新しいものづくりがわかるメディア

RSS


スタートアップのパートナー「工場なび」

有薗製作所(医療用具設計・製造)

福岡県北九州市にある有薗製作所は1908年に創業した福祉機器メーカー。義肢・装具や、車いす・歩行器など福祉機器の製造を専門とする企業だ。

Makersにとって頼りになる3つのポイント

  • 福祉機器のエキスパートとして法令制度にも精通
  • 福祉機器に不可欠なエンドユーザーによる臨床評価も可能
  • 福祉機器だけでなく、試作品やオーダーメイド製品の製造や小ロット生産にも幅広く対応

社会課題解決型のものづくりを志向し、福祉に関するプロダクトを作るメーカーは少なくない。しかし、福祉機器は量産化のハードルが最も高い分野の一つでもある。
有薗製作所は創業から義手、義足といった義肢や装具、車いす、座位保持装置、歩行器など、障がい児・者や高齢者向けの福祉機器の開発から製造、販売までを手掛けてきた。

今回お話を伺った開発部の千々和直樹さん。 今回お話を伺った開発部の千々和直樹さん。

福祉機器の開発・製造・販売にはさまざまな法令や制度があるので、ベンチャーが参入するためにはこういった法令や制度を熟知するか、これらに精通する企業をパートナーにすると円滑に事業展開できる。

「医師の処方に基づく弊社製品の多くはオーダメイドの為、患者様への採型・採寸(医療行為)が不可欠です。そのため弊社では国家資格である義肢装具士免許を取得した営業員が対応しています。
また、ISO13485認証取得を通じて、ユーザーに安心して使用頂ける製品提供体制を構築しています。
医療機器の製造・販売においても、必要なノウハウ及び許可・免許を保有しておりますのでうまく活用していただきたいですね」 

設計から生産まで一貫して社内で行っている。 設計から生産まで一貫して社内で行っている。

有薗製作所では大学との共同開発の実績も多く、仕様策定から臨床評価まで幅広く請け負う。

「福祉機器関連のスタートアップやベンチャーにとって、一番ハードルが高いのが臨床評価だと思います。
弊社は長年蓄積された技術と実績により医療・福祉施設等の得意先から厚い信頼を得ています。
よって、医療機関のご指導のもと、開発品を実際の現場で使用いただき検証・評価することが可能です。」 

石膏で型をとる作業スペース。オーダーメイド品が多く、こうした型取りの作業は欠かせない。 石膏で型をとる作業スペース。オーダーメイド品が多く、こうした型取りの作業は欠かせない。

臨床評価だけでもさまざまな手続きを踏み、その期間も1年以上かかるという。有薗製作所では、これまでもメーカーや大学と共同で、さまざまな福祉機器を開発してきたノウハウがある。

「医療や福祉とは関係がない相談でもお受けしています。弊社では、金属、樹脂、木材、皮革繊維を生産材料として扱っているため各種加工にノウハウがあり試作依頼や改良調整を含めた対応が可能です」 

誰のためのプロダクトか、マーケットを知ることも必要

これまでの経験から、福祉機器分野での起業にあたってどういったことを抑えるべきか尋ねてみた。

「やはりマーケットとターゲットをよく知ることだと思います。どのような障害で不便を感じているのか、その部分を対象とした場合、そこにどのくらいの市場規模があり、競合はどこか、知財関連はどうかなど、医療関係者に相談したり厚生労働省などが公布しているデータを調査したりすることも必要です」

価格についても、福祉機器には特殊な体系がある。製造原価に対して利益を乗せるというのが一般的な考え方だが、車いすや座位保持装置、義肢・装具など社会保険や福祉制度が適用されるものについては、医療報酬や調剤報酬レセプトのように、国により決められた公定価格に準じている。

「機能性が高い特殊な技術を応用した製品や使用用途が限定的な高付加価値製品については、公定価格よりも高額になるケースがあります。ロボット技術を取り入れた義肢装具であれば自己負担にて購入したいというお客様もいらっしゃいますし、障害者スポーツで使用されるような競技用の特殊な製品も保険適用外ですが自己負担で購入されています」

このような特殊な市場の法令や慣習を熟知したパートナーと組んで製品開発を進めるというのも、重要だと言えそうだ。

「自身が相手の立場に立ってよく考え、ひとの為になるものをつくりなさいと、弊社の社長はよく社員に言います。福祉機器だけでなく、弊社の技術力を生かして、スタートアップやベンチャーのものづくりにも貢献していきたいと思います」 

概要

企業名

株式会社有薗製作所

所在地

福岡県北九州市八幡東区東田1-7-5

電話

093-661-1010

URL http://www.arizono.co.jp/
問い合わせ方法 問い合わせフォーム、もしくは電話にて

 

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る