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オモテク探偵団!~オープンイノベーションの未来を発掘~by 面白法人カヤック

研究室でペロペロされたい!——電気通信大野嶋研究室に行ってみた

fabcrossと面白法人カヤックが大学研究室を訪問する特別企画がスタート。今回は東京・調布にある電気通信大学野嶋研究室を訪問。センサを駆使した面白デバイスのハンズオンから、ユニークな研究が続々生まれる理由まで伺いました。

電気通信大学 野嶋研究室 電気通信大学 野嶋研究室

研究テーマ

AUGMENTED SPORTS
VRやセンサなど、さまざまな技術を取り入れた新しいスポーツ競技を開発。超人スポーツ※とも連動して、身体能力の差を技術で埋めながら楽しめるスポーツを開発している。

触覚を中心とするインタラクティブシステムの開発・応用
ものを触るという感覚を起点に、双方コミュニケーションによって今までに無かった楽しさや発見を提供するシステムを研究・開発する。

バーチャル・リアリティ(VR)の基礎的な技術開発
HMDやセンサを活用した、五感に訴えるデバイスの研究・開発を行う。

※超人スポーツ
テクノロジーと現代の文化をスポーツに取り込み、年齢や性別、障害に関係なく楽しめるスポーツを開発する日本のプロジェクト。2015年に設立。
http://superhuman-sports.org/

最近の研究成果の一つがこちら。

電気通信大の四條亮太さん、長野瑞生さん、溝口泉さん、田村莞爾さん、日岐桂吾さん、安藤貴広さんが開発した「りっかーたん」 電気通信大の四條亮太さん、長野瑞生さん、溝口泉さん、田村莞爾さん、日岐桂吾さん、安藤貴広さんが開発した「りっかーたん」

その名も「りっかーたん」
2016年10月に開催された国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC)で明和電機社長賞にも選ばれた学生有志による作品で、手を箱の中に入れると、中にいる「りっかーたん」がなめてくれる。

促されるまま、恐る恐る手を入れてみると……

りっかーたん「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ」

中農(カヤック)「あー!こういう事ね!」

腰が砕けそうになりながら叫ぶリアクションに、学生のみなさんもつられて笑ってしまう。感触が伝えられないのが残念だが、大のオトナがめったに見せない表情から察してほしい。

思わずこういう表情になってしまう 思わずこういう表情になってしまう
よく見ると、中に何かいる・・・。 よく見ると、中に何かいる・・・。

これが研究?と思うかもしれないが、動物が飼い主をなめる事で気持ちが通じ合うといった、舌を介したコミュニケーション機能に注目したのが開発のきっかけ。 IVRCへの出展を前提に開発したので、エンターテインメント性を持たせたそうで、実際は舌という独特の触感によるコミュニケーションの可能性を研究したものだ。 ユニークな研究が多い事で知られる電通大だが、インタラクティブ性を志向する野嶋研究室も電通大らしいアウトプットが多い。

先生にお話を伺いました

電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報学専攻 野嶋 琢也准教授 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報学専攻 野嶋 琢也准教授

——研究内容を伺うと、触るという事を重視しているようですね

野嶋准教授「触るというのは自ら体を動かして触りにいくという動作が基本になっています。置いた手の上に何かが乗ってきて触るというのと、自分から意志を持って触るに行くというのが、感度として全然違うという研究結果もあり、触覚や身体性などをキーワードにテクノロジーで触る事の楽しさを拡張するというのが基本になっています」

——触る楽しさという点が超人スポーツにもつながっているのでしょうか

「そうですね。健康維持という面でもスポーツは非常に有効なのに、運動神経が良くないからとか、うまくできないからという理由でスポーツをやらないようにあってしまうのは、すごくもったいなくて、そういう人たちでもテクノロジーの力を使って楽しめるんですよ、という事を伝えていきたいなと思います」

——りっかーたんはどのような経緯で誕生したんですか?

「これは有志の学生たちによる作品で、もともとIVRCに出す前提で開発されたものです。実は私自身は開発にはほとんど関わっていません。展示のために開発したので、ああいった感じだし、世間的には『また電通大か』という感じかもしれませんが、ちゃんとひもといていくと実社会に活用が見込める要素もあり、そのつなげ方を思いついた時に達成感がありますね」

——「また電通大か」(笑)もはや伝統に近いものがありますよね。なぜそういった学生が電通大に集まるのでしょうか

「本当に変なことを思いつく天才みたいな学生が何年かに1回たまたま入学して、彼らが作った面白いものがメディアで好意的に取り上げられて、それにひきつけられた人が入学してくるといったサイクルがあるのかなと思います。研究室に来る子は基本的にまじめな子が多いのですが、何か一つ光るものを持っている子が多い。それも『あ、そっちの方向に光ってるの?』みたいな、思ってもいなかった方向の光り方(笑)」

——そんなユニークな学生さんも集まる中で、どのような点を意識して指導されていますか?

「とにかく手を動かすことですね。悩むことも大事ですが、長く悩みすぎるのは時間の無駄なので、もし学生が悩んでいて止まっているようであれば「じゃあ、そこはここで止めて、これ動かそう。これつくろう」って声をかけるようにしています。基本的には学生の個性やアイデアを尊重して、研究している様子を観察しながら、どういう応用先があるかを一緒に考えるようにしています」

たくさんの人に触れてもらわないとわからないーー触覚系デバイスにまつわる苦労

「エンターテインメントに繋がるデバイスやインターフェースに関わる研究者は皆同じ悩みを持っていると思いますが、多くの人に体験してもらわないと、研究結果の良しあしが評価できない——つまり、多くの人に楽しんでもらうための研究結果を検証するためには、たくさんの人に実際に触ってもらう必要がある事なんです」

——確かに体験してもらう人を集めるだけでも大変ですね…。そう考えると超人スポーツは日本各地でハッカソンも開催するなど、検証する点をかなり重視されているようにも思います。今後の目標はありますか?

「超人スポーツで言うと、モーターやマイコンなど価格面でも使い勝手の面でも、かなりこなれてきたと思いますが、例えば生き物を想起させるような動きを実装するのは依然として難しいなど、まだまだ下げるべきハードルがたくさんあります。そういう難しいことをもっと身近にする——おもちゃを組み立てるように部品を簡単に組み立てて、ちょっとプログラミングすれば動いて、誰もが簡単に新しいスポーツをつくれるような世界にしたいですね」

お知らせ

カヤックのウェブサイトでは記事に登場したカヤッククリエイター陣と電通大によるブレストを掲載しています。併せてご覧ください。
https://www.kayac.com/news/2017/01/open_innovation

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