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実際の株価が表示できる、株トレーダーみたいなミニチュア机を作る

「株トレーダー」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ディスプレイがいっぱい並んだ机である。たくさんの情報を一気に得られるよう、座席を取り囲むようにディスプレイが置かれており、しかも上下2段になっていたりする。

あの机は格好いいし、迫力がある。うちにも欲しい。ただ、あんなにディスプレイを並べるスペースはないので、いつも想像するだけで終わってしまう。

ミニチュアだったら、あの良さを手軽に再現できるかもしれない。作ってみよう。

小型ディスプレイで作ろう、株トレーダーの机

株トレーダーのなかでも、特にデイトレーダーと呼ばれる方たちは、瞬時の判断で株を売り買いしている。一目で状況を把握する必要があり、その結果として大量のディスプレイを並べているようだ。そう、こんな風に。

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一見すると異様にも思える佇まいだが、ものすごく「サイバー」だと感じる。視界一面がディスプレイなのだ。席に座ると、きっと情報の海に溺れるような感覚に陥るに違いない。一度でいいから味わってみたい。

これをミニチュアで再現したいと考えたとき、一番「それっぽさ」に関与するのは、やはりディスプレイであろう。印刷した紙を、ただ貼り付けるだけでは面白くない。ちゃんと機能する液晶を使って、好きな画面を表示させたい。

そんなちょうどいい小型の液晶なんて……あった!

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この超小型の液晶は、Waveshare製の「1.47インチ 角丸LCDディスプレイモジュール」という製品。解像度は172×320ピクセルで、SPIで表示を書き換えることができる。

素晴らしいのは、他の小型液晶に比べてベゼル(額縁)部分が圧倒的に狭いのだ。そのため、この液晶に3Dプリンターで作った外装をはめこむだけで、ほらこの通り。

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超小型の液晶ディスプレイが完成してしまった。

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サンプルで用意されていた画像を表示してみる。か、かわいい……! これだけで一つの商品になりそうな良さが生まれている。

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しかも今回は、これだけでは終わらない。上下2段にしないといけないため、上段にもう1個のディスプレイを接着する。小型の「ニンテンドーDS」みたいな見た目になった(このサイズのゲーム機があったら面白そう)。

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小型液晶は計6個用意し、2段組みのペアを3セット作成した。ワイヤーが固いため、配線時に負荷がかかってディスプレイがバラバラにならないよう、エポキシ系接着剤で強力に固めておいた。これで液晶部分の制作は完了だ。

小型液晶に株価チャートを表示する

液晶画面に表示するのは、やはり株価チャートがいいだろう。それも決め打ちの画像ではなく、ちゃんとインターネットから株価情報を持ってきて表示させたい。

実際の株価を取得するのは、Pythonが動作する「Raspberry Pi」(ラズパイ)を使うのが一番簡単だ。一方で、ラズパイはサイズが大きく、配線の取り回しが大変なので、液晶を制御するのは別途ESP32という、ネットワーク機能を持った小型のマイコンボードを使うことにした。

今回発案した「小型液晶に株価チャートを表示するシステム」は、このような構成である。

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【ライズパイ側】

  1. インターネットから株価の情報を取得
    (”pandas_datareader”というPythonライブラリを使用)
  2. 株価の数値を、株取引でよく使われる「ローソク足チャート」の画像に変換
    (”mplfinance”というPythonライブラリを使用)
  3. ローソク足チャートの画像を、液晶表示用のデータ列に変換(自作スクリプト)
  4. 生成したデータ列を、ローカルのWebサーバー上に公開
 

【ESP32側】

  1. ローカルのWebサーバー上から、液晶表示用のデータ列を受信
    (”HTTPClient”というArduinoライブラリを使用)
  2. SPI経由で、液晶にデータを送信
    (液晶メーカーが公開しているライブラリを使用)

実際には、液晶6個に別々の画面を表示する必要があるため、上記の手順を6回繰り返している。

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試行錯誤の末、コンパクトな回路も完成。このように1個のESP32で、6個の液晶に株価チャートを表示することが可能となった。

使っている小型液晶は解像度も低いし、通信インターフェースがSPIなので、普通のディスプレイみたいに「HDMIでつなぐとすぐ映像が出る」というわけにはいかない。わりと面倒くさい手順を踏んで、表示用の画像をせっせと作っている。

