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光造形3Dプリンターに欠かせない「レジン」とは? その種類と取り扱いの注意点を解説

「3Dプリンターはものづくりに急激な変化をもたらす可能性がある」

この言葉は2013年にバラク・オバマ元米国大統領が一般教書演説において述べたものです。あれからまもなく10年、3Dプリンターは今では一般のご家庭にも徐々に普及しつつあります。とはいえ、3Dプリンターをこれまで一度も使ったことがないという方もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事では3Dプリンター初心者に向けて、光造形方式(SLA)と呼ばれる3Dプリンターで使用するとても重要な素材「レジン」について解説します。果たしてレジンとは一体どのような物質なのでしょうか? レジンにはどんな種類があって、それぞれどのように扱うのが良いでしょうか?

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きちんとした知識を持たないままレジンを使うと危ない?

改めまして、私はSK本舗の遅沢翔と申します。

SK本舗とは、2018年に私が創業した3Dプリンターとレジンの販売店です。現在SK本舗は光造形方式3Dプリンターの代表的なメーカーであるPhrozen社と正規代理店契約を結んでおり、また近年では自社オリジナルレジンやメーカーとのコラボレーションによるオリジナル3Dプリンターの開発販売なども行なっています。簡単にまとめるなら「光造形3Dプリンターにまつわるさまざまなものを、どこよりもお安く、手厚いサポートと共に提供している通販ショップ」だと思っていただけると良いかと思います。

普段からレジン販売に携わっていると、ユーザーの皆さまからレジンについての多くのお問い合わせをいただきます。例えばレジンの種類と用途との正しい関係や、レジンを取り扱う際の注意点などについて、主に質問されます。

レジンは光造形3Dプリンターに欠かすことのできない重要な素材であり、光造形3Dプリンターを使う方は誰しもこのレジンを使用するのですが、きちんとした知識を持たないままレジンを雑に使用してしまうと、場合によっては事故が起こってしまうこともあります。また、皆さまそれぞれ3Dプリンターを使用する目的は異なります。用途に応じた適切なレジン選びをすることも、最終的な造形品のクオリティを上げていく上でとても大事なことです。

そこで、今回は特に3Dプリンターの初心者の方に向けて、レジン販売店の立場から、レジンという素材について解説します。

レジンとは紫外線を含んだ光によって硬化する樹脂

そもそもレジンとはなんなのでしょうか。

おそらく3Dプリンターをこれまで使用されたことのない方がレジンと聞いてまず思い浮かべるのは、ネイル用やハンドクラフト用のレジンではないかと思います。

SK本舗ではハンドクラフト用UVレジンも製造販売しております。 SK本舗ではハンドクラフト用UVレジンも製造販売しております。

レジンとは「樹脂」の一種です。ハンドクラフト用のレジンには紫外線によって硬化するUVレジンと、2液を混合することで硬化するエポキシ系レジンがありますが、光造形3Dプリンターで用いるレジンは前者のUVレジンになります(ハンドクラフト用のレジンとは硬化のために必要な光の波長の長さが異なるため転用はできません)。

光造形3Dプリンターの「光造形」は、まさに紫外線を含んだ光によって硬化し造形するというところに由来しています。

SK本舗ではさまざまな光造形方式の3Dプリンターを取り扱っています。 SK本舗ではさまざまな光造形方式の3Dプリンターを取り扱っています。

元々のレジン液は透明度の高い液体となっているため、そこに染料などを加えることによってさまざまな色彩のレジンを製作することもできます。またカラーバリエーションだけでなく、レジンにはその特性によってさまざまな種類の商品があります。ここからは、3Dプリンター用レジンの代表的な5種とその特性について、弊社のレジンを例にしながら解説してみたいと思います。

3Dプリンター用レジンの代表的な5種とそれぞれの特性

まずは代表的な5種を以下に挙げてみましょう。

  1. スタンダードレジン
  2. 水洗いレジン
  3. タフレジン
  4. フレキシブルレジン
  5. キャスタブルレジン
 

聞き慣れない言葉が並んでいて混乱される方もいるかもしれませんが、そんなに難しく考える必要はありません。いずれのレジンを使っても基本的な出力は問題なくできます(中には特定の用途に使用が限定されたレジンもあります)。ただ、レジンの種類と特性を理解しておくと、ご自身の用途、目的によりふさわしいレジンを選ぶことができるようになり、それによって造形品のクオリティが上がったり、使用感がより快適になったりします。

