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特別レポート@大分

3Dプリンタで「1000人が必要なもの」をつくる大分芸短のデジタルファブ講義

先生しか使えなかった3Dプリンタを自分で使いこなせるように

今回の授業を大学側ではどう捉えているのか。芸短の美術科デザイン専攻講師の松本康史さんは、地方だからこそ、こういった新しい時代の流れを取り入れることが必要だったと教えてくれた。

「これまでも3Dモデリングしたデータを実際に出力して改良を繰り返すというシーンは授業の中でありましたが、石膏タイプの3Dプリンタが学内に1台あるだけで、さまざまな制約から学生自身で3Dプリンタを操作するということができず、先生だけが出力してきました。今回の講義のように学生が自ら3Dプリンタを自由に使って試作できるというのは、データを作ったら先生に任せたり出力サービスを使ったりするのではなく、出力する上での工夫やモデリングのノウハウを身につけられるので、社会に出た後も非常に大きな意味を持つと思います」

一方で学校が3Dプリンタを導入するにあたってはさまざまなハードルがあるという。

「3Dプリンタ自体がまだ過渡期にあるハードなので、設定や操作の癖や、故障した時の対応が地方だと時間がかかってしまうという問題はあります。また、学生が3Dプリンタの制約に縛られたモデリングをしてしまうという課題もあります。そういった制約があるにしても、今のものづくりの新しい流れを体験して知識を蓄えることに意義を感じています」 

大分県立芸術文化短期大学の松本康史さん。 大分県立芸術文化短期大学の松本康史さん。

それまで学校に1台しかなく先生しか使えなかった3Dプリンタが、今回の講義を受ける学生6人のために2台提供されたことで学生のモチベーションも高く、通常の講義よりもはるかに短い制作期間にも関わらず、学生の個性が反映されたプロダクトが着々と出来上がることに松本さんも手ごたえを感じている様子だった。

フィラメントを使った分だけモデリング技術も向上する

今回の講義を神田さんと共に企画した平本さんは、よい作品を作ることが今回の授業のゴールではないと話してくれた。

「8月の授業が終わって東京に戻ってからも、学生のことが気になってfacebookで質問を受けたりしていましたが、9月に入って大分に行ったらみんな3Dプリンタを使いこなしていて、XYZプリンティングから提供を受けたフィラメントも数箱使い切ってるし、使った分だけモデリング技術も向上していると感じました。

今回のカリキュラムはあくまでも学生に対する教育なので、良いプロダクトを作ることとともに、どれだけ伸びたかが重要です。授業で学んだことを知識として身につけて、きちんとモデリングできているかが重要になってきます。デジタルファブリケーション技術や販売チャネルからクリエイティブコモンズやメイカーズムーブメントに至るまで、それまで知らなかったことを学びながら、さまざまな制約の中でどうやって良いものを出すかを経験することが今の彼らにとっては大事なことだと思います」 

神田さんと共に講義を担当した平本知樹さん。 神田さんと共に講義を担当した平本知樹さん。
作成したデータをすぐそばにあるダヴィンチから出力し、形状を確認しながらデータを修正する。そのサイクルを何度も繰り返せることが3Dプリンタを活用する最大のメリットだという。 作成したデータをすぐそばにあるダヴィンチから出力し、形状を確認しながらデータを修正する。そのサイクルを何度も繰り返せることが3Dプリンタを活用する最大のメリットだという。

取材当日は翌日の発表日に備えて、データの修正と3Dプリンタでの出力の作業に加え、出力した作品の撮影など夜遅くまで作業が続いた。

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