定期的にプログラムを動かしておけば、株価情報を最新のものに更新することもできるし、わりと実用的なシステムができあがった。ただし、とてもデイトレードに使えるような表示速度ではないので、「1日1回、その日の株価を更新」みたいな使い方が向いているだろう。画面に表示しているのも、「日足」と呼ばれる1日単位のチャートである。

机を作って液晶を設置する

最後に残ったのは、机の製作だ。

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MDFという木材の成形品をレーザーカッターで切り出して、

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接着剤で組み立てれば、あっという間に完成。

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ただ、そのままだと株トレーダーのクールな雰囲気に合わないナチュラルさなので、全体を黒く塗装した。

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机の背面には、液晶制御用のESP32などが乗った自作基板を固定する。サイズを合わせて作ったのでピッタリだ。

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そして先に作っておいた液晶を、接着剤を使って机にがっちりと固定。だんだん全貌が見えてきた。

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少し面倒なのは、配線である。液晶1個あたり8本の配線が必要なので、計48本を接続することになる。できるだけ配線しやすいように基板を作ってあるが、間違えないよう慎重に……。

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ふー、すべての配線が無事に終わった。

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白鳥が水面下では激しく足を動かしていると言われるように、電子回路も何食わぬ顔で動いているように見えて、裏面は得てしてゴチャゴチャになりがちである。

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もう少しディテールにもこだわりたい。机の上には、3Dプリンターで出力した極小サイズのキーボードとマウスを配置して、

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さらに椅子も3Dプリンターで出力した。

これで完成である。さあ電源を入れて、液晶画面を映してみよう。

株トレーダーみたいな机、誕生

いざ、電源オン!

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6個の液晶に、順番に画面が表示されていく。このGIF動画は早回しになっていて、実際には全部表示し終えるのに2分くらいかかる。気長に待とう。

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株価チャートが表示されると、紛れもない「株トレーダーのあの机」が誕生した。うちにもついに、あの机がやってきたのだ。感動である。

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サイズ比較のため、10円玉を置いてみた。そのコンパクトさが分かると思う。これくらいなら狭い部屋にだって設置できるし、(ものすごく見づらいけど)いちおう株価チャートも確認できる。

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近づいて接写してみると、ディスプレイに取り囲まれている雰囲気が再現できた。

画面に映しているチャートだが、最初は実用性を重視して、いろんな企業の直近1~2週間の株価推移を表示していた。しかし、どの株価もキレイに右肩下がりになっているという、つらい現実を目の当たりにしてしまう……(2022年12月時点)。

面白みがないうえに、なんとも悲しい画面になってしまったので、撮影時は画面ごとにいろんな期間のチャートを混ぜて表示してある。自由に表示内容を変えられるのも、このシステムの強みである。

照明を変えて、もっとギークな雰囲気にしてみる

照明を落とした暗い部屋で画面だけが光っていると、ギークさが出て格好いいかもしれない。そんな予感がしたので、試してみた。

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おお、予想通りいい雰囲気だ。

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暗くすることでミニチュア感が薄れて、本当にこういう世界があるように錯覚できる。

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さらに、照明を緑にしてみた。カタカタカタ……ターン! というキーボードの打鍵音が聞こえてくる(実際の株トレーダーはそんなことしないだろうけど)。

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妖艶な光を放つ部屋で静かにディスプレイを見つめていると、ミニチュアと現実の境界が徐々にあいまいになっていき……

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やがて精神は、株トレーダーの世界にトリップした。

というのは言い過ぎだけど、わりと本物が持つ「サイバー感」に近づけたのではないか。

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すべての照明を落とすと、視界に広がるのは株価チャートだけ。夢に出そう。

2022年を思い起こしてみると、個人的には株価を確認するのがつらい日々を過ごしていた。そんな毎日でも、このミニチュア机があれば、少しは愉快な気持ちでチャートを眺められたかもしれない。

例えば、右肩上がりになっている期間だけを選んで表示すれば、投資家的にはたまらない瞬間だけを切り取った、ハッピーなガジェットにすることもできそうだ。

使っているのはとても小さな液晶だけど、表示内容を変えるだけで一喜一憂することができる。これは株が持つ特性を利用した、感情を操作するガジェットだと言えるかもしれない。

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余談だが、小さいキーボードとマウスも本当に操作できたら面白いだろうなあ、と思いながら指を添えてみた。ミニサイズで株取引できる専用ガジェット、もしあったらちょっと欲しい。

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