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BtoBの会社が、BtoC向けイベントにチャレンジしてみた

前例なし、経験なし、チーム初対面から完成させるワークショップのつくりかた

この数年、日本各地にファブ施設が増えたことで、デジタルファブリケーションに触れる機会と場も多様化しています。そうした中でレーザーカッターや電子工作を使ったワークショップをやってみたいと考える人も少なくありません。自分の職場でワークショップをやってみたいという人に向けて、企画した際の苦労や進め方などを大日本印刷(DNP)の田ヶ原絵里さんに寄稿いただきました。(編集部)

田ヶ原絵里(たがはらえり)
2011年に企画職として入社。BtoB向けシステムの販売企画、BtoC向け家計簿アプリの企画・運営を経て、デジタルファブリケーションをテーマに新規事業立上げを担当。

DNPは印刷会社の新しい事業アイデアとして、3Dプリンタをはじめとしたデジタルファブリケーション事業開発を2016年に本格的にスタートしました。
3Dプリンタの知名度は上がったものの、その有用性についてはまだまだ一部の人しか実感できていない状況にあります。発展途上の技術「デジタルファブリケーション」をビジネスにしていくためには、それらがどのように自分たちの生活を良くするのかを、実践しながら開拓していく必要があります。

この記事では、作ることへの意欲が高い社内の若手女性社員の有志で「ファブ女」を結成し、2016年10月にハロウィンをテーマにしたワークショップを実施するまでの経緯をご紹介します。

未開拓領域「デジタルファブリケーション」への挑戦

きっかけは、上長が視察したアメリカのTechShopでした。
ものづくりが好きなたくさんの方々が、お互いの持つ技術を競い合い、新しくものを生み出し、やがてお客さんとして来ていたユーザーが講師になり、また新しいお客さんを育てていく……かつてのシリコンバレーにも似たサイクルを持ち、新しいことにチャレンジする風土があったそうです。

DNPはかねてより印刷会社として様々な2Dのデータを取り扱い、チラシやパンフレット、カタログからWebに至るまでデジタルツールを使い、多くの企業の発信したい情報を適切な形に加工・編集して発信することに貢献してきました。
これまで扱っていたデータが2Dから3Dに広がり、誰もがデータを簡単に作成できるようになると、生活者がどんどん新しいものを生み出すチャンスが広がっていくと考えました。

企画者本人ですらできないことを、誰でもやってみたいと思わせるために

Makersムーブメントの一般認知度はまだまだ低い状態です。そこで、技術の紹介ではなく、技術の活用方法の紹介をする人が必要だと考え、難しい技術をより分かりやすく楽しく解釈し発信するプロジェクトとして、社内の若手女性社員数名と、「ファブ女」を立ち上げました。
例えば、レーザーカッターとUVプリンタを使って短時間に親子で楽しめるよろいやかぶとをつくったり、3Dプリンタとバキュームフォームを使ってお菓子の型を作ったり……「こんな風に使ったら便利!」という接点を楽しみながら作っています。

中央が田ヶ原さん 中央が田ヶ原さん

デジタルファブリケーション活用方法として、最も興味深く感じていたのが「コスプレ」の文化です。デジタルファブリケーションの良さは、ひとりひとりに合ったものを早く安くつくれるという点にありますが、企業が量産に乗り出させないデザインのもので、かつ自分の体にフィットするサイズのものを作り出せる領域として、かねてより注目していました。

最近は趣味嗜好が多様化している中で、あまりアニメやゲームに興味が無い方もいらっしゃいます。そんな方でも、唯一(?)コスプレをする機会として、ハロウィンがあることに気が付きました。

これは、難しい技術を楽しく伝えられるチャンスなのでは?季節のイベントをきっかけに、もしかしたらデジタルファブリケーションの楽しさを広められるのみならず、新しい事業のアイデアになるかもしれないと考え、ワークショップを開催することになりました。

  1. 若い人がチャレンジしたいと思えるイベントをことづくりの視点から作る
  2. カスタマイズ性などデジタルファブリケーションの良さが生きるプロダクトを作る

この2つを最優先事項とし、ワークショップ内容は「加速度センサーで七色に光るネコ耳」に決まりました。なるべくたくさんの方が楽しめるよう、「ネコ耳」をつける機会をまずつくるということで、時期は一般の方もコスプレを楽しむことができるハロウィン間近の10月22日(土)、10月23日(日)としました。この企画を立てたのは8月の下旬だったので、開催しか2カ月しかない状況でした。
当初は、カチューシャに自由な形に加工したアクリル板を取り付けて、ちょろっと電子回路を取り付ければ簡単そうだと考えていました……。

