新しいものづくりがわかるメディア

RSS


ユニバーサル・サウンドデザイン 中石真一路氏インタビュー

健聴者が難聴者に歩み寄るスピーカー“comuoon”を生み出した本物を極めるものづくり

なぜ人の声が聴き取りやすいのか?

中石氏は、聴こえにくさの改善を通じて聴こえのバリアフリーを目指すNPO法人「日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会」の理事長も務めている。同協会では「きこえのあしながさん」という活動を通じて、ろう学校および難聴学級や特別支援学校の授業で活用してもらうために、全国23校(2015年12月現在)にcomuoonを寄贈している。 中石氏は、聴こえにくさの改善を通じて聴こえのバリアフリーを目指すNPO法人「日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会」の理事長も務めている。同協会では「きこえのあしながさん」という活動を通じて、ろう学校および難聴学級や特別支援学校の授業で活用してもらうために、全国23校(2015年12月現在)にcomuoonを寄贈している。

そもそも、音の発生や伝播などを研究する音響工学の分野と、耳の病気や聴覚障害などについて研究する耳科学とは性質の異なる学問であり、たとえば音の大きさを測る指標も前者は音圧レベル、後者は聴力レベルと別の単位で表す。このようなことから、なかなか聴き取りやすい音について研究している研究者が見つからず、中石氏は自分の足で音響の専門家や医学者などいろんな人と会って情報を集めることで知見を高めていった。

「その結果、いろいろなことがわかってきました。たとえば、周波数でいえば1000Hzから上の音が言葉の明瞭度に影響しているのですが、この周波数帯の音を聴く力が年齢とともに落ちていきます。そうすると、音としては聴こえているのですが、もやっとしている。そのために、脳がその音を言葉として認識できない状態が難聴なのです」

そこで、脳が言葉を認識しやすくするために、まずハニカムフラットというスピーカーで高音域を強調する。これだけで、軽度の難聴者はカバーできるようになるという。その上で、筐体を細長くして音を鳴らす部分を後ろに下げていくことにより、1700Hz付近の周波数帯が強調されていく。この周波数帯は、ちょうど人の声の中に多く含まれる帯域なので、これによってさらに音を明瞭化している。このように、デジタル処理ではなく物理的な構造によって、人の声が聴き取りやすい音を作り上げているのだ。とはいえ、単純に特定の周波数帯を強調する構造にすればいいのかというとそうではない。

「マイクから入力された音をスピーカーが出力する間の電気信号の処理過程で音にノイズやひずみが発生してしまうと、どんなに構造で頑張っても聴き取りやすい音にはならないのです。筐体にある程度の大きさがあれば回路設計にも余裕ができるのですが、小さな筐体の中にどうやってノイズやひずみが発生しない回路を組み込むのかについても大変苦労しました」

中石氏が相談に訪れたのが、佐賀県にある佐賀エレクトロニックスという半導体製造メーカーだ。中石氏は、同社が持つ高級オーディオ用ICのプレゼンテーションを見たとき、この技術は本物だと確信し「ぜひ一緒にやりましょう」とその場で契約を決めたという。 

最初に試作品として作ったのが左のアルミ製のスピーカー。次が右のプロトタイプで、comuoonが持つ親しみやすい特徴的なフォルムはこの段階から取り入れられている。プロトタイプから製品版(中央)にするための小型化には、佐賀エレクトロニックスが持つ部品、回路、基板パターンなどに関する長年のノウハウが生かされている。 最初に試作品として作ったのが左のアルミ製のスピーカー。次が右のプロトタイプで、comuoonが持つ親しみやすい特徴的なフォルムはこの段階から取り入れられている。プロトタイプから製品版(中央)にするための小型化には、佐賀エレクトロニックスが持つ部品、回路、基板パターンなどに関する長年のノウハウが生かされている。

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る