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米MIT、3Dプリンターで安価に高性能のソレノイドを製造

Credits:Image: Courtesy of the researchers

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、医療機器や家電製品など、電子機器の基本構成要素として広く使用されているソレノイドを3Dプリンターで造形し、従来の3Dプリント製ソレノイドより最大3倍大きな磁場を発生させることに成功した。この研究成果は、2024年2月20日付で『Virtual and Physical Prototyping』に掲載された。

3Dプリンターによるインダクター製造はこれまでにも実現しているが、MITの研究チームは複数の材料に対応するマルチマテリアル3Dプリンターを改造し、3つの異なる材料の層を精密に重ねることで、小型で立体的なソレノイドをワンステップで製造できるようにした。

ソレノイドは、電磁コイルと磁性コアで構成され、磁性コアに電流を流すと電磁石となって、電気エネルギーを機械的動作に変換するものだ。従来、クリーンルームで製造される電気回路にソレノイドを組み込むには大きな課題があった。電気回路とソレノイドのフォームファクターは非常に異なり、製造プロセスに互換性がないため、後工程での組み立てが必要になるからだ。そのため、半導体チップ製造と同様のプロセスを利用したソレノイド製造が研究されてきたが、ソレノイドのサイズや形状が制限されるため、性能の向上が難しかった。

3Dプリンターで材料を積層し立体物を造形するアディティブ・マニュファクチャリングを活用すれば、あらゆるサイズや形状のデバイス製造が可能になる。しかし、ソレノイドを製造するには複数の材料で作った薄い層を渦巻き状にする必要があるため、1台では対応できない可能性があった。

そこで、研究者らはノズルを4個搭載した市販の3Dプリンターを選択し、4個のうち1個のノズルからはフィラメントではなくペレットを押し出すように改造した。これにより、優れた性能を持ちながらフィラメントとして製造できない軟磁性ナイロンを使用できるようになった。また、各材料は異なる温度で造形されるため、プロセスの正確な制御が最も重要となる。

改造3Dプリンターの総費用は約4000ドル(約62万円)だが、他の手法に比べて安価である。この3Dプリンターにより、軟磁性コアの周囲に材料を渦巻き状に積層造形し、薄い絶縁層に区切られ、厚みのある導電層を持つソレノイドの製造が可能になった。このソレノイドの大きさは直径30mm程度で、2倍の電流に耐え、これまでの3Dプリント製ソレノイドより3倍大きな磁場を発生させることができる。

MITマイクロシステム技術研究所(MTL)の主任研究員であるLuis Fernando Velásquez-García氏によれば、この改造3Dプリンターは、宇宙探査にも役立つ可能性があるという。例えば、交換用の電子部品を高いコストと長い日数をかけて火星の基地に送る代わりに、3Dプリンター用のデータファイルを含む信号を送るという可能性も考えられる。高性能な電子機器を一部の拠点だけで製造して出荷するのではなく、製造工場などから遠く離れた場所でも自分たちで電子機器を製造できるようになれば、医療機器を利用しやすくなるかもしれない。

今後、研究者たちは、ソレノイドの性能をさらに向上させたいと考えている。より優れた特性を持つ別の材料の使用や、各材料の蒸着温度をより正確に制御するような改良も検討している。

fabcross for エンジニアより転載)

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