もともと描いていた完成イメージ図。こんなに甘くはなかった。 もともと描いていた完成イメージ図。こんなに甘くはなかった。
アドバイスを受け、試作を重ねながら設計しなおした図。実践すると、絵では気づけなかったことがたくさんあります。 アドバイスを受け、試作を重ねながら設計しなおした図。実践すると、絵では気づけなかったことがたくさんあります。

私は、企画のコンセプトづくりは得意分野でしたが、細かな回路設計や電子工作に関しては苦手分野でした。
それでも、自分のような苦手意識を持つ初心者にこそ楽しんでもらうワークショップを作りたい、という思いを、以前にものづくりイベントで知り合った技術系サークル「テクノアルタ」の小島有貴さんが酌んでくださりました。

ところが小島さんと電話でお話しながらこちらのやりたいことを相談すると、徐々に小島さんが引いていくのが分かりました。
「この期間でそれはちょっと厳しいです……」と仰って、なぜ厳しいのかの説明をとても丁寧にしていただきました。例えば、最初は妄想が膨らんで「光るネコ耳を、スマホ連動させたい!」という思いがあったのですが、期間的にクリアするべき課題が多いことを教えていただきました。
小島さんは技術者として、「できない」だけではなく、企画者の意図を酌んで代替案を出してくださることもとても上手で、「ただ光るだけでは確かに面白くないですよね。加速度センサーをつかって、動きで色が変化するような仕掛けにするとどうですか?」と新しいアイデアをくださり、行き詰っていた企画に活路が見出せました。
こうして小島さんには全体ワークショップ企画からご協力いただいていたのですが、電話のやりとりだけでは技術的な話になったときに回路を図示することができず、なかなか意思疎通がとれません。そこでもう一人、デジタルファブリケーションのチームとは関係ない部署でありながら、プログラミングに明るい技術系メンバーに企画に参加してもらい、どうにかコミュニケーションが成立するところまで整えることができました。

それぞれの得意分野やバックグラウンドが異なり、ほぼ全員が初対面の中、完成物である「光るネコ耳」へのイメージはバラバラの状態からスタートしました。まず、小島さんが大まかな設計をして、それに沿って技術メンバーが部品を調達し、LEDを光らせる、LEDをチカチカさせるなどステップを踏みながら少しずつ試作品をブラッシュアップしていきました。

初めから設計を細かく完璧にしてからものを調達するのではなく、動画や写真を駆使してイメージを合わせ、作りながら修正して進めることで、メンバー間の意思統一を図り、専門用語がなるべく無い状態でコミュニケーションをしていました。ライトを「チカチカ」させるという表現ひとつとっても、とても速い「チカチカ」をイメージしている人もいれば、「チッカチッカ」ぐらいのスピードをイメージしている人もおり、改めてラピッドプロトタイピングの重要性を感じました。

おおまかな回路基板の大きさが分かったところで、どのぐらいのサイズのケースが必要になるかTechShopで試作しました。 おおまかな回路基板の大きさが分かったところで、どのぐらいのサイズのケースが必要になるかTechShopで試作しました。
光る猫耳第一号。セメダインに提供いただいた布用接着剤「nu~no!」を使って、どのぐらいの時間でくっつくか実験中。オフィスにもふもふが目立ちます。 光る猫耳第一号。セメダインに提供いただいた布用接着剤「nu~no!」を使って、どのぐらいの時間でくっつくか実験中。オフィスにもふもふが目立ちます。

アサインしたメンバーにとっても業務外の仕事となり、試作品は試行錯誤しながら進めていたのでかなりの負担となってしまっていましたが、若手のチームで頑張っていることを見てくださっていたメンバーの上長が、社内の申請を通す際にいろいろなところに根回しをしてくれたおかげで、なんとか無事ワークショップ開催にこぎ着けることができました。

コスプレイヤーもすっかりセメダインファンに コスプレイヤーもすっかりセメダインファンに

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