力します。

ひとしんし「3Dプリンターがルンバのサイズを出力できなかったので、4分割にしてプリントしました。素材はPLAです」

4分割でプリントした富士山は裏側からマスキングテープで固定。

表もマスキングテープで固定。サイズピッタリ。

ひとしんし「表面には水溶きした木工用ボンドで新聞紙をペタペタ貼り付けて、その上から紙粘土を塗りつけています」

おお、結構ちゃんとやってますね。

最後は絵の具で彩色。上空から見た富士山らしくなりました。

お次は鷹。こちらはいらすとやのものを使用。

ひとしんし「鷹を3Dプリントするのは難しいかなと思って……」

プリントした鷹のイラストを厚紙に貼り付けてカット。それを富士山の切り込みに差します。

最後にナスビを載せて一富士二鷹三ナスビの完成です。手前にナスビ、奥にイラストの鷹を配置することで、視覚的な奥行きを狙ったとはひとんししさんの弁。

ひとしんし「これで毎晩いい夢見られますよ!」

心拍数でシフトノブが光る!「超あけおめ! スパークジョイハートビート水中花デコキャップ」

お次はストリート電子工作で活躍中のギャル電きょうこさん。今年の正月工作は……?

きょうこ「超あけおめ! スパークジョイハートビート水中花デコキャップだよ! ひとしんしさんが夢を見る工作なら、私のは夢を叶える工作だね」

ほうほう。夢つながりっていうわけですね。で、これは何ですか?

きょうこ「今年の正月は帰省できなかったり、友達と会えなかったりいという人も多いでしょ? そうなるとビデオ通話で会話したりすることも多いと思うんだよね。でも、やっぱり画面越しじゃ感情って伝わりにくいじゃん? そこで、自分の心拍数によってLEDを光らせて、感情をより派手に伝えるためのアイテムを作ったんだよね」

なるほど。でも「夢を叶える」というのは……?

きょうこ「今回、光らせるのは車のシフトノブなの。これまで工作の材料として使ってみたいなと思ってたんだよね。けど、なかなかいいアイデアが思いつかなくて見送ってたんだけど、今回やっと使えたから。私の夢が叶ったということ」

ああ、きょうこさんの夢が叶ったんですね。おめでとうございます。じゃあちょっと実際に使ってみましょう。

耳に付けた心拍数センサーに反応して、帽子のつばのシフトノブが光るんですね。

きょうこ「耳たぶや指にクリップを挟むと、クリップに内蔵した光学式の心拍センサーがLEDの光を照射して血流で反射された錯乱光の量を計測して心拍を計測するの。計測から計算された心拍数のタイミングでLEDが濃いピンク、薄いピンク、濃いパープル、薄いパープルに切り替わりながら光るから、色によって自分の心拍数をみんなに伝えることができるんだよね」

ドキドキを可視化するなんて、ちょっとロマンチック。

きょうこ「年始はお酒を飲む機会も増えるでしょ? このデコキャップでおめでたい気持ちを盛り上げつつ、急激な心拍数の上昇を周囲に知らせるということもできるから、飲み過ぎ防止にもなるね」

おおう、実用的! ロマンとリアルが交錯する工作ですね。

「超あけおめ! スパークジョイハートビート水中花デコキャップ」の作り方

それでは、製作過程をご紹介します。パーツ的にはこんな感じです。

帽子に車のシフトノブにステイに、こまごましたものがあります。

まずはプラ板を使って、帽子に貼り付ける飾り小窓の作り方から。

きょうこ「今回はプラ板からフルスクラッチしたから」

プラ板にアルミを貼って反射率アップ。これを箱形に組み立てます。

内部には結束バンドを装着。

そして結束バンドを取り付けたプラ板でふたをします。これを2つ作ります。

きょうこ「箱の中にはかわいい造花とLEDを入れて、周りはデコってる。私はこれをトラック窓って呼んでるんだけど。これは、“みんから”っていう車のSNSサイトを参考にしたの。どうやらデコ車界では、プラ板を使って自分で装飾小物とか作る文化があるらしくて。3Dプリンターとか電装とかも自分たちでやってるらしいよ」

