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イベントレポート

高校生から大人まで真剣勝負——「全日本ロボット相撲全国大会」

2014年12月14日、東京の両国国技館で「第26回全日本ロボット相撲全国大会」が開催された。今回は全国大会に続いて第1回となる国際大会「INTERNATIONAL ROBOT SUMO TOURNAMENT 2014」も開催され、一段と規模が大きくなった。この両大会の様子をレポートする。

ロボット相撲とは?

全日本ロボット相撲大会は富士ソフトが創立20周年記念行事として始めたイベントで、日本の若い人たちにロボット作りを通してものづくりの楽しさを知ってもらうことを目的としている。1990年の第1回大会以来、徐々に規模が大きくなって地区予選も開かれるようになり、第20回大会からは海外からの参加チームもあるという、長い歴史のあるイベントだ。

第26回大会となる今回は全国から993台のエントリーがあり、全国9カ所の地区予選を勝ち抜いた64台が、全国大会の土俵で雌雄を決する。

全日本ロボット相撲大会には、高校生だけを対象にした「高校生の部」とオープンな「全日本の部」がある。高校生大会は11月23日に開催され、島根県立出雲工業高等学校(自立型)と山口県立田布施農工高等学校(ラジコン型)が優勝した。今回レポートする全日本の部には高校生から一般まで出場可能で、参加者の内訳はおよそ60%が高校生、あとは工業高校のOBや先生、社会人などとなっている。 

相撲ロボットの機体は幅20×奥行き20cm以内、重量は3kg以内と決められている。高さに制限はない。大会は自立型とラジコン型に分かれている。

自立型はあらかじめロボットにさまざまな戦術をプログラムしておき、スイッチを入れた後はロボット自らが動いて戦う方式。ラジコン型は操縦者がプロポを使いロボットを操縦する方式となっている。

もちろん、ロボットはすべて手作り。外装はもちろん、動きを制御するプログラミングなども重要なポイント。ハードウェア、ソフトウェアの両面で高度なものづくり技術が必要となる。

それでは、実際にどのようにロボット相撲が行われているのか、動画でご覧いただくことにしよう。 

土俵は直径1540mmの円形で、外周は50mmの白線となっている。ロボットの一部でも相手より先に土俵外の地面に着いたら負けとなる。土俵内でひっくり返ってもその時点では負けではない。試合時間の3分以内に2本先取すれば勝利となる。1対0で時間切れの場合は1本取ったロボットの勝利。引き分けの場合は審判の判定、もしくは延長線で勝敗を決定する。

土俵は鉄製で黒く塗られている。黒い理由は、ロボットが白線を見分けるセンサを搭載しているため。ロボットには磁石が搭載されており、接地力を強くして相手に押し負けないようにしている。あまりにも磁力が強いため、ロボットを動かすときに引きずると土俵に傷がつくことがあり、その場合は黒いマジックペンで塗る。ロボットの誤動作を最小限にするために大事な作業だ。

会場では4つの土俵で自立型、ラジコン型それぞれの試合が同時進行する。大会はトーナメント方式で、チームは最大2人まで登録可能だ。

実際にロボット相撲を観戦すると、ロボットのスピードや重量感(磁石による接地力の強さ)、相手のセンサを惑わすための仕組みなど、それぞれに工夫を凝らしているのがわかる。 

本体前面にブレードを取り付けているロボットが多いが、これで相手の下に潜り込み、一気に押し出すというのが基本的な戦術のようだ。

勝負は一瞬で終わるものから、お互いぶつかったまま動かなくなる場合などさまざま。なかには衝突の衝撃で火花が飛び散ったり、トラブルで煙を上げたりするロボットもあるなど、かなりハードヒットな戦いが繰り広げられており、ついつい見入ってしまう。

白熱の決勝戦

全日本ロボット相撲全国大会の自立型決勝戦は、3連覇をかけた大阪府・年金生活Aチーム「年金生活3号」と、大分県・マルす部屋「NORISK」の対決となった。

対決は熱戦に。4度の引き分けのあと、年金生活3号が2本取り見事に3連覇を達成。横綱の称号を手に入れた。年金生活3号はブレードを持たないタイプの機体。積極的に押していくタイプではなく、相手を受け止めて押していくアルゴリズムを採用しているように見受けられた。

ラジコン型の決勝は大分県・大分工業高校の「毘沙門零」と愛知県・チームうどんの「あぽたん」の対決。 

圧倒的なスピードを持つ毘沙門零が優勝という結果になった。両チームとも、おめでとうございます。

世界の猛者が両国国技館で対決

全日本大会終了後、そのまま国際大会「INTERNATIONAL ROBOT SUMO TOURNAMENT 2014」に突入。これまではプレ大会として行われていたが、今回から本開催となり、ラトビア、ルーマニア、スペイン、トルコ、メキシコ、ブラジル、コロンビア、モンゴル、ポーランドの合計9カ国が出場した。

全日本大会で第26代横綱となった年金生活3号と毘沙門零も参加し、自立型32台、ラジコン型10台によるトーナメントが開催された。

レギュレーションは全日本大会と同じ。それぞれの土俵で熱い戦いが繰り広げられた。

自立型決勝戦はラトビア・ROBOTU SKOLAの「Blitz」と、トルコ・KAROTの「SAKIN」の対決となった。 

1本目はSAKINが取ったものの、2本目3本目をBlitzが連勝し、国際大会の初代自立型横綱となった。

ラジコン型決勝はメキシコ・ESIMEZ ROBOTSの「ZILVER」対 全日本ラジコン型横綱の毘沙門零の対決。

なんと、毘沙門零が勝利! これで全日本大会と国際大会のW横綱となった。

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