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スタンフォード大、複雑な格子構造を持つナノ複合材料を3Dプリントする技術を開発

/Image credit: John Kulikowski

スタンフォード大学の研究チームが、ナノスケールで複雑な格子構造を持つ高分子‐金属のナノ複合材料を、3Dプリンティングにより高速で造形する手法を考案した。微細パターンの描画が可能な二光子リソグラフィー技術を用い、金属ナノクラスターによる光化学反応促進を利用することで、ナノ格子構造を毎秒100mmレベルで3Dプリンティングすることが可能になる。耐衝撃性などの機械的特性に優れることから、衛星やドローン、マイクロエレクトロニクスの微小中核部品を保護する軽量極少の保護構造を提供できると期待している。研究成果が、2022年11月17日の『Science』誌に論文公開されている。

人間の骨は、内部の硬質材料、ナノスケールの多孔質、少量の軟質材料の組合せによって耐久性を実現している。ナノスケールの3D構造と複数材料の理想的な組合せによって、骨は比較的軽量であるにもかかわらず、破壊することなく動力やエネルギーを伝達したり、衝撃や応力を分散して機械的抵抗力を発揮することが可能だ。技術進歩の著しい3Dプリンティングによって、ナノスケールで周期セル構造を持つナノ格子を創成する研究が進んでいるが、骨と同様にナノポロシティを含めたナノスケールの3D構造を持つナノ複合材料を創成することは、先端的な3Dプリンティングにとっても未知の領域である。

研究チームは、毛髪直径の何分の1レベルのナノ3D構造を有する高分子-金属のナノ格子複合材料を創成することにチャレンジした。3Dプリンティングに適した材料を設計するにあたって、レーザー光線で誘起される重合反応を促進する、金原子などから構成される金属ナノクラスターを高分子プリント原料に導入した。同時に、レーザー光線の2個の光子が吸収されて始めて反応が生じ、従来のリソグラフィーよりも微細な構造の描画が可能な二光子プロセスを取り入れた。

その結果、3Dプリンティングによってナノスケールの3D構造を造形できることを実証するとともに、金属ナノクラスターがレーザー光線を強く吸収して光化学反応を顕著に促進することで、従来よりも100倍速い毎秒100mmレベルで3Dプリンティングできることを明らかにした。更に、高分子と金属のナノ複合材料が造形され、耐衝撃性などの機械的性質に優れていることを確認した。同程度の密度を持つ材料と比べて高強度を示すとともに、衝撃エネルギー吸収能力が2倍になり、変形した後のスプリングバックする回復能力も高いことから、衛星やドローン、マイクロエレクトロニクスなどの微小中核機能部品を保護する、軽量極少の保護構造を提供できると期待される。

金属ナノクラスターをアクリレート、エポキシ、タンパク質など様々な種類の高分子と組み合わせることができ、汎用性が高いことも実証され、「金属ナノクラスターは異なった高分子を重合できるので、多種類の材料を1つの構造に造り込む3Dプリンティングに活用することも可能だ」と、研究チームは語る。

fabcross for エンジニアより転載)

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