では順番に見ていきましょう。

1.スタンダードレジン

SK本舗の高靭性スタンダードレジン SK本舗の高靭性スタンダードレジン

スタンダードレジンはその名の通り「一般的」なレジンです。
LED を照射することによって硬化され、使っている人なら分かる(笑)絶妙な触り心地の造形物に仕上がります。

どのメーカーのスタンダードレジンも何色かのカラーバリエーションがあり、SK本舗のスタンダードレジンでは灰色、白色、青色の3色をご用意しています。

スタンダードレジンを使用する場合は、出力後にIPA(イソプロピルアルコール)というアルコールで出力物を洗浄する必要があります。しっかりと洗い流さないとヒビ割れなどにもつながるため注意が必要です。

また、SK本舗ではIPAに代わるレジン用洗浄液も販売しています。IPAよりもコスパの高い商品となっておりますので、ぜひお試しください。

2.水洗いレジン

SK本舗の水洗いレジン SK本舗の水洗いレジン

水洗いレジンとは、水で洗い流すことができるレジンです。

3Dプリンター用レジンは通常、最後にIPAで洗浄します。出力後の未硬化のレジンが出力物に残ってしまうとヒビ割れなどの原因になってしまうからです。

しかし、この水洗いレジンではIPAは不要です。その名の通り、水で洗浄できるからです。色もスタンダードレジンと同じく複数種あり、SK本舗の場合は灰色、白色、透明色、肌色(薄橙色)、黒色、青色、赤色、緑色、銀灰色の9色をご用意しています。

最近では水洗いレジンの課題だった収縮率が減少し、ヒビ割れにもとても強くなりました。IPAでの洗浄が面倒だという方にもってこいのレジンです。

3.タフレジン

SK本舗のタフレジン SK本舗のタフレジン

タフレジンとはスタンダードレジンよりも強度に優れた仕上がりを提供するレジンのことです。

メーカーによってはABSライクレジンと同じ扱いをすることもあるこのレジンを使って出力すると、プラスチック素材のような仕上がりになります。

プラスチックは「衝撃に強い」「耐熱、耐寒性がある」「加工しやすい」といった特長を備えていますが、そのプラスチックに似せているのがABSライクレジンであり、タフレジンです。

スタンダードレジンと比べ衝撃に強いのが特長で、機械部品の試作品に使用されるなど、工業の現場で活躍しています。ちなみにSK本舗ではABSライクレジンとタフレジンは分けて販売しています。ABSライクレジンは仕上がりがよりABS(プラスチック)に近く、タフレジンの方がより衝撃に強いです。

4.フレキシブルレジン

SK本舗のフレキシブルレジン SK本舗のフレキシブルレジン

フレキシブルレジンとは、スタンダードレジンよりも柔軟性に富んだ仕上がりを提供するレジンのことです。

ゴムライクレジンとも呼ばれていて、硬化後、ゴムのような柔軟性が出力品に残りますので、スタンプなどの柔軟性が必要なオブジェクトを出力するのに適しています。メーカーによって柔軟性や耐久性にバラつきがあるため、購入の際にはあらかじめ成分表を比較した上、ご自身の求めている質感に近いものを購入するのが良いと思います。

5.キャスタブルレジン

SK本舗のキャスタブルレジン SK本舗のキャスタブルレジン

キャスタブルレジンは、主に金属部品を製造する技法である「ロストワックス鋳造」において使用するレジンです。

ロストワックス鋳造とは、ワックスで造形したものを石膏などに埋め、ワックスが溶けて焼けきるまで焼成し、ワックスが無くなった部分に金属を流し込んで金属部品を製造する技法です。

このロストワックス鋳造に使用するワックスの役割を担うのがキャスタブルレジンです。

3Dプリンターをロストワックス鋳造に用いることで、金属部品の製造時間やコストが大幅に削減されます。データさえあればプリンターが頑張って出力してくれますので、ワックスを手仕事で造形するのに費やしていた時間を、丸々他の業務に充てられます。


