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La French Tech——なぜフランスは欧州屈指のスタートアップ大国に発展したのか

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資金調達 起業 アクセラレータ
パリ市内にあるインキュベーターを網羅した地図。フランス国内のスタートアップの8割がパリに拠点を置くという。(資料提供:DMM.make AKIBA/USINE IO)

フランスはファッションと芸術の国からテクノロジーとスタートアップの国へと変貌を遂げようとしている。
大々的なスタートアップ支援策「フレンチテック」を2013年から展開し、国内外からスタートアップを誘致。世界最大級の家電見本市「CES」では、アメリカや中国と並ぶ存在感を示し、2019年には300社以上をラスベガスの会場に送り込んでいる。

なぜ5年という短期間のうちに、フランスは世界でも存在感を示すスタートアップ大国になったのか。2019年1月に来日したフランス・パリのアクセラレーター「USINE IO」のイベントレポートと共に、その背景について紹介したい。

コーチングに特化したアクセラレーター「USINE IO」

2019年1月18日、DMM.make AKIBAで、USINE IOを招いたトークイベントが開催された。USINE IOはハードウェアスタートアップのビジネスを支援する目的で2014年に設立。現在は対象を大企業や中小企業にも広げ、製品化に向けたコーチングとアクセラレーションプログラムの提供に特化している。

スタートアップのインキュベーターは世界中に存在しているが、近年はIoT市場の成長を見込んで製造業に強みを持つインキュベーターやアクセラレーターが増えつつある。創業者も製造業出身者で固められていることが多い。

USINE IOの創業者Benjamin Carlu(ベンジャミン・キャルル)も、自ら家庭用太陽光発電システムの会社を2005年に興した経験を持ち、2年後に事業を売却した後にグリーンテックを主な領域とするベンチャーキャピタル(VC)を経て、USINE IOを起業した。スタッフも製造業畑出身のメンバーで構成されているという。

USINE IOの創業者Benjamin Carlu。 USINE IOの創業者Benjamin Carlu。

短期間でサービスを公開できるソフトウェアと異なり、ハードウェアは製品化までの道のりが長いため、製品化に至るスタートアップは非常に少ない。ハードウェアスタートアップに特化したアクセラレーターや製品化支援を行うインキュベーターも収益化に苦戦するケースが多く、多くのインキュベーターが撤退している。

現在、ハードウェアスタートアップの量産を支援する団体の多くは2つの系統に分かれている。一つはVCが投資だけでなく開発や量産を積極的に支援するケースで、アメリカと深センに拠点を持つHAXやフランスのHardware Club、日本のMakers Boot Campが当てはまる。投資したスタートアップの成功確度を上げるべく、経営や資金面だけでなく開発面でもサポートしているのが共通点だ。

もう一つは製造業に携わる企業がスタートアップ支援も行うケースだ。アメリカの大手技術商社AVNET傘下のDragon Innovationや中国・深センに生産拠点を持つJENESIS、浜野製作所などが当てはまる。彼らは自らのノウハウとネットワークを駆使して、スタートアップの開発をサポートしている。

USINE IOの場合、創業5年以内の企業からは月490ユーロと製品化した際の利益の1%、それ以外の企業は月3900ユーロを払えばコーチングが受けられる。また、アクセラレーションプログラムを実施する際には、大企業からスポンサー費用を集めることで収益を上げている。前述した2つのモデルとは異なり、製造支援単体で経営している稀なケースだが取引先の7割は創業5年以内のスタートアップ、3割は中小企業など一般の企業とのことだ。

Benjaminによれば、アイデア段階から原理試作を経てDFM(製造容易性設計)へ移れるプロジェクトは100件中5件程度だという。この歩留まりを改善して1件でも多く量産にこぎ着けるようにすることがUSINE IOの存在意義だろう。

100のアイデアのうち、設計まで進めるのは5つ程度。スタートアップを支援する取り組みが充実していても、ハードウェア開発の難しさは依然として変わらない。(資料提供:DMM.make AKIBA/USINE IO) 100のアイデアのうち、設計まで進めるのは5つ程度。スタートアップを支援する取り組みが充実していても、ハードウェア開発の難しさは依然として変わらない。(資料提供:DMM.make AKIBA/USINE IO)

USINE IOのようにスタートアップを支援するフランス国内の組織は、ここ数年で爆発的に増えている。冒頭の図はパリ市内にあるインキュベーターの地図だが、Benjaminいわく供給過多状態に陥っており、現在は専門分野ごとの細分化が進んでいるという。増加の背景にあるのは、フランスが2013年から推進している国家プロジェクト「フレンチテック(La French Tech)」だ。

