イマジナスは近隣の学校統合により閉校となった小学校跡地をリノベーションし、2023年10月に複合施設としてオープンした。館内には子ども向けワークショップやサイエンス体験ゾーンもあり、体験に重点を置いていることが特徴だ。

ファブ施設は施設内の2階にある。一般的なファブ施設と同様の各種機材が利用できるとあって、大人の利用者が中心だという。ものづくりラボを担当する牟禮光稀（むれこうき）さんによれば、施設全体では親子連れが多いが、ものづくりラボに限っては「やりたいことが明確な大人の利用が多い」そうだ。

「趣味の作品制作に利用する方もいますが、クリエイターやイラストレーターなど、ものづくりを仕事にしている方が利用者の中心です。自分の個展用のノベルティや販売物、仕事で使う造形物の制作にものづくりラボを活用しているようです」（牟禮さん）

クリエイターが自作デザインのキーホルダーや雑貨を少量生産するなど、サブカルチャーの街としても知られる地元 高円寺らしい使われ方もしている。

「どうしても生産量が多いと外注になりがちですが、試作や小ロット生産なら、自分で作った方がコスト面も優れていますし、楽しいと感じる方が多いですね」と牟禮さんは語る。

一方で、土日祝日には子ども向けの工作体験イベントやワークショップも盛況だ。絵を描いたものをスキャンしてレーザーカッターで彫刻するなど、初心者にもわかりやすいプログラムが中心。館長の小林直樹さんによれば、土日はものづくりラボだけでなく、館内全体が親子でにぎわうという。

「自分が描いた絵がそのまま形になる」という喜びは大人も子どもも同じ。デジタル工作＝難しいと思われがちだが、まずは触ってみるきっかけを提供したいというのがイマジナスの狙いだ。

オープンから1年がたち、地域住民にも知られる場所になったイマジナス。今後は地域の学校との連携や施設外での出店など新しい取り組みにもチャレンジしたいと、小林さんは目標を掲げる。

「ここに来る子どもたちから『レーザーカッターが学校にあるのに、使えない』という話を聞きます。調べてみると、使いこなせる先生が他校に転任するなどの理由から使えなくなってしまったケースもあるようです。であれば、アウトリーチ活動の一環として私たちがレクチャーすることも考えられますよね」（小林さん）

過去に都内の競馬場からの依頼で、馬をモチーフにしたアクリル製キーホルダーのワークショップを実施したところ、会場の競馬ファンがこぞって参加。ひっきりなしにワークショップ会場に訪れる大人たちを見て、施設外でものづくりのすそ野を広げることの意義を感じたという。

「デジタル工作機械を使って、こういうのができるんじゃないか」「こういうことができたら面白いのでは」という発想を持てる人を増やす活動を、施設内外を問わず継続していきたいと牟禮さんは意気込む。

「そのためにもスタッフ自身もクリエイティブであってほしいと思います。同時に、ものづくりラボがイマジナスにとって、無くてはならない場所であり続ける必要もあると思います。この2つを実現するためにも館内のノベルティやグッズを、スタッフ自ら企画から制作まで一貫して行っています」（牟禮さん）

ワークショップをきっかけに初めてデジタル工作に触れる人から、プロとして本格的に機材を使いこなす人まで、イマジナスのものづくりラボは誰の「作りたい！」にも応える拠点だ。子どもたちの自由な発想を刺激すると同時に、大人のものづくり熱も深く満たしてくれる場所として、今後のさらなる発展が期待される。

近隣に住む方はもちろん、遠方からでも立ち寄る価値あり。あなたのアイデアを形にする第一歩、イマジナスで踏み出してみてはいかがだろうか。