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大気中の二酸化炭素を回収し、炭酸水素ナトリウムとして海中に保存する新材料を開発

気候変動問題を解決するためには、二酸化炭素(CO2)排出量を削減するとともに、CO2の除去/回収が重要となる。大気から直接CO2を回収するDAC(Direct Air Capture)技術が注目されているが、大気中のCO2濃度は400ppmと極めて低濃度であるため、CO2の効率的な回収は難しいのが現状だ。

アメリカのリーハイ大学の研究チームは、これまで報告されているDAC吸着剤よりも2〜3倍高いCO2回収能力を示す新しい吸着剤を開発した。回収したCO2は、海水によって無害で安定な炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)に変換して保存することが可能だ。研究成果は、『Science Advances』誌に2023年3月8日付で公開されている。

研究チームが開発した吸着剤は、アミンを銅(II)錯体で修飾したポリアミン系のハイブリッド吸着剤だ。この吸着剤は、大気中と同じ400ppmという低いCO2濃度の条件下で、従来の吸着剤と比べて2〜3倍高い吸着能力を持つ。

また、他のアミン系吸着剤と同様に、90℃以下の熱エネルギーによってCO2を回収できるだけでなく、海水のような単純な塩水によって常温でCO2を回収して再利用することが可能だ。海水による再生を複数回繰り返しても、吸着剤の性能が劣化しないことを確認している。

同じ塩分濃度であればNaHCO3濃度が上昇しても海洋は環境的に安全なため、海が巨大な貯蔵庫になる可能性がある。従来法ではDACにより回収したCO2は地中に埋められることが一般的だ。そのため、特に日本のように国土が狭く海に囲まれている国にとって、この吸着剤は魅力的な選択肢になると、研究チームは述べている。また、この吸着剤を利用したDACプラント全体を海上に設置する可能性についても言及している。

さらに、この吸着剤の原料は、世界中の複数の製造企業から入手できるため、迅速なスケールアップが可能だという。熱と海水という2種類の再生方法を持ち、海洋を脱炭素の吸収源として利用できる新しい吸着剤は、DACの応用機会を大幅に拡大するかもしれない

fabcross for エンジニアより転載)

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