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ウエアラブル “ポスト・スマホ”の有力候補(上)

衣服のように身に付けることができることを表す言葉「ウエアラブル(wearable)」。エレクトロニクスやICT(情報通信技術)の分野で、いまもっとも注目を集めるキーワードの一つです。ウエアラブルを特長とした新基軸の機器や、これを利用したサービスを開発する動きが世界で活発化しつつあります。しかもこの分野には、新しいビジネスやサービスを模索する既存の企業に加え、「Makers」を志向する新興企業も次々と参入しています。

ウエアラブル端末の開発が盛り上がる“背景”

人間が身に付けて使うウエアラブル端末(あるいはウエアラブル機器)の開発は、エレクトロニクス業界を中心に大きなブームになっています。

例えば、2014年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された世界最大級のコンシューマ・エレクトロニクスの展示会「2014 International CES」では、大手、ベンチャー、スタートアップが入り交じる形で、多くの企業がウエアラブル端末を展示しました(図1)。

図1 「2014 International CES」に登場したウエアラブル端末

図1 「2014 International CES」に登場したウエアラブル端末
(a)Wellograph社の腕時計型端末
(b)JayBird社の腕輪型端末
(c)ソニーのヘッドマウント・ディスプレイ
(d)セイコーエプソンのヘッドマウント・ディスプレイ
※NE 2014年2月3日号p.55 図1(a)と(b)&p.56 図2(a)と(b)

その数は数十種類にも上ったと言われています。最近では東芝が、2014年5月22日に開催した経営方針説明会の中で、独自に開発したヘッドマウント・ディスプレイを披露しました。

ウエアラブル端末を開発する動きが盛り上がっている背景には、大手企業を中心に“ポスト・スマホ”を模索する動きが出てきたことがあります。スマートフォンは、パソコンに代わる新たなコンピューティング環境を人々にもたらしました。

これによって、新しいビジネスやサービスが次々と生まれています。こうした中、スマートフォンに続く次世代のプラットフォームで主導権を握ろうと、いち早く動き出す企業が出てきました。こうした企業の多くが目を付けたのがウエアラブル端末でした。

しかも、スマートフォンの普及によって、ウエアラブルなシステムを開発するうえで欠かせない小型軽量化や無線通信の技術の進化が加速しています。これもウエアラブル端末の開発に拍車をかける一因になっています。

また、ウエアラブル端末の分野では従来の概念にとらわれない新しい機器が市場で受け入れられる可能性があることや、そうした新基軸の機器を既存の技術を活用しながら実現できることなどから、多くのスタートアップ企業が、この分野に参入しています。 

Google Glassの登場が契機に

ウエアラブル端末の開発は最近になって始まったわけではありません。

すでに1980年代から研究が始まっていると言われています。1998年には、日本アイ・ビー・エムが、「ウエアラブル・パソコン」と呼ばれる小型のパソコンを試作して話題になったこともありました。本体の大きさが26mm×80mm×120mmで、本体にケーブルで接続された専用のポインティング・デバイスを使って操作します。ディスプレイには、ヘッドマウント・ディスプレイが使われていました。このほかにも、ヘッドマウント・ディスプレイをはじめとするメガネ型端末や腕時計端末など、さまざまなウエアラブル端末が、これまでに登場しています。

最近になって盛り上がりを見せるウエアラブルのブームのキッカケを作ったのが、米Google社のヘッドマウント・ディスプレイ「Google Glass」でした(図2)。 

図2 米Google社の「Google Glass」※NE2013年11月25日号 p.26 図2 米Google社の「Google Glass」
※NE 2013年11月25日号 p.26

同社が、Google Glassを開発していることを明らかにしたのは2012年4月のことでした。2013年4月には、開発者向けに出荷を始めています。Google社は、このときハードウエアの仕様やユーザー・インタフェースのガイドラインなども発表しました。具体的には、8フィート(約2.4m)先に25型相当のHD(high definition)映像がユーザーに見えるように設計された表示部、無線通信機能、カメラ機能などを搭載。16Gバイトの記憶装置を内蔵し、Google社が提供するクラウド・ストレージ・サービスと同期する機能も備えています。

ヘッドマウント・ディスプレイ自体は新しいものではありませんが、Google Glassが従来のヘッドマウント・ディスプレイよりも軽量で、外観もずっとスマートだったことや、Google社がGoogle Glassの普及に向けて積極的に取り組む姿勢を見せたことから、ヘッドマウント・ディスプレイが改めて脚光を浴びるようになりました。このころからウエアラブル端末を開発する動きが、にわかに活気づいてきます。

後編に続く

 

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