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ASTINA 儀間 匠氏インタビュー

開発の落とし穴を回避し着想から半年でプロトタイプを発表した衣服折りたたみロボット「INDONE」

日本では、共働き世帯の割合が年々増加している。フルタイムとパートタイムを合わせると、結婚している家庭の6割以上が共働き世帯である。共働き世帯の増加、核家族化の進行と可処分所得の変化に伴い、家事の負担をいかに減らすかが課題となってきている。2017年、ASTINAはプロトタイプからハードウェアの設計開発/コンサルティング業務を請負う企業として設立された。2018年には共働き世帯の家事の負担を減らし、家庭の笑顔を増やしたいと「新しい家具」をコンセプトにやさしく衣服を折りたたんで収納するロボットタンス「INDONE」を発表した。大手メーカーや、スタートアップが依頼する年間のIoTデバイス、ロボットの開発案件は20機種以上。その中で培った知識を生かしながらどのようにしてINDONEを誕生させることができたのか。ASTINA代表取締役の儀間 匠氏にお話を伺った。(撮影:荻原楽太郎)

一メーカーとしてものづくりがしたい

——ハードウェアの受託開発で起業しようと思ったきっかけはなんですか?

儀間:前職では、コミュニケーションロボット「Gatebox」の開発に携わっていました。その後、エンジニアとして開発スキルを磨くために、ロボットやIoT関連のプロダクトにたくさん関わりたいと思い、フリーランスでスタートアップの開発支援を始めました。最初は知り合いやDMM .make AKIBAでつながったスタートアップと仕事をしていましたが、ありがたいことに順調に依頼先が増え、より幅広く開発支援ができるようにフリーランスの体制からチームとして法人化することを決意して起業し、今では正社員6名、アルバイト15名のチームにまで成長しました。受託開発も積極的に行っており、正社員の機械設計エンジニアを新たに募集している状況です。

ASTINA代表取締役 儀間 匠氏 ASTINA代表取締役 儀間 匠氏

——そこからINDONEを開発しようと思ったのはどういった経緯でしょうか?

儀間:受託でスタートアップの開発を支援しながらもメーカーとしてものづくりをしていきたいという気持ちが創業当時からありました。ただ、自分が欲しいと思い描くロボットとお客様が欲しいと思うロボットには差があると、自分自身の感覚を疑っていました。ものづくりを考えるとどうしても技術の視点で考えてしまう。家庭になじめるものに近づけるために、ロボットという視点から離れて家庭内に隠れている不便や不満にヒントがあると考えました。悩みながらたどり着いたのは、家具やベッドといったなじみはあるが進化が止まったレガシーなプロダクトにロボット技術を導入することで、お客さんのニーズに明確な価値を提供できるかもしれないという答えでした。

なぜタンスだったかというと、家庭で日常的に起きる問題がヒントになりました。奥さんが旦那さんに家事をやってほしいけど、旦那さんは衣服をきれいに折りたためないから奥さんはついつい、たたみ直してしまうと話をよく聞きました。旦那さんは家事をしようとしても奥さんから要らないと言われて関係がギクシャクしてしまう。この夫婦の感情の衝突を緩和して、ギクシャクする時間を夫婦のコミュニケーションの時間に使ってもらいたいと思ったのがプロダクトの一番芯の部分でした。

——なるほど、実際に儀間さん自身も奥さんに言われましたか?

儀間:そうですね。休日に自分の奥さんに洗濯物のたたみ作業について指摘されて、ロボット技術で解決できないかと考えました。

——アイデアを出す時に、タンス以外もありましたか?

儀間:アイデアでは、キッチン周りやベッドもありました。家庭にロボット技術を導入することでストレスを緩和したいというポイントで考えています。

2018年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2018で公開したINDONEのプロトタイプ。 2018年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2018で公開したINDONEのプロトタイプ。

なぜINDONEはタンスの形をしているのか

——INDONEは人型ロボットにせずに、タンスの形にしたのはなぜですか?

儀間:製品を考えるとき、お客さんが家庭に導入する際の心理的なハードルを下げることを意識していました。タンスだったり、ベッドだったり、家庭にすでに導入されているものをベースに、家具にロボットが導入されているという見せ方をしたかった。何でもできる人型の家事ロボットがあったとして、それをお客さんが安心して家庭に導入できるのか考えるとまだ難しいのかなと思っています。

——人型よりもタンスの形状が家庭に導入しやすいという仮説はどうやって検証しましたか?

儀間:開発を始める前に、3カ月ほどの時間をかけて20人以上の主婦にヒアリングやWebアンケートを実施しました。質問内容は「どういったところで旦那さんと家事をしてギクシャクしますか?」「帰宅してからどういったスケジュールで家事をしていますか?」など、まずは幅広くヒアリングして、家庭や家事の不満をたくさん聞くようにしました。

調査から見えてきたのは、ロボットが欲しいわけじゃなくて、仕事から帰ってきて子どもを寝かしつけた後に衣服を折りたたまないといけないという憂鬱さを無くしたいだけだということが分かりました。主婦からすると、プロダクトはロボットでもIoTでも何でも良かったわけです。よく聞く「ロボット」や「イノベーション」といったうたい文句よりも、家庭で日常的に使っている「タンス」のほうが受け入れてもらいやすいと気が付いて、INDONEはタンスからプロダクトのイメージを作り上げています。

企画を立てる上で気を付けていること

——プロダクトを企画する上で気を付けていることはありますか?

儀間:ASTINAは、エンジニアがメインの会社になるので、企画もエンジニアが立てています。エンジニア同士で考えるとどうしても技術ドリブンになりがちです。「この技術を使おう」や「この技術が面白そう」といった技術ドリブンの思考にならないように気を付けています。

——新しい技術を使って試せないと、エンジニアとしてはストレスになりませんか?

