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伸縮性に優れ自己発電するウェアラブル向けシステムを開発——マイクロスーパーキャパシタの配置を工夫

PENN STATE COLLEGE OF ENGINEERING

米ペンシルベニア州立大学工学部機械工学科のHuanyu Cheng教授が率いる研究チームは2020年12月19日、マイクロスーパーキャパシタを組み込んだ際の伸縮性を改善し、ウェアラブルデバイス向け自己発電型システムを開発したと発表した。人間の呼吸や動作から自力で発電するウェアラブル型の健康モニタリング/診断装置の開発に役立つ可能性がある。

現在の電池やスーパーキャパシタは、エネルギー密度が低く、伸縮性も劣っているなど、健康モニタリング/診断向けのウェラブルデバイスで利用するには課題が多かった。

従来のウェアラブルデバイス向けマイクロスーパーキャパシタは、サンドイッチのような積層形状をしている。このため柔軟性が低く、イオン拡散距離が長くなり、ウェアラブル向け電子部品と組み合わせて使用するには複雑なプロセスが必要だった。

こうした課題を解決するため研究チームは、マイクロスーパーキャパシタのセルを、2つのくしの歯を向かい合わせるように配置した。“島”に“橋”をかけるような設計だと説明しており、“橋”(配線)がデバイスの伸縮や屈曲に対応し、“島”(セル)の変形を抑えることに成功。研究者らは、この配置を「マイクロスーパーキャパシタアレイ」と命名した。

マイクロスーパーキャパシタアレイは、極薄リン化亜鉛ナノシートと、自己発熱性が高い多孔質ナノ材料である3Dレーザー誘起グラフェンフォームを用いて構築。実験では、電気伝導率と吸収される荷電イオンの数が大幅に改善されたことを確認。マイクロスーパーキャパシタアレイが効率的に充放電し、ウェアラブルデバイスに電力を供給するために必要なエネルギー密度を備えていることを実証した。

さらに、機械的な動きによる摩擦力を電気エネルギーに変換する技術と統合することで、自己完結型電力システムも完成させた。人が肘を曲げたり、呼吸や会話をしたりするといった日常的な動きを利用して、マイクロスーパーキャパシタに充電できる。Cheng教授は、同システムが伸縮性のあるウェアラブルデバイスに電力を供給できる可能性があると説明している。

研究成果は学術論文『Nano Energy』において「High-energy all-in-one stretchable micro-supercapacitor arrays based on 3D laser-induced graphene foams decorated with mesoporous ZnP nanosheets for self-powered stretchable systems」として2020年11月17日に発表された。

fabcross for エンジニアより転載)

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