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変革期にあるクラウドファンディングができること——Indiegogo新CEOに聞く

米大手クラウドファンディング「Indiegogo」は、2022年5月に新しいCEOとしてベッキー・センター氏(Becky Center)を迎えた。5月12日には、日本のクラウドファンディング「CAMPFIRE」との提携を発表。日本との関係を強化する意図や今後の予定、そして昨今クラウドファンディングで問題視されている再販問題について、センター氏にEメールで取材した。

——まず、CAMPFIREとの提携の背景について教えてください。

Indiegogoは、2020年に日本向けに「グローバル・ファスト・トラック・プログラム(Global Fast Track Program)」を開始しています。

このプログラムはIndiegogoで活躍する、各国のトップイノベーターによる革新的な製品がより早く世界に認識されるように設計されています。日本の起業家もこのプログラムを通して、世界のアーリーアダプターに製品を紹介できるようになりました。本プログラムは、起業家に対して、個別サポートとエキスパートによる指導を通じて、グローバル市場を勝ち抜くための方策を提供するものです。

今回のCAMPFIREとの提携は、その延長線上にあります。CAMPFIREのプラットフォームを利用する日本の起業家がグローバルに飛躍するための機会となるだけでなく、Indiegogoの起業家が、躍進する日本のスタートアップ市場に参入する手助けをしたいと考えています。

——昨年(2021年)に取材した際、日本企業の海外進出をサポートするプログラムを展開していると伺いました。その後の成果について教えてください。

採択した日本企業10社のうち8社がクラウドファンデングを実施し、合計調達金額は98万ドル(約1億3000万円)を記録しています。まだ継続しているキャンペーンもありますので、最終的には100万ドルを超えるでしょう。支援者の多くは海外で、190カ国以上約4100人から調達しています。

——2019年以降、サプライチェーンの混乱は続いており、ハードウェア製品のクラウドファンディングにも大きな影響を及ぼしています。資金に余裕のないスタートアップにとってはつらい状況ですが、彼らを支援する立場としてどういったサポートをしているのでしょうか。また、今後どういったサポートをしていきたいとお考えですか?

あらゆる事業や製品でそういった問題が起きているように、開発のどの段階でも問題は発生します。昨今のサプライチェーンの問題は、生産停止や物流遅延の要因になりえます。

Indiegogoには輸送や物流のパートナー、そして専門アドバイザーがおり、起業家がこうした課題に直面した際に、「どのように対処し、賛同してくれた支援者らとコミュニケーションするのが最適か」という助言やサポートをリアルタイムで得られます。

また、この他にも以下のようなサポートがあります。

  • Indiegogoが精査し推奨する専門家リストと業界関係者を、Indiegogoの起業家に紹介するサービスを提供しています。
  • キャンペーンを最適化するために1対1で連携するキャンペーンストラテジーチーム(Campaign Strategy Team)と、マーケティング、デザイン、キャンペーン管理を含むキャンペーン全体を実行するコンシェルジュチーム(Concierge Team)がいます。
  • 初心者に向けて、クラウドファンディングを成功させる方法に関する豊富な知識を提供する教育センター(Education Center)を用意しています。

——製品を認知させる手段がSNSにも波及していて、SNSやウェブ広告なども競争が激化しているようにみえます。マーケティング予算の限られているスタートアップが自社製品を知ってもらうために、どのような工夫をするべきでしょうか。特に日本から海外へ向けて製品を展開したいスタートアップへのアドバイスがあればお願いします。

初めての製品を世に送り出す起業家に向けて、最もアドバイスしたいことがあります。それは、たとえどのクラウドファンディングプラットフォームを利用するにしても、キャンペーンをローンチする前に、支援者とのコミュニティの構築に取り組むことが非常に重要だという点です。

「コミュニティを作れば、支援者が自然と集まってくる」ということはありません。そうではなく、キャンペーンを早期に推進することで、既にあるネットワークの外にいる人々からの支援を雪だるま式に得られる可能性がはるかに高くなるということです。

そこで当社では、マーケティング予算が限られ、コミュニティ構築に難航している起業家のためにサポートツールをご用意しています。Indiegogoでは、起業家がランディングページを活用して見込み顧客のメールリストを収集し、保存することがでます。さらに、キャンペーン開始前にIndiegogo内で支援者とやり取りでき、コミュニティを1か所で構築できるのも特徴です。

ビジネスを成功させるには、“資本金”以上に大切なものがあります。そしてリソースが限られている起業家にとって、クラウドファンディングを活用することは資金調達の面で大きなメリットです。それらを知っているからこそ、Indiegogoはキャンペーンのサイクル全体を通じて起業家と深く提携し、従来の資金調達手段にはない“クラウドファンディング”というサービスを提供しています。起業家が持続可能なビジネスを構築できるよう、サポートを行なっているのです。

——日本でもクラウドファンディングに対する認知度が高まっている一方で、既に販売されている製品の価格を釣り上げて販売する企業が問題視されています。このことについて、グローバルのトップランナーとして、プラットフォーマーはどうあるべきだと思いますか?

Indiegogoのコミュニティガイドラインでもうたっていますが、再販業者の利用は固く禁じています。安全、安心、信頼できるプラットフォームをユーザーに提供することは、当社のミッションに不可欠です。ただし、すべてのEコマースプラットフォームで悪意がある方のキャンペーンローンチを防止しようとするのは難いことです。そのため、近年、クラウドファンディング業界全体でコミュニティの安全性の問題に対処し、再販業者によるキャンペーンを早期に発見できるよう、「信頼と安全のためのイニシアチブ(Trust & Safety initiatives)」を発表しました。

当社ではトラスト&セーフティ・チームが、毎日何千ものキャンペーンを積極的に検証しています。また、内部審査委員会を設立し、最も影響力のあるトラストチームの決定も監督しています。支援者の利益を常に念頭に置き、責任感を持ちながら、トラスト&セーフティ・チームによってリスクの高いキャンペーンの対応を行なっているのです。同時に再販業者の問題もそちらで審査します。

さらに、キャンペーンに「信頼認証(Trust Proven)」のバッジの表示を導入しました。ユーザーから、キャンペーンの支持の判断基準として注目されているシステムです。

過去10年間、私たちは数多くのキャンペーンを成功させてきましたが、その間、起業家と築いた関係は決して小さなものではありません。私たちの「トラストロイヤルティプログラム(Trust Loyalty program)」は、成功実績のある起業家の新しいキャンペーンに対し、これらの起業家の過去のリスクレベルに合わせた審査を行っています。それ以外にも、我々のコミュニティを最初の防衛線として使い、小さな問題が大きくなる前に発見できるよう取り組んでいます。

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