国籍に関係なく支援するフランスのスタートアップ支援

フレンチテックの特徴の一つに、国内のスタートアップへの手厚い支援はもとより、海外のスタートアップの誘致にも積極的なことが挙げられる。世界の主要都市20カ所以上に支局を持ち、フランス国内への進出を目指すスタートアップには「French Tech Ticket」と呼ばれるプログラムを用意している。

ビジネスコンテストの審査を通過すれば、2万5000ユーロ(約310万円)の事業助成金と2万ユーロ(約250万円)の滞在費が支給されるほか、申請者だけでなくチームメンバーやその家族の滞在ビザもスピーディーに発給される。滞在期間中はインキュベーション施設に格安もしくは無償で入居でき、USINE IOのようなアクセラレーターのメンタリングのもと、半年から9カ月ほどかけて試作開発を進めながら事業計画を練る。

French Tech Ticketのプロモーション動画

どのようなスタートアップがフランスに進出するメリットがあるのか。Benjaminによれば、法人向けのプロダクトを開発するスタートアップが向いているという。なぜならば、一般消費者向けの製品の場合は各国のディストリビューターを介さないと販売できないからだ。ユーロ圏の場合でも国ごとにディストリビューターと契約する必要があり手続きが煩雑なので、一つの国で巨大市場を狙えるアメリカのほうが向いているというのがBenjaminの見解だ。

逆に法人向けのプロダクトの場合、フランスでは大手企業が積極的にスタートアップとの提携を推進していて、プロトタイプの段階でも大手企業からの出資や開発支援が得られる可能性が高いという。生産も小ロットをメインとしながら輸出する先や納品する先に応じて、カスタマイズしやすいようにしておいたほうがいいとBenjaminはアドバイスした。

オープンイノベーションを市民にお披露目する「VIVA TECHNOLOGY」

VIVA TECHNOLOGYの会場の様子(出典元:VIVA TECHNOLOGYのFacebookページ) VIVA TECHNOLOGYの会場の様子(出典元:VIVA TECHNOLOGYのFacebookページ

大手企業とスタートアップが提携するオープンイノベーションは日本でも浸透しつつある。大手企業が主催するアクセラレーションプログラムは珍しくなくなったし、共同開発や技術提携も活発に行われている。

国を挙げてスタートアップを支援するフランスでは、大企業とスタートアップとのオープンイノベーションの取組を披露する大規模なイベント「VIVA TECHNOLOGY(ビバ・テクノロジー)」が開催されている。フランスの大手広告代理店Publicis Groupeが主催し、MicrosoftやIBM、Alibabaといったフランス国外の大手企業に加え、エンジニアにはCATIAでおなじみのDassault Systèmes、自動車メーカーのRenault、航空機メーカーのAirbus、Louis VuittonやChristian Diorなどの有名ブランドを持つLVMHなどそうそうたる企業が出展する。

オープンイノベーションラボと呼ばれる展示エリアでは大企業が社会課題や自社課題を提示し、スタートアップは解決策となるプロダクトやサービスで応募する。最終的に採用されたスタートアップは大企業のブースの中で展示やピッチを行う仕組みだ。ユニークな点としては開催期間3日間のうち、初日と2日目は英語が公用語でビジネス向けの内容だが、最終日は公用語がフランス語となり展示内容も一般市民向けにアレンジされることだ。ビジネス向けの展示をアレンジして、テクノロジーと直接関わりのない大人から子どもまで届けようとする姿勢は先進国でも珍しい。

このように政府や民間企業が団結して、さまざまな施策を講じた結果は出ているのだろうか。「Pass French Tech Program」と呼ばれる支援プログラムに、2015年から2017年に採択された44カ国117社についてフランス政府がまとめたデータによると、合計で6億1636万ユーロ(約771億円)の資金調達に成功し、7672人の雇用増に貢献、企業成長率は167%という結果を残しているという。

政府が発行している、フレンチテックの実績をまとめた資料(出展元:L'Agence du Numérique) 政府が発行している、フレンチテックの実績をまとめた資料(出展元:L'Agence du Numérique

公用語がフランス語であることがネックとなっているせいか、フレンチテックの支援を受ける日本のスタートアップはほとんどいないそうだが、外国企業にまで門戸を開く制度は非常に珍しい。もしあなたが海外市場を見込んだプロダクトを開発しようとしているのであれば、フランスに目を向けてみてはどうだろうか。フレンチテックは日本国内に支局があり、フランス大使館でも情報を発信している。

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