新しいものづくりがわかるメディア

RSS


イベントレポート

高校生から大人まで真剣勝負——「全日本ロボット相撲全国大会」

ロボット相撲のベテランに直撃

 実際、ロボット相撲のロボットはどのようにして作られているのだろうか。そこで今回、ラジコン型ロボットで全国大会に出場した、吉岡謙さんにお話を伺った。吉岡さんは、以前「魔改造ロボット掃除機大相撲バトルロワイアル —fabcross杯—」にも参加していただいている、fabcrossの常連さんだ。

吉岡さんは、ロボット相撲には第3回から毎年出場しているとのこと。いわばロボット相撲のベテラン。そこでいろいろな質問をぶつけてみた。

——吉岡さんは1回戦の途中で試合を止められました。

「前面に取り付けているブレードが破損してしまいました。ブレードは刃物で危険なため、破損して飛んだりすると危ないという安全性の問題で、ブレード破損は反則となり失格になってしまいます」

ラジコン型1回戦で、吉岡さんのロボット「DKR24」はブレード部分が破損したことで反則となり惜しくも敗退。 ラジコン型1回戦で、吉岡さんのロボット「DKR24」はブレード部分が破損したことで反則となり惜しくも敗退。

——それは残念でした。ロボットを見ていると、四角いタイプと羽根のようなものが付いているものがありますが、どう違うのでしょうか?

「20×20cm、3kg以内という制限があるので、四角い箱形は作りやすいんですよね。羽根型は、箱型を発展させたもの。20×20cmの制限内に羽根を収めて、スタートと同時に広がります。羽根に白い旗を付けて相手のセンサを惑わしたり、ブレードを付けて相手の横から倒しにいくといった作戦がとれるのが特長です」

——吉岡さんのロボット「DKR24」の特長はなんでしょう?

「これまで作成したロボットの改良型で、調整をシビアにして押す力を強めました。磁石による吸着もかなり強くしています。ロボットの重量制限があるので、3kg以内でバッテリー、モーター、駆動のギア比、磁石の重さなどを調整しています」 

吉岡さんのロボットDKR24。前方のブレードは走りだしたときに広がる仕組み。 吉岡さんのロボットDKR24。前方のブレードは走りだしたときに広がる仕組み。
ブレード部分。破損しているのがわかる。 ブレード部分。破損しているのがわかる。

——磁石の吸着力はかなり強いと感じました。

「磁石の吸着力は30kgから60kgくらい。もっと強いものは100kg以上のものもあります。ただし、吸着があまりに強くなるとモーターを強くしなければならなくなり、重さの制限に引っかかってしまいます。その辺りのバランスには気を使っています」

——使用されているセンサはどんなものなのでしょう。

「基本的にはカラーセンサを底面に付けていて、外周の白線を認識すると戻るようになっています。そのほか、敵を検知するためのセンサが付いています。880nmくらいの変調をかけた赤外線センサが一般的です」 

ロボット内部は基盤やモーター、シャフト、磁石などが収められている。3kgという制約があるため、バランスが重要。 ロボット内部は基盤やモーター、シャフト、磁石などが収められている。3kgという制約があるため、バランスが重要。

——そのセンサを制御するためのプログラミングという部分で、ソフトウェアのエンジニアが活躍しますね。

「そうですね。センサが反応してからどう動くのかというのは、ソフトウェアエンジニアはかなり工夫のしがいがあるところとだと思います」

——吉岡さんはラジコン型で出場されていますが、操縦テクニックもかなり重要になるのではないでしょうか。

「ラジコン型の中にもセンサを搭載しているタイプがあります。半自立型と呼ばれています。スイッチひとつで、ラジコン型と自立型を切り替えられるようになっていたりしますね。最初のスタートだけラジコンで操作して、あとはロボットが自動的に動きます」 

DKR24はラジコン型なのでプロポで操作をする。プロポは市販品を使用。 DKR24はラジコン型なのでプロポで操作をする。プロポは市販品を使用。

——吉岡さんのロボットはセンサは搭載していないタイプですか?

「センサは搭載していないので操縦に関しては自分のテクニック次第ですね。センサを搭載するとその分重くなるので、良し悪しですね」

——外装の材料というのは何なのでしょうか。

「アルミが多いですね。強度の高いところは7000番台のジュラルミンを使うこともあります。全国レベルのロボットを作ろうと思ったら、だいたい1台20万円くらいになりますね。1回作れば2、3年は使えます」

——ロボットの製作において一番重要なところはどこでしょうか。

「機構設計は重要だと思います。ブレードの取り付け方、モーター、バッテリー、磁石とのバランスでスピードがある程度決まります」

吉岡さんのロボットの四股名は「DKR24」。数字の部分は出場回数ということなので、来年は「DKR25」となることだろう。

優勝者&主催者インタビュー

ここからは、各部門の優勝者や主催者へのインタビューをお届けする。

 自立型第26代横綱 年金生活3号 田村成世さん

試合を見守る田村成世さん。 試合を見守る田村成世さん。
自立型第26代横綱ロボット「年金生活3号」。 自立型第26代横綱ロボット「年金生活3号」。

「勝とうと思って1回1回やっているわけではないんです。部品ひとつひとつをきちんと作って、それをしっかりと組み立てているだけ。基本的には安全第一を心がけているので、ブレードは使っていません。このロボットもここ数年ほとんど変えていないんです。来年もおそらく同じロボットで出場すると思います」

ラジコン型第26代横綱&国際大会ラジコン型優勝 毘沙門零 橋爪優明さん、佐藤力也さん

佐藤力也さん(左)橋爪優明さん(右) 佐藤力也さん(左)橋爪優明さん(右)
優勝ロボット「毘沙門零」。 優勝ロボット「毘沙門零」。

「今回で2回目の出場です。前回は1回戦で負けてしまいましたが、今回はギアボックスの軸を精密に作ることと、ロボットの磁石の吸着力を調節して、足回りをスムーズにしてパワーを上げました。半自立型でプログラムも組んでいます。完全手動のラジコン型に比べ、人間では反応しきれない部分にも対応できます。今年で高校卒業ですが、大学に入ってからも出場したいと思います」

国際大会自立型優勝 Blitz エイナース・デクスニスさん

エイナース・デクスニスさん エイナース・デクスニスさん
優勝ロボット「Blitz」。 優勝ロボット「Blitz」。

「ロボットに興味があって、15年くらいロボット開発をやっています。決勝まで行く自信はありましたが、日本のロボットに勝てるとは思いませんでした。ロボットの特長は色。黒一色にしているので、前からも後ろからも相手が認識しづらいようになっています。日本のロボットは非常に強く、組み込みや戦略もとてもよかったので、今後の参考にしたいと思います」

富士ソフト常務執行役員 須藤勝さん

「会社としては、この大会を社会貢献活動と位置付けています。大会を通じてロボット相撲に興味を持つ人が増えて、技術が発展していくことが第一の目的です。海外のロボットも年々レベルが上がってきていて、今回日本のロボットに勝ったのはとても喜ばしいことだと思います。今後は、国際大会の参加国数をさらに増やしていきたいですね。また、弊社ではロボットアメリカンフットボールという競技も行っているので、そちらも広められればと思っています」

もし、ロボット相撲に興味が湧いてきたら、公式Webサイトから過去のアーカイブが参照できるので、ぜひアクセスしてほしい。そして、2015年の大会に出場してみてはいかがだろうか。ハードウェア、ソフトウェアともに持っている技術やアイデアを詰め込んだロボットと共に、両国国技館で戦おうではないか!

関連情報

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る