以上がレジンの主な種類と特性になります。こちらをご参照いただき、用途や目的に合わせて適切なレジンを選んでいただくと良いでしょう。

レジンの使用にあたって注意すべき7つのポイント

続いて、レジンを使用するにあたっての注意点を紹介します。レジンは非常に便利な素材ですが、取り扱い方を間違えると事故の原因にもなります。ここでは特に注意すべき7つのポイントについて説明したいと思います。

  1. レジンは素手で触らないこと
  2. レジンが皮膚に付着してしまったらIPAか薬用せっけんで
  3. レジンを使用する際は絶対に換気すること
  4. レジン使用時の室温は25℃以上が理想
  5. レジンを使用する前に容器をよく振ること
  6. もしレジンにホコリが混入したらストレーナーで除去
  7. レジンは低温暗所で保管すること

順番に見ていきます。

1.レジンは素手で触らないこと

これはレジンを使用する際の基本中の基本です。レジンは素手で触ってはいけません。

レジンに直接触れることは皮膚荒れやかぶれの原因になり、場合によってはレジンアレルギーを発症し、長い治療を要することになってしまいます。

そこで、レジンを扱う際にはゴム手袋の使用を推奨します。こちらはコンビニやスーパーなどでも購入できる通常のゴム手袋で大丈夫です。また、お子さんがいるご家庭などでは、子供の手の届くところにレジンを保管しないように気を付けてください。間違ってレジンを飲んでしまったら本当に大変なことになります。

2.レジンが皮膚に付着してしまったらIPAか薬用せっけんで

「素手でレジンに触ってはいけない」というのが大原則であることは1でも触れましたが、注意をしていてもうっかり触ってしまったという状況もあり得ます。

そうした場合の注意点は「決してUVライトを当てて除去しようとしないこと」です。レジンはUVライトを当てられると急激に発熱する特性があり、火傷の危険性があるからです。

付着時の対応策としては、IPA(イソプロピルアルコール)で拭き取ることが推奨されます。IPAにはレジンを溶かす作用があるためです。ただし、IPAも肌荒れを起こす場合があるため、肌の弱い方は油汚れ用の薬用せっけんを使用するのが良いでしょう。

3.レジンを使用する際は絶対に換気すること

レジンを用いた作業の最中、あるいは硬化中は、必ず換気をしてください。レジンは揮発性なので、窓を閉めたまま作業をしていると、匂いに酔ったり、微量ながら有害ガスを吸い込んだりする危険性があるからです。

特に暑い夏場や寒い冬場は窓を開けるのをためらってしまいがちですが、そこは安全第一をモットーに、レジン使用中は換気を心掛けてください。

4.レジン使用時の室温は25℃以上が理想

レジンを用いて作業する際の適正室温は25℃以上(安心領域は30℃以上)です。室温が低いとレジンの粘度が増して気泡が抜けづらくなり、硬化時の表面に小さなくぼみができてしまうからです。

推奨室温は25℃以上ですが、室温調整が難しい時もあります。どうしても室温を高めることが難しい場合は、使用前にレジンをドライヤーで温めて気泡を抜くという方法もあります。

ただ、レジンの種類によって適温が微妙に異なるため、それぞれのレジンを使用するたびにその時の室温をメモしておくと、失敗した場合も次回の改善に活かせます。レジンは高額商品ですので、レジン販売店としてもできる限り無駄にしていただきたくありません。慎重に室温を調整しましょう。

5.レジンを使用する前に容器をよく振ること

レジンを使用する際は、使用前に容器をよく振ることを忘れないようにしましょう。

これは保管中に沈殿したレジンの成分をきちんと混ぜ合わせるためです。成分に偏りが生じてしまうと、そのレジン本来の性質が十分に発揮されない可能性があります。

レジンをより良い状態で保存しておくために、可能なら保管中のレジンも2週間に一度ほど振っておくと良いでしょう。

6.もしレジンにホコリが混入したらストレーナーで除去

レジンを使用する際は空気中を舞っているホコリがレジン液に入らないように気を付けてください。ホコリが入ったまま硬化すると、せっかくの出力品にホコリが浮き出てしまうことがあるからです。

もし、レジンにホコリが混入してしまった場合はストレーナーを使用して除去しましょう。ストレーナーとは液体から固形成分を取り除くために用いる網状の器具です。ストレーナーは、出力後にタンクに残ったレジンをボトルに戻す際にも役立ちます。

