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普通のスマホを強力な化学分析器に変える技術を開発

スマートフォンに搭載されているカメラは、弱い光を検出したり画像からノイズを除去したりする技術の向上により、個別のデジタルカメラの品質や感度と同等以上と言える。テキサスA&M大学の研究チームは、一般的なスマートフォンのカメラで、化学物質や医薬品、生体分子、病原体などを検出できる技術を開発した。研究成果は、『Reviews of Scientific Instruments』誌2021年5月号に掲載されている。

この画期的な技術は、生体分子が発するわずかな蛍光を測定できる「蛍光分光法」と、蛍光を発しないまたは発光したとしても強度が極めて弱いDNAやRNAなどを検出できる「ラマン分光法」という2種類の分光法を利用している。

開発した技術の特筆すべき点として、コストパフォーマンスの高さが挙げられる。一般的なラマン分光光度計は数千ドルのコストがかかり、主に実験室用に設計されている。しかし、開発したスマートフォン用検出器は、スマートフォンの価格に50ドル程度上乗せするだけで済む。費用を抑えられる理由の一つが、安価な半導体レーザー(LD)の光源の利用だ。

LDは、費用面だけでなく技術面でも利点がある。まず、検出したいサンプルとカメラを結ぶ線に対して垂直に集光されるため、背面反射した光がカメラに入り込まない。また、直角の励起形状が、バルク特性を測定したいサンプルに向いている。

研究チームは、このスマートフォン検出器を用いて、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコールなどのさまざまな液体有機化合物や、細菌のペレットやカロテンを多く含むニンジンなど固体物質を測定した。その結果、感度は、市販されている工業用ラマン分光光度計のうち最も感度が高い製品の約10分の1のS/N比だった。なお、RGBの単一チャネルを利用して解析することで、感度は2倍向上する。また、スマートフォンで撮影した画像のダイナミックレンジが比較的狭いという問題は、異なる露出の画像を合成するHDRのアプリを使うことで解決できるという。

研究チームは、この安価なスマートフォン用検出器が、実験室の分析機器を使用できないような現場で化学物質や病原体を検出できる信頼性のある技術だと述べている。また将来的に、GPS機能やカメラ技術のように、スマートフォンの一般的な機能として搭載される可能性もあるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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