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未来を拓くキーワード

IoT(Internet of Things) Makersも巻き込む大きな動きに(上)

「IoT(Internet of Things)」は、エレクトロニクスやICT(情報通信技術)分野で、いまもっとも注目されているキーワードの一つです。
この言葉は、あらゆる「モノ」がインターネットにつながった環境を表しています。IoTは、ICT業界やエレクトロニクス業界をはじめとするさまざまな分野に革新的な変化をもたらし、これによって新しい市場が生まれることが期待されています。IoTをめぐる大きな動きは、パーソナル・ファブリケーションに取り組む人たちにも及ぼうとしています。

IoT(Internet of Things)の意味とは?

IoTは、さまざまな「モノ」がインターネットにつながり、それらが人手を介さずに情報を交換する仕組み、あるいは状態を指しています。

日本では「モノのインターネット」と訳されていることが多いようです。ここでいう「モノ」とは、電子機器だけではありません。まさに、あらゆるものを指しています。無線通信機能を備えたタグや、センサを取り付けることで、自然界にある草木や石、食品なども、インターネットに接続することが可能になるからです。

IoTと同じ意味で「Internet of Everything」という言葉が使われることもあります。また、 複数の機器同士が直接情報交換しながら稼働する「M2M(Machine to Machine)」という言葉も最近よく耳にすることがあります。機器をつなぐネットワークをインターネットに限定しているわけではありませんが、これもIoTと同じ概念だと言えるでしょう。

IoTという概念が出てきた背景には、組み込み技術や無線通信技術の進化によって、インターネットにつながる機器が、これから爆発的に増える機運が高まってきたことにあります。米国の大手調査会社Gartner社の報告によれば、2009年にインターネットにつながっていた「モノ」は約25億個。これが2020年には300億個以上と一気に膨れあがります(図1)。

この理由は、2009年の時点では、「モノ」のほとんどがパソコン、スマートフォン、タブレット端末などの情報機器でしたが、2020年までに情報機器以外の「モノ」がインターネットにつながるからです。 

図1 インターネットにつながる「モノ」の数(出典:米Gartner社) 図1 インターネットにつながる「モノ」の数(出典:米Gartner社)

IoTがもたらす莫大な経済的価値

さまざまな「モノ」がつながるようになると、インターネット上のバーチャルな世界と実社会のリアルな世界が連動するようになり、そこでさまざまな新しいサービスやビジネスが生まれる可能性が出てきます。また、数多くの「モノ」から生まれた膨大なデータが、さまざまなサービスやビジネスに革新をもたらすことも期待されています。いわゆる「ビッグデータ」です。Gartner社によると、IoTがもたらす経済的価値の総額は2020年に1.9兆米ドル(約190兆円)にも上ります。

すでにIoTの時代をにらんだ動きがさまざまな分野で始まっています。その一つが、自動車です。電子化が加速している自動車には、いまや1台に大量のセンサーが組み込まれるようになりました。それらのセンサーはさまざまなデータを生み出します。

こうしたデータをIoTの仕組みの中で活用すれば、自動車を進化させることができるでしょう。さらに道路を走る自動車のそれぞれから情報を吸い上げることができれば、自動車をベースにした交通システムを大きく革新することもできるかもしれません。

こうした将来を見据えた米Google社は、「Android」を自動車向けの標準ソフトウエア・プラットフォームとして普及させることを目的とした業界団体「Open Automotive Alliance」を2014年1月に発足させました。2014年3月には、自動車とiPhoneを連携させるための機能「CarPlay」を米Apple社が発表しています。この機能を利用することによって、運転しながらiOSデバイスを安全に操作できるようになります。つまり、スマートフォンを介して通信ネットワークに自動車がつながるわけです。すでに、多くの自動車メーカーがCarPlayに対応する方針を明らかにしています。 

医療や農業への展開も進行

図2 NTT、NTTドコモ、東レの3社が開発した「生体情報計測用ウエア」(写真:日経エレクトロニクス) 図2 NTT、NTTドコモ、東レの3社が開発した「生体情報計測用ウエア」(写真:日経エレクトロニクス)

IoTは医療の分野にも広がる可能性があります。例えば、人体からリアルタイムで収集したデータを活用した高度な健康管理システムを実現できます。すでに、こうしたシステムに向けた技術開発が始まっています。その一例が、日本電信電話(NTT)、NTTドコモ、東レが開発した、「生体情報計測用ウエア」です(図2)。 

東レとNTTが開発した新しい機能素材「hitoe」が使われており、同ウエアを身に付けるだけで、心拍数や心電波形などの生体情報が測定できるようになります。この機能素材は、ナノファイバー生地に高導電性樹脂をコーティングしたもので、電極の役割を担えます。

このため生体情報計測用ウエアに設けた端子に測定器を接続するだけで、生体情報を取得することができます。いずれは同ウエアから無線通信でスマートフォンなどに送信したりすることもできるようになるはずです。NTTドコモは、この生体情報計測用ウエアとスマートフォンなどを利用したヘルスケア関連の新サービスを2014年中に開始する予定です。

カルビーや富士通グループなどは農業への展開も進めています。北海道にある約1100件の契約農家からじゃがいもを調達しているカルビーは、北海道内の生産地区3カ所に、気象センサーを設置。そこから集めたデータを解析することで、収穫量を左右する疫病が発生するリスクを管理しています。もともと半導体工場だった敷地を使って植物工場を運営している富士通グループは、IoTの技術を使って温度、湿度、明るさ、養分濃度を高精度で管理できるシステムを開発。これを利用して、人工透析を受けている人たちのために、カリウムの含有量が通常の5分の1と少ないレタスを生産しています。

このように日本国内で、IoTを利用した新しい取り組みが続々と始まっている一方で、欧州では国家レベルの大規模なプロジェクトも立ち上がっています。

後編に続く

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