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Kyoto Makers Garage(京都府下京区)

日本全国のファブ施設を紹介する「fabなび」。今回は京都市内にある「Kyoto Makers Garage」(KMG)。再開発が進む京都中央卸売市場横のガレージを改装したファブ施設だ。

KMGは乾物屋の倉庫だったスペースをファブ施設として改装し、2017年9月にオープンした。オーナーは京都市、京都市外郭団体の京都高度技術研究所(ASTEM)、大阪ガス傘下の京都リサーチパーク、そしてハードウェアスタートアップに特化したVC(ベンチャーキャピタル)であるMonozukuri Venturesの4社で、運営は主にMonozukuri Venturesが担う。

市場エリアの一角にあるKMG。 市場エリアの一角にあるKMG。

Monozukuri Venturesは京都のVCであるDarma Tech Labsと、アメリカでスタートアップ支援を行っていたFabFoundryが2017年に合併して誕生した会社で、KMGは合併前にDarma Tech Labsが立ち上げた

KMGを立ち上げた理由は、スタートアップを増やすためだと代表の牧野成将さんは話す。

「私たちは2015年にハードウェアスタートアップに特化した育成プログラム『Makers Boot Camp』を立ち上げ、投資と同時に量産化試作を支援しています。スタートアップを増やすためには、優れたエンジニアやデザイナーが不可欠です。そして、そういった人材を増やすには、ものづくりをたしなむ人たちを増やすことが必要だと考えました」(牧野さん)

お話を伺ったMonozukuri Venturesの牧野成将さん(左)と、二上範之さん。 お話を伺ったMonozukuri Venturesの牧野成将さん(左)と、二上範之さん。

趣味のものづくりで終わるスペースではなく、職能を磨いたり、開発したものがビジネスにつながる拠点にしたいというコンセプトのもと、ワークショップやイベントも積極的に開催している。新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインでの開催が中心になっているが、関西圏以外からの参加も多いという。

また、施設の利用は子どもからシニアまで利用者は幅広く、学生に至っては無料で利用できるのも特徴だ。
「今(2020年9月)は利用者数の制限をしていることもあり、力を入れているのは試作品などの受託制作です。光造形方式の3Dプリンターやレーザーカッターなどを使い、スタートアップの試作品や中小企業の新製品開発などをサポートしています」(牧野さん)

普段のKMGの様子。奥にある工房は防音対策済みなので、デスクワークにも支障がない(写真提供:Kyoto Makers Garage) 普段のKMGの様子。奥にある工房は防音対策済みなので、デスクワークにも支障がない(写真提供:Kyoto Makers Garage)

緊急事態宣言が終了してからは試作の相談も増えているという。KMGが製造支援した新型コロナ対策グッズ「ふっく君」は多くのメディアで紹介され、ヒット商品となった。企画・開発したのは屋外看板を手掛ける滋賀県の企業「広宣」で、電車通勤する社員が「つり革に直接触れたくない」という動機から開発。6の字にカットしたアクリル板の表面に塩化ビニールシートを貼ったものだ。

会員が制作した作品の一覧。下段の右から2番目が「ふっく君」 会員が制作した作品の一覧。下段の右から2番目が「ふっく君」

「KMGではアクリルをレーザーカッターで切り、広宣さんの工場でシートを張って仕上げて出荷するという体制で、これまでに3000個以上製造しています。ピーク時期は毎日フル稼働で製造していましたが、地元企業の新しい製品開発をスピーディーに支援できたのはファブ施設ならではのメリットだと思います」(Monozukuri Ventures 二上範之さん)

地域のものづくりを支える機能として、機材や技術スタッフなどのアセットを生かす動きは、コロナ禍のファブ施設運営において重要なテーマになりそうだ。

今後はKMGだけでなく、周辺の施設と連携して地域活性化に交換したいと牧野さんは意気込む。

「市場・倉庫街をリノベーションして、この梅小路エリアをサンフランシスコのSoMaや、ニューヨークのブルックリンなどのような、アーティストやクリエイターが集まるような地域に変えたいと考えています。既にアーティストが滞在しながら制作できるギャラリー付きのホテルや、市場周辺で休眠しているスペースを改装した飲食店が立ち上がっていて、周辺の施設とも連携しながら、街作りにも関わっていく予定です」(牧野さん)

工作スペースは防音対策も取っているが、「市場エリアなので、日中は周りの方がにぎやかですよ(笑)」(牧野さん) 工作スペースは防音対策も取っているが、「市場エリアなので、日中は周りの方がにぎやかですよ(笑)」(牧野さん)

京都中央卸売市場の取扱高は年々減少していて、周辺エリアも含めた活性化が大きな課題だという。ファブ施設という役割からクリエイティブな街づくりに貢献することを目指すKMG。京都に訪れる際には足を運んでみてはいかがだろうか。

概要

所在地 京都府京都市下京区朱雀宝蔵町73-1ライトワンビル1F
営業時間 営業時間:10:00~19:00
休業日:水曜日/木曜日
URL https://kyotomakersgarage.com/
料金 レーザーカッター:1時間1000円
FFF方式3Dプリンター:1時間500円
CNCルーター:1時間1000円
※その他、光造形方式3Dプリンターやバンドソー、はんだごてがある。各機材の料金はWebサイトを参照
※3Dプリンター以外の機材は1日3時間まで利用可

機材トレーニング:3000円〜6000円(事前予約制)

 

機材

3Dプリンター:「formlabs Form 2」、「LulzBot TAZ6」 3Dプリンター:「formlabs Form 2」、「LulzBot TAZ6」
3Dプリンター:「PRUSA i3」 3Dプリンター:「PRUSA i3」
レーザーカッター:「trotec Speedy 100」 レーザーカッター:「trotec Speedy 100」
CNC:「Carbide 3D Nomad」 CNC:「Carbide 3D Nomad」
CNCルーター:「CNC Router Parts PRO4848」 ※スタッフによる制作代行でのみ利用可能 CNCルーター:「CNC Router Parts PRO4848」 ※スタッフによる制作代行でのみ利用可能
バンドソーやボール盤など、アナログな工作機械も用意している。 バンドソーやボール盤など、アナログな工作機械も用意している。
はんだごて はんだごて

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