7.レジンは低温暗所で保管すること

レジンを保管する際は直接日光が当たらない場所に保管してください。日光が当たると、黄変が早まり、品質が劣化しやすくなるからです。また同様の理由から、高温になりやすい場所での保管も避けるようにしましょう。

つまり、レジンの保管場所としては「低温暗所」が最適ということです。

また1でも述べましたが、お子さんのいるご家庭では絶対にお子さんの手の届かないところで保管するようにしましょう。

レジンの販売サイトを選ぶコツ

最後に、レジンを購入する販売サイトを選ぶ上で基準としておいた方が良い点を、レジン販売店の視点から紹介しておきたいと思います。

もちろん、SK本舗をご利用いただくのが私としては最も嬉しいのですが、SK本舗では取り扱いのないレジンをお求めの方もいるかもしれません。その場合、以下のポイントを意識して販売サイトを選ぶと、損をすることが少ないかもしれません。

1.リピートするメリットがあること

基本的に、レジンは出力にあたって必ず必要になるアイテムのため、3Dプリンターを使用する限り何回も購入することになります。そのため、ポイント制度やクーポンの配布があるサイトを選んだ方が長い目で見たときに断然お得になるのです。

販売サイトを選ぶ際は、リピート購入することによるメリットがどの程度あるかを、あらかじめチェックしておいた方が良いと思います。

2.アフターサービスが良いこと

リピート購入によるメリットがあるかどうかと併せて確認すべきことは、アフターサービスの有無、充実度です。

レジンは光造形3Dプリンターにとっての唯一の材料であり、レジンの品質が出力品のクオリティに大きく影響します。

そのように大事なレジンですが、実はレジンの製造過程において材料の沈殿などが発生し、品質にバラつきが生じることがまれに起こるのです。もしそうした不良品のレジンを偶然購入してしまった場合、購入者にとって非常に大きな損失になります。

そうした場合に備え、レジンの品質に問題があった場合に交換や返品にきちんと対応してくれるということがサイト上に明記されているかをあらかじめ確認しておくと良いと思います。

3.SNSの口コミをチェックする

最後にもう1つ、SNSでの口コミも参考にすると良いでしょう。

販売サイト上では良いことがいろいろ書いてあっても、実際の対応が悪ければどうしようもありません。その際に参考になるのが口コミです。特にSNSは賛否を含めさまざまな意見が飛び交う場ですので、非常に参考になります。

私自身、SK本舗のユーザーの皆さまがどのような反応をされているか、常にチェックするようにしています。販売店の側からするとサービス内容の改善と向上を考える上でもSNSの口コミが非常に重要な手がかりになるのです。

とはいえ、もちろん、SNSの口コミを全て鵜呑みにしてしまうのは問題もありますので、あくまでも1つの参考材料にするくらいがちょうど良いかもしれません。

3Dプリンターは今までのものづくりに対する価値観を一変させてくれる刺激的なツール

さて、色々と説明してきましたが、改めて振り返ってみましょう。

最初にレジンとは何かについて説明しました。レジンとは樹脂の一種であり、用途、目的に応じてさまざまな種類が存在しています。

次にレジンを取り扱う際の注意点について説明しました。レジンに直接触れないこと、レジンを使用する際は換気を徹底することなど、レジンの使用にあたっては気を付けなければならないことがいくつかあります。

最後に、3Dプリンター用レジン通販サイトの選び方について紹介しました。リピート購入のメリットやアフターサービスの有無、SNSの口コミなどを参考にすることで、より良心的な通販サイトで購入することができるようになります。

手前味噌になってしまいますが、私が運営するSK本舗は、リピート購入による特典はもちろん、アフターサービスも非常に充実しています。また、サイト上では3Dプリンターに関するさまざまなお役立ち情報、最新ニュースなどを常時配信しています。3Dプリンターのことやレジンのことでお悩みの方は、ぜひ一度3Dプリンター&レジンの総合通販「SK本舗」をのぞいてみてください。

まだまだ3Dプリンターと聞くと「操作が難しそう」というイメージをお持ちの方も多いですが、3Dプリンターもレジンも、きちんとした知識を持って適切な方法で扱うことができれば、今までのものづくりに対する価値観を一変させてくれる、非常に刺激的なツールになります。ぜひこの機会に挑戦してみてください。

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