新しいものづくりがわかるメディア

RSS


家電蒐集家 松崎順一インタビュー

ビンテージラジカセから見た、個人が世界を巻き込むものづくり

ものづくりに携わる若い人たちに意識して欲しいこと

「若いエンジニアやデザイナーには温故知新という考え方を持ってほしいですね。新しいものは過去を学ぶことによって見えてくる。古いものを知った上で、そこから何かを汲み取ることで次世代のもの、斬新なものが生まれると思います。突発的に出たものってその時は面白いと思っても、それまでの脈絡がなくてはものとしての重みがありません。

そうではなく、過去のものを掘り下げてこういういいものがあったとか、こういうものが発想の原点という風にしてもらうと、ひとつのものを作り上げたときに過去からの流れができて、斬新だけど自然と馴染むものができる、そういうものを大事にしてほしいですね」 

誰にも相手をされなくても、自分の考えを貫き通す

最後にこれから個人で何かを立ち上げようとする人へのメッセージをお願いすると、松崎さんは自分もスタートラインに立ったばかりだから偉そうなことは言えないと謙遜しながら、自身の経験に基づいた話をしてくれた。

「僕は世間に認められるまで10年かかりました。何年かかるかは人それぞれですが、好きなことができるようになるために大事なことは持続しかないんですよね。誰から何と言われようが、自分はこのスタンスで行くという意思。世間が認める認めないは関係なく、自分がこれをやりたいと思ったらその信念で何十年でも貫き通すというのが、回り道のようでも自分の好きなことをやる秘訣だと思う。こっちが面白そうとか楽そう、こっちのほうが人から注目されそうとか、そういうスタンスでは時代の波に流されて結局何もできず、誰からも相手にされずに終わってしまいます。

今はネットがあって個人がすぐに発信できるので、面白いことをやれば広まるのも早いけど、箸にも棒にも引っかからない時期にあきらめて終わらせちゃう人が大部分だと思う。僕が11年やってきて諦めなかったのは、他に何もできなかったからで、たいしたことはしていません。毎日ごみを探して集めてきて、それを『これいいよね』って言ってるだけ。その『いいよね』っていうのを他の人や企業が『確かにそういうのっていいですよね』って言ってくれて仕事に結びついた。自分がひたすら言い続けることで、周りを引き寄せていくっていうのが道理かなって今ではそう思います。

特に若い方は自分探しをやってほしい。それは最初間違っていてもいいんです。『自分は何が得意なんだろう、何が面白いんだろう』というところから模索して、最終的には本当の自分に出会うというのが僕の中では確信としてある。

僕も最初からラジカセと出会ったわけではなくて、11年前に始めた時は、テレビや時計とかいろんなアイテムがあって、そんな中で『ラジカセってかわいいですよね』っていろんな人に言われて、『そういえばそうだよな、かわいいよな』って思ったその瞬間から自分のやりたいものが見えてきたんですよね。

だから自分探しの旅が自分のやりたい方向につながっていくと思います」

デザイン・アンダーグラウンドによるビンテージラジカセコレクション

最後に松崎さんにこれまで修理したラジカセの一部をご紹介いただいた。

「SONY CF-1990」 「SONY CF-1990」
「SONY CFS-99(エナジー99)」山型にデザインされたコンソール部分が特徴の大型ラジカセ。 「SONY CFS-99(エナジー99)」山型にデザインされたコンソール部分が特徴の大型ラジカセ。
「National(現Panasonic)ラブコール・トリプル RX-F333」1983年発売 テープデッキが3台搭載された珍品。1985年にグッドデザイン賞を受賞している。 「National(現Panasonic)ラブコール・トリプル RX-F333」1983年発売 テープデッキが3台搭載された珍品。1985年にグッドデザイン賞を受賞している。
「SANYO ROBO-01」2歳から5歳を対象に作られたポップなデザインのラジカセ 「SANYO ROBO-01」2歳から5歳を対象に作られたポップなデザインのラジカセ
「SHARP GF-909 (THE SEARCHER-W)」 「SHARP GF-909 (THE SEARCHER-W)」

大型ラジカセの中でも一番人気という機種。当時10万円を超える価格とあまりの大きさに国内よりも海外でヒット。中国では当時の高官の間でステータスアイテム化し、アメリカではヒップホップリスナーの間でヒットした。

実際にテープを再生すると、見た目以上にパワフルかつカセットテープから再生しているとは思えないクリアな音が部屋中に響き、取材陣から驚きの声が上がった

発売当時のエピソードを織り交ぜて笑顔でラジカセの説明をする松崎さん。ラジカセ蒐集は雨の日も欠かさず行っている。

関連情報

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る