子どもが産まれて3Dプリンターをめっちゃ使うようになった話——「育治具」作りからキーボードケース販売まで
2024年3月に子どもが産まれたのですが、意外なことに産む前よりも3Dプリンターをよく使うようになりました。赤子を連れて慣れぬ外出で100円ショップに行くより、3Dプリントする方が楽。また、家にこもりがちで「今日も何もやっていない……」みたいな日が続く中、3Dプリントをすると「何かしら産み出した」という気持ちになれて良かったのもあります。そんなちょっと特別な時期の3Dプリンター体験記です。
子どもが産まれる前に新しい3Dプリンターを購入
元々3Dプリンターは持っていました。でも、日常的にというよりは作品を作るときに使用していたため、使用頻度はさほど高くありませんでした。また、トラブルが起きてメンテナンスに時間を割かれがちだったのもあまり使わなかった理由の1つでした。
「じゃあトラブルの少なそうな新しい3Dプリンターを買おう!! 子どもがいるなら囲いもある方がいいし!」と、出産前に新しい3Dプリンターを購入しました。自分への出産の前祝いと言い訳をしながら……。
100円ショップに行くより楽、産後の日々と3Dプリンター
無事出産できた喜びもつかの間、後は慣れぬ育児で家にこもる日々。生活は少しでも楽をしたい、そして赤子連れで出かけるのは大変、そんなときに役立ってくれたのがこの3Dプリンターでした。
通販で探すと妙に値段が高くて入り数が多い、100円ショップに売っていそうなちょっとしたもの。100円ショップに行く気力体力時間がない、そんなときは、新しい3Dプリンター(Bambu Lab)のスマホアプリを開きます。欲しいものを検索してボタンを押し、しばらくすれば欲しかったものが手元に。100円ショップに行くより楽! 通販より早い! で、いろいろとプリントしました。
また、少し余裕が出てきてからは、自分でモデリングしたり、私のヘルプを受けながら夫がモデリングをしたりして、オリジナルのものも作りました。3Dプリンターが普及し始めた頃は「世間ではすごいすごいと言われるけど、3Dプリンターってそんな夢のような道具じゃないぜ」と思っていましたが、かなり便利に、白物家電のように使えるようになってきていますね。進化がすごい。
作ったモノたち① 生活の改善と育治具
初めに作ったのは生活便利グッズです。家にいる時間が長く、かつできるだけ家事はさぼりたい、ということで家を改善するモチベーションはマックス状態。例えばロボット掃除機が乗り越えられない段差にスロープを作りました。
3Dプリンターは、子ども関連のものを使いやすくするのにも活躍しました。例えばチャイルドシートに乗せた子を監視するカメラの固定具。これがないときには映像がグラグラしたり、アングルの調整がしにくかったりとストレスがあったのですが、作ったことでとても安定しました。探せばおそらく市販品でも適合するものがあると思いますが、取り付けたい位置や車のサイズ、カメラの種類などに適合したものを探すより作った方が早い、ということで3Dプリント。これは一番作って良かったものです。
「#育治具」というタグがX(旧Twitter)にあります。育児をサポートする治具を指す造語で、ひつじさん(@sheep_7s22n6M4i)が提唱しています。制作時は知らなかったのですが、私たちが作った固定具も育治具ですね。赤子という新しい存在を、自分たちの生活にしっくり落ち着かせる。育治具作りは、ただ便利にするだけでなく、新しい生活をなじませるための儀式的な役割もあるのかもと感じました。
作ったモノたち② 予想外に増えた「人へのプレゼント」
意外なことに、人にあげるためにプリントする機会が増えました。例えばお祝いで親戚や友人が我が家に子ども連れで来てくれることがあります。そんなとき、お子さんに好きなモデルを選んでもらい、その場で3Dプリントしてプレゼントすると喜んでくれました。子どもに限らず、子どもができたことにより人とのつながりが増えたので、人のために3Dプリントをすることが増えました。
作ったモノたち③ 趣味のもの
ある程度余裕が出てきてからは、趣味のものを作るという、元々の3Dプリンターの使い方も復活してきました。私の趣味の水耕栽培関連のパーツを作ったり、夫は車をいじり始めてそのパーツを作ったりしていました。育休を機に、夫が以前より3Dプリンターを使うようになったのはうれしかったです。
作ったモノたち④ 3Dプリント品の販売が社会との接点を保ってくれた
これは少し特殊なケースかもしれません。産後、ささやかながら自作キーボード用の3Dプリントケースの販売を始めました。たまに売れると、いそいそと3Dプリントし、発送します。忙しい日々の中、手間ではあるのですが、その作業をしている間が自分にとって「社会とつながっている」感覚を得られる貴重な時間でした。
仕事を休んで家で子どもと過ごしていると、社会に取り残されているような感覚になることもあります。そんなときに「自分が作ったものを誰かが欲しいと思って買ってくれて、自分は今それに応えている」という体験はとてもうれしく、気持ちを救ってくれました。3Dプリンターと個人のものづくり販売があのときの自分を支えてくれたなと思います。
おもちゃはまだ作らず
産まれる前には、おもちゃなども作ろうかと思っていたのですが、今のところ作っていません。まだなんでも口に入れる時期なので、安全性の面から心配だというのが理由です。破損してパーツを誤飲してしまうのが怖いのと、3Dプリンターの特性上、積層痕に細菌が繁殖しやすいという衛生面での心配も。赤子に対してはやはり心配性になってしまいますね。もう少し子どもが大きくなったらたくさん作りたいなと思っています。
普段の生活で3Dプリンターをカジュアルに使う
「あれ? 思ったより育児に関係なくない?」と思った方もいらっしゃると思います。そうです。育児自体に使うというより、育児生活をきっかけにカジュアルに3Dプリンターを使う習慣が付いた、というのが実態です。
同じものを手に入れるにしても、3Dプリンターを使うと、買うよりも「何かやった感」があるのが良いですね。外食も好きだけど、自分で料理するとちょっといい気分になる、みたいなタイプには良い道具です。子どもの世話で自分の時間を取れない日々は、幸せではあるのですが「今日何も生産しなかったな」という気持ちになることもあります。そんなときにボタン1つで何かを生み出した気持ちにしてくれた3Dプリンターには感謝です。
一方で、時間をかけて自分でモデリングして、3Dプリントするというのも、それはそれでとても良かったです。子どもができたときに手芸で服やおもちゃを作る方は多いですよね。子どものことを思いながら、手を動かしてものを作るのは楽しい行為です。その手段の1つとして、3Dプリンターを使ったものづくりもメジャーになってくれたらいいなと思っています。