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MFCを使い歩行運動で発電する——ウェアラブルデバイスのバッテリーを不要にするバイオメカニカル発電技術

環境光、温度差、振動といった、私たちを取り巻く環境から得られる微小なエネルギーを電力に変える環境発電(energy harvesting)。人がその上を歩くと発電する床発電や、風による動きを電力に変える旗発電などが知られているが、香港中文大学(CUHK)では、人の動作から電力を得ることでウェアラブルデバイスの電池を不要にするバイオメカニカル発電の研究が行われている。

米国物理学協会の発行する学術誌『Applied Physics Letters』に掲載された論文によると、環境発電に向いた体の部位は、可動範囲の大きい膝関節だという。しかし、これまでに作られた膝関節用バイオメカニカル発電装置は重く、ギヤチェーンとDC発電機を使ったものでは、4.8Wの出力が得られたものの重量1.8kgと身体への負担も大きかった。

CUHKの研究チームが考案したデバイスは、NASAが開発した圧電複合材MFC(MacroFiber Composite:マクロファイバーコンポジット)を応用したものだ。これは、脚部に取り付けた装具で膝関節の回転運動を直線運動に変え、ビームに組み込まれたMFCの薄板を曲げることによって電力を発生させる。実験では、成人男性3人にランニングマシーンを使って時速4キロで歩行させたところ、平均で1.6mWの電力が得られたという。これは、GPSとIMU(慣性計測装置)を作動させるには十分な電力で、MFCの重量は僅か307gだ。

論文の責任著者のLiao Wei-Hsin教授は、「自己給電型デバイスはユーザーを毎日の煩わしい充電から解放するだろう」と、今後の研究成果への期待を明らかにしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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