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ケイ砂の蓄熱を利用——再生可能エネルギーを安価に保存するシステムを開発中

Image by Patrick Davenport and Al Hicks, NREL

米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の研究チームは、砂を使った熱エネルギーの貯蔵技術「ENDURING(Economic Long-Duration Electricity Storage by Using Low-Cost Thermal Energy Storage and High-Efficiency Power Cycle)」が、試作テストの最終段階にあると発表した。低価格で不活性材料のケイ砂を利用し、コスト効率と拡張性が高いことから、脱炭素社会の実現に向けた有力な技術として期待できる。

米バイデン政権は2035年までにカーボンフリーの電力セクター、2050年までにネットゼロ経済の実現を目標に掲げている。社会活動のためには連続的な電力供給が必要だが、太陽光や風力といった断続的な再生可能エネルギーを有効活用するには、優れたエネルギー貯蔵技術が重要となる。電力の貯蔵にはリチウムイオン電池が最有力候補とされるが、NRELは電池が全てではないという。

ENDURINGでは、太陽光や風力による余剰電力でヒーターを動かして、蓄熱材料のケイ砂を1200℃まで加熱し、熱エネルギーを持った砂を断熱コンクリート製サイロに貯蔵する。電力需要が高い時は、砂を熱交換器に供給し、タービンと発電機を回して電力を生成し、電気料金が安い時に再び砂を加熱してエネルギーを蓄える。システムのベースラインは、最大2万6000MWhの熱エネルギーを貯蔵するとしている。

このシステムには、低コスト、高効率、安全性という強みがある。ケイ砂は埋蔵量が豊富で、1トンあたり30~50ドルと原料費が安く、採掘や廃棄が環境に与える影響は限定的だ。熱エネルギーのコストも、充放電時の温度差が900℃の場合に1kWhあたり2~4ドルと非常に安い。また、ケイ砂は不活性材料のため、大規模エネルギーの長期保存に適している。設置場所にも特別な制約がなく、廃止された石炭火力発電所や天然ガス火力発電所の設備も利用できる。モジュール構造とすることで、貯蔵容量の変更も比較的容易だ。

「電力の脱炭素化には明確な過程がある一方、建物の空調システムや製造プロセスといった経済全体の脱炭素化の方は難しい。なぜなら、現在使用している天然ガスは非常に安く、置き換えが難しいからだ」と、Zhiwen Ma主任研究員は語る。再生可能電力を熱に変換することで、こうしたセクターの脱炭素化も可能になるとしている。

ENDURINGと太陽光発電の統合に関する特許も取得し、現在は、試作したヒーターと熱交換機を高温環境下でテスト中だ。2021年の秋にテストが成功すれば、将来のカーボンフリーエネルギーの供給に向け、再生可能エネルギーとの統合へ大きな期待が持てると、Ma研究員は自信を見せている。

fabcross for エンジニアより転載)

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