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ユニバーサル・サウンドデザイン 中石真一路氏インタビュー

健聴者が難聴者に歩み寄るスピーカー“comuoon”を生み出した本物を極めるものづくり

どうしてもやりたかった聴こえの研究

従来のスピーカーのフォルムでは難聴者に威圧感を与えてしまうと考え、モックアップの段階から中石氏自身による親しみやすさを工夫したデザインが採用された。 従来のスピーカーのフォルムでは難聴者に威圧感を与えてしまうと考え、モックアップの段階から中石氏自身による親しみやすさを工夫したデザインが採用された。

しかし、ちょうどその頃タイミングが悪いことに、中石氏が在籍していたレコード会社が同業他社に吸収合併されるという大きな出来事が起きる。せっかく立ち上げた新規プロジェクトも、その影響で頓挫してしまった。上司からは「会社の存続に関わる重要な時期なので、そんなことをやっている場合じゃない」と、中石氏がやりたいと思った聴こえの研究について、社内で理解が得られる状況ではなくなった。さらには、「なぜレコード会社が難聴者のための製品を作らなければならないのか」と言われた。

「企業の社会貢献として、障害のある人に役立つことをやろうと思っていたのに、なぜそんなことまで言われるのかとも思ったのですが、社内の状況も理解できたのでやむなく研究を中断しました」

そこに東日本大震災が起きた。その時、中石氏は「自分はなんのためにここで仕事をしているんだろう」と自分自身に問いかけた。「これまでも人のために頑張ってきたけど、もっと人のためにできることがあるんじゃないか」とふと思った時、「やっぱり聴こえの研究は絶対にやめてはいけない」と決心し、この事業に人生をかけようと思った。

「会社がやらないなら、自分がこの研究を引き継いでやりたいと取締役に直談判しました。そうしてなんとか説得して了解をとることができたので、会社の業務も続けながら難聴者が聴き取りやすいスピーカーを研究開発するためにNPO法人を作ることにしました」

中石氏はまず2011年6月に任意団体を立ち上げ、同年11月にそれをNPO法人とした。さらに翌年4月には難聴である父とともに株式会社としてユニバーサル・サウンドデザインを設立し、レコード会社を退職した。もともとはNPO法人のまま研究開発を行い外部に製造を委託するつもりだったが、NPO法人であるが故の制約により、短期間で株式会社化することになったという。 

難聴者が補聴器を使用するのは、健聴者に合わせようとするためだ。それに対して、聴き取りやすいスピーカーを使うのは、健聴者の側から難聴者に近づいていくということ。「その考え方に同調していただいた方々が自然と集まり、会社を作ることができました」(中石氏) 難聴者が補聴器を使用するのは、健聴者に合わせようとするためだ。それに対して、聴き取りやすいスピーカーを使うのは、健聴者の側から難聴者に近づいていくということ。「その考え方に同調していただいた方々が自然と集まり、会社を作ることができました」(中石氏)

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