儀間:メンバーとも話し合っていますが、新しい技術を使いたい欲求と仕事は切り離すようにしています。新しい技術は趣味でやることにしていて、仕事として作るプロダクトは人の痛みを解決するものにしたい。これはINDONEにも生かされていて、新しい技術だけでなく、枯れた技術も必要に応じて採用しています。お客さんからするとロボットを動かしている技術は何を使っていても関係なくて、最新技術でも枯れたような技術でも、低コストでしっかり動くものが届けられたほうが良いと考えて、技術を選ぶようにしています。折りたたみもロボットハンドを使っているとコストが掛かってしまう。昔から使われている製造工場の産業機械をミニチュア化するイメージで内部を設計しています。

くしゃくしゃの状態で入れても、INDONEから出できた衣服はきれいに折りたたまれていた。 くしゃくしゃの状態で入れても、INDONEから出できた衣服はきれいに折りたたまれていた。

落とし穴にはまらないことがスピードを速める

——着想から半年でコンセプトを発表するスピードのコツはありますか?

儀間:プロジェクトを進めていると落とし穴があると思いますが、落とし穴にはまると時間を取られてしまいます。まずはそこを避けるようにする。ASTINAは受託開発と自社開発から得た知見をお互いが補うように支え合い、穴に落ちないようにしています。これまでスタートアップを何社も開発支援してきていますが、スタートアップが遭遇する落とし穴はある程度決まっていて、予測して回避するか、技術でフォローします。イベント展示やPoC(概念実証)を開発する時も決まっているし、大企業との連携のタイミングや量産のタイミングなど、支援させていただいているからこそノウハウも溜まってきていると思います。スタートアップが大企業と組むタイミングを急ぎ過ぎると、会社同士の連携がうまく行かないパターンが多い。そのまま相乗効果を出せずにプロジェクトも加速しなくなってしまうことがあります。

クラウドファンディングで資金調達したいと思っているプロダクトでも、モックアップを作って簡単な実証だけ終わらせた状態でリリースしてしまうと、大抵のプロジェクトは出荷が遅れてしまいます。実証を終わらせていても、お客さんに渡してから起きる問題が想定されていないのです。量産前にそこをしっかりと詰める必要があります。

——ASTINAさんの強みはスピードですか?

儀間:そうですね。もともとスピードを意識している部分もありますが、弊社に相談にくる案件は技術的な理由かもともとの納期の理由で納品を急がないといけない案件が多く、いくつも開発を支援してまわしているうちにこのスピード感に慣れて自然とスピードが速くなったということもあります。

今後の販売戦略

——INDONEの販売戦略はどのようにお考えですか?

儀間:2019年末の予約販売開始を目指しています。販売価格は30〜50万円で最初は小ロットで大体500台を目標に製造する予定です。販売台数を増やす上で2つハードルがあると考えていて、1つ目は「価格」、2つ目は「サイズ」ですね。この2つを少しずつ解決していきたい。現在では、百貨店や量販店から商談のお話をいただいているので、まずは製品に触れてもらう機会を増やし、プレオーダーを開始する予定です。

——海外進出もお考えですか?

儀間:韓国の企業からお話をいただいていますし、台湾でも展開を狙っています。アジア各国では家電が盛り上がっていると感じているのもあり、生活スタイルが日本と近い文化圏の国から展開したいと思っています。

——マネタイズはどのようにする予定でしょうか?

儀間:まだ戦略を練っているところですが、ユーザーが本体費用を支払って月額費用も負担するような課金モデルにはしない予定です。プロダクトの収益を生むポイントとしては、カートリッジの交換費用や、不動産業界のデベロッパーやハウスメーカーと連携しマンションにビルトインで設置してある状態で利用費用を支払ってもらうようなプランを考えています。

家庭用ロボットの未来は

——ASTINAのコンセプトに「ふだん使いのロボティクスを」とありますが、未来の家庭でロボティクスはどのように利用されていると予想していますか?

儀間:現在のロボットが得意とする領域から考えると「人間の作業を減らす」や「人間の作業を無くす」ようになると思います。ロボットを家庭に導入して、家事の効率化に利用されることは可能性があります。日本は90年台をピークに世帯あたりの可処分所得が減少し、収入を増やそうと共働き世帯が年々増加した結果、今度は家事に割く時間が足りなくなって家事代行サービスの需要が高まっています。将来は、ロボットが家事代行サービスを人の代わりに補っていけるようにしたいと考えています。

プロトタイプは男性の背丈くらいの高さだが、製品では130センチ程度にしたいと話す儀間氏。 プロトタイプは男性の背丈くらいの高さだが、製品では130センチ程度にしたいと話す儀間氏。

——今後の取り組みについて教えてください

儀間:製品化に向けてプロダクトを磨き上げていきたいと試行錯誤しています。現時点では一着の折りたたみに1分30秒ほどかかります。人間よりも時間がかかりますが、家の留守中や就寝中に稼働することを想定しているため、折りたたみ時間の短縮には注力しないつもりです。時間よりむしろ、きれいに折りたたむ精度やクローゼットに入るサイズまでの小型化、部品のコストを下げて安価にすることを目標にしています。

共働きが増えてきている現代の家庭にどんどん導入されているロボット家電。INDONEも2019年末にはプレオーダーがスタートし、衣服の折りたたみもロボットが代行してくれる時代がいよいよやってくる。家庭の笑顔を増やしてくれる新しい家具たちを心待ちにしたい。

なおASTINAでは受託開発も積極的に行っており、正社員の機械設計エンジニアを募集中とのこと。気になる方はASTINAまで。

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