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Nintendo Laboのダンボールにはすごい技術がたくさん詰まっていた——自作のためのダンボールの知識とおまけAIデータ付き

公開されているデータの中身

ダンボールの厚みの話だけで前置きが長くなってしまいましたが、ここからは実際に任天堂が公開しているデータを見ていきます。実は、任天堂が公開しているダンボールのPDFデータは、Adobe Illustratorで開くと、レーザーカッターなどで直接扱うことのできる線のデータである“パスデータ”が埋め込まれています。

大事なことなのでもう一度いいます。
PDFデータにはパスデータが含まれているのです。

Adobe Illustratorで開いて画像の表示を消すと、パスデータだけを見ることができる。 Adobe Illustratorで開いて画像の表示を消すと、パスデータだけを見ることができる。

これはつまりパスデータを使ってレーザーカッターでダンボールを切ることができるのです。なんということでしょう。優しすぎる任天堂。

この事実を知った私は、いてもたってもいられず手元にあったモノタロウのダンボールをレーザーカッターにかけました。そして出来上がったMonotaRO Laboのリモコンカーがこちらです。

完成したMonotaRO Laboのリモコンカー。 完成したMonotaRO Laboのリモコンカー。

モノタロウのダンボールは厚みが3mm。実際にToy-Conをはめてみると少しキツいようでしたが問題なく走り、遊ぶことができました。ただし、実際に販売されているシートでは折れ線部分があらかじめ少し凹んで跡が付けられているのですが、レーザーカッターでは凹みは付けられないため破線の切れ目を入れています。

この公式データ、レーザーカッターで使うためにはいくつか変換が必要でしたのでもう少し詳しく説明します。

まず、データの中身は3種類に分類されます。

  • 画像データ:ダンボールの色、印刷の色のデータはパス化されていません
  • カット線のデータ:パス化されている実線
  • 折れ線のデータ:パス化されている破線

データを個別に扱うためにクリッピングマスクを解除して共通選択を駆使し、データの種類ごとにレイヤー分けすると便利です。

レイヤー分けをして実線と破線を色分けした。 レイヤー分けをして実線と破線を色分けした。

そしてここで破線のデータにひと工夫します。通常Adobe Illustrator上の破線はアウトライン表示すると破線にはなっておらず、パスデータ上ではひと続きの実線で見かけ上破線になっているだけなのです。このままレーザーカッターなどのパスデータを元に加工する機材にかけてしまうと、破線ではなく直線として扱われバラバラにカットされてしまいます。

つまり、レーザーカッターで加工するには、見かけ上の破線を真の破線に変換する必要があるのです。

見かけの破線を真の破線にする

通常のAdobe Illustratorの利用では見た目だけできていればいいので、真の破線の作り方なんて全く知らなくてもいいのです。ただ、レーザーカッターを使っていると破線のカットで折れ線を作りたいことが意外に多く、困ったことがある人も多いのではないでしょうか。
せっかくなのでその手順をまとめてみました。

1.パターンブラシで破線を作る
2.パターンブラシを破線にしたいパスに適用
3.アピアランスの分割

パターンブラシは一度作ってしまえば適用してアピアランスの分割をするだけで済み、とても便利です。破線の粗密ごとにブラシを用意しても良いかもしれません。

これでアウトライン化してもちゃんと破線になったパスのデータを作ることができました。いよいよオリジナルでNintendo Laboの側を作ってみます。

実際にNintendo Laboであそびを作ってみる

まずは完成図をイメージするために、ラフな形をFusion 360で作成します。今回はNintendo Laboでジェンガの遊び方を進化させようということで、ジェンガを遊ぶためのステージをイメージして形を作っていきました。

次に、このラフの完成図を見ながら展開図をAdobe Illustratorで起こしていきます。ツメやJoy-Conを固定する箇所などは、公開されているPDFからデータを持ってきて寸法を微調整していきます。ただ実際に試作してみると、折りたたむことで初めて分かるダンボール同士の干渉が連発し、改めてNintendo Laboのすごさを感じました。

そして試行錯誤の末、完成した図面がこちらです。実際にNintendo Laboを組み立てた方はお気づきかもしれませんが、Nintendo LaboのVariety Kitのパーツのほとんどは斜めに配置されています。これは、ダンボール内部のフルートに平行にカットをしてしまうと表面の紙とフルートが剥がれやすくなってしまうからです。

フルートに対して斜めにカットすると、どこで切ってもフルートの断面を見ることができ、端の強度が増し、場所による折り目の強度の差もなくすことができます。ちなみにRobot Kitはパーツひとつひとつが大きいため、ほとんどのパーツがダンボールに対して平行に配置されています。

また、その他にも学びが大きかった設計はたくさんあるのですが、長くなるので箇条書きでまとめます。

  • 折り目のほとんどが谷折り
    →片面からのスジ入れ加工で済む
  • 側面のつなぎ合わせにダンボールの弾性を使って形状を維持する設計がある(リモコンカー)
  • バネの機構もダンボールの弾性を活用(おうち、バイク、ピアノなど)
  • カット断面が細かいギザギザになっている
    →指を切りにくい/全周カットされていてもパーツが抜け落ちることがなくなる
  • 正しく組み立てると印刷されている色が一致するなどの間違い防止がされている

図面が完成したらダンボールをレーザーカットして組み立てていきます。適切なパラメータでカットすると、裏面などの焦げも少なくきれいにカットできます。あとはひたすら折って組み立てれば完成です。

タイトルは「Nintendo Laboで作ったNeoジェンガ」とでもしておきましょう。基本的なルールは普通のジェンガでいいのですが、いくつか要素を追加しました。

  • 相手のプレイ中にJoy-Conを押すとLRのリモコンが振動して妨害できる
  • Joy-Conが振動すると中央の土台が下に下がっていく
  • IRカメラで土台の下がり具合を検知し、一定以上下がると振動が止まらなくなる
  • ジェンガが崩れなくても振動で土台が抜け落ちたら負け
(左)台座は徐々に下がっていく(右)IRカメラで台座の下がり具合を検知 (左)台座は徐々に下がっていく(右)IRカメラで台座の下がり具合を検知

実際に遊んでみた動画はこちら

土台が下がっていくと下のほうのピースを取ることが困難になり、かなり難易度が上がりましたが、あっけなく崩れるさまなどは普通のジェンガよりも面白くなりました。実際にこちらを組み立ててみたい方は、Adobe Illustratorのデータを記事の最後に付けましたので、レーザーカッターなどで作ってみてください。

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