あのデコデコな車の装飾って手作りなんですね。そう考えると、なんかデコ車が愛おしくなってきました。

次はシフトノブを光らせるためのLEDリングを作成します。

きょうこ「これも自分で作ったの。プラ板をドーナツ状に切って、そこにLEDを4つ貼り付けた」

そこにケーブルを取り付けて……。

ホットボンドでガッチガチに固めてLEDリングの完成です。

LEDリングとトラック窓をそれぞれ結線。これでLED部分の完成です。

ちなみに、トラック窓の後ろにも結束バンドを通しておきます。

ひとしんし「結束バンドの長さが倍くらい違うけどそれは大丈夫なんですか?(笑)」

きょうこ「固定できればなんでもOK!」

さすがギャル電。

次は帽子の加工に入ります。すでに帽子のつばにシフトノブ取り付け用のネジが仕込まれています。まずは、トラック窓を取り付けていきます。

きょうこ「私、黒いものをベースにすることが多いのね。だからマーキングができないの。そういうときはマスキングテープでマーキングをすればいい」

そう言いながらトラック窓を取り付ける位置をマーキングしたら、ハサミで左右2カ所ずつ結束バンドを取り付ける溝を切っていきます。

トラック窓を固定して結束バンドを通します。

ひとしんし「結束バンドの留め具が内側だとおでこに当たって痛くならないですかね。僕なら外側にするけど」

きょうこ「これを内側にしているのには理由があるの。やり直ししやすいでしょ?」

なるほど。実はちゃんと考えられているんですね。おでこに当たるようだったらガムテープとかで保護すればいいですしね。

トラック窓の取り付けが完了しました。

ステーを取り付けます。このステーは折り曲げやすいものを使用。

きょうこ「きれいに曲げられるステーというのがあるからそれを使ってる。私不器用なんでステーをきれいに曲げられないから」

きょうこ「ステーはちゃんと取り付けないといけないから、帽子の側面に穴を開けてネジ止めする」

仮止めした状態です。シフトノブとネジの間にLEDリングを挟んで固定します。うーん、かなり個性的な帽子だ。

お次は心拍センサーが入っているケースを取り付けます。これはステーに結束バンドで固定。側面なので結束バンドを隠したりしないのがきょうこ流。

Arduino Nano互換ボードはステーにホットボンドで接着。今回は結束バンドとホットボンドが大活躍ですね。

心拍センサーとArduino Nano互換ボードを結線。

これがセンサーのクリップ。これを耳たぶに取り付けるんですね。

ステーに金色のチェーンを取り付けます。

きょうこ「ステーだからチェーンとか付け放題。今回正面にちょっとケーブル見えちゃってるから隠すためにファーとか付けようか考えたんだけど、ちょっと違うなと。そこでチェーンを付けてあえてケーブル見せることでサイバーパンクな感じにしてみた」

隠すんじゃなくて見せていくスタイル。かっこいい。

いつものギャル電プレートも貼り付けます。もちろんホットボンドで。このギャル電プレートって毎回作ってるんですか?

きょうこ「これは、アクリル板をレーザーカッターでカットするときとかに、余っているスペースで作ってる。高いアクリル板だと余った部分がもったいないじゃん? あとはこのプレートをベンチマークにしてる」

節約も大事。ギャル電結構考えてるんですね。

ひとしんし「このままだと、シフトノブが重すぎてバランス悪くないですか? 後ろにカウンターウエイト入れないと」

きょうこ「カウンターウエイトの代わりに、後ろのモバイルバッテリーを結束バンドで取り付ける。これで完璧っしょ」

これで完成です。

シフトノブを大きなタイプに変更したバージョンもご覧ください。

なんか、めちゃくちゃ主張激しくないですか……。

きょうこ「私、モテについて持論があって。男子にモテるにはカブトムシかガンダムだと思ってるから」

確かにちょっとカブトムシっぽいですし、ロボット感もありますけどね。大きなシフトノブはヘラクレスオオカブト的な感じもします。だけど、これが男子に受けるかというと、どうなんだろう……? 好きなものが全部載ってるからいいってわけでもない気がするんですよ。

きょうこ「引き算とかしない。足し算の美学。カレーにハンバーグ載ってたらうれしいじゃん? 人間はそういうムダかもしれないけどやってみようということを繰り返して進化してきたんだよね。いわゆるイノベーションなんだよ、この帽子は」

他人がやらないことをやってみる。その精神かっこいいですね。見習わないと。

きょうこ「私の想像した世界ではね、未来の若者の間ではシフトノブデコキャップがはやっていて、動物の角みたいにほかの人より長かったりきれいだったり、珍しいシフトノブを取り付けてる奴がより強いみたいなカルチャーになってるんだよね」

ほんとに昆虫の世界ですよね、それ。でも、人類がどんな風に進化していくかなんて誰にも分からないし、そういう価値観が生まれてくる可能性だってありますから。そのとき、この帽子が重要になってきますね。

今回一番やっかいだったのは、プログラムとのこと。

きょうこ「センサーやスイッチをシリアル制御LEDと一緒に使おうとすると、割り込み制御の壁にぶち当たって心が折れたね。電子工作をコピペ改造で作ってると、割り込み制御の洗礼を受けて8割くらいの初心者が脱落するといわれているから(ギャル電調べ)」

参考にしたコードが複雑で改造しづらいため、かなり苦労したようです。

きょうこ「スト工的な解決方法は、自分のレベルで分かって動く作例が見つかるまで検索してコピペ&エラーを繰り返すこと。作例をめっちゃ見てるうちに、コードのすべてがイミフの状態から、割り込み制御がなんか複雑で思った通りに動かないっぽい、くらいまでは知識がアップデートされるよ」

トライアンドエラーを繰り返して、身体で覚えていく。それがスト工。その生き方、不器用でかっこいい。

ちなみに、今回参考にした@jksoftさんのプログラムは、製品のサンプルコードに心拍数から心拍に合わせて光り方を切り替えるタイミングの計算式を入れるというシンプルでスマートなものだったのでとても分かりやすかったとのこと。こういうものを地味に探していくのも、工作には必要なんですね。

そんなこんなで、2021年の正月工作はここまで。今年は仕事始めが早くもうお仕事をしている方も多いかと思いますが、家で過ごす時時間が多くなっている昨今、家で工作を楽しむのもいいのではないでしょうか。

ということで、2021年もよろしくお願いします!

きょうこさんの材料と参考サイトなど

【材料】
Grove心拍センサ
Arduino Nano互換ボード
LEDテープ(WS2812B)
かっこいいシフトノブ
六角ボルト(M12)
ステー
超低頭小ねじ(M4)
プラ板
デコトラのプラモパーツ
スタッズプレート

【参考URL】
Grove イヤークリップ心拍センサー
Grove心拍センサーサンプルコード
参考にしたマトリクスLEDを心拍センサーに合わせて切り替えるコード(@jksoftさん)
かっこいいけど割り込み制御が複雑で心が折れたコード
Arduino割り込み制御リファレンス

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