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SkyDrive CEO、CTOインタビュー

クルマが空を飛び交う未来が近づいた——2023年度の運航サービス開始を目指すSkyDrive

人が「未来」を想像するとき、「空飛ぶクルマ」と聞くと未来を想像する人は少なくないだろう。世界中で開発競争が繰り広げられる中、SkyDrive(スカイドライブ)は2020年8月に有人試験飛行をメディアに公開し、注目を浴びた。「誰もが自由に空を飛べる時代」を目標とするSkyDriveが次に目指すものは何か?

(記事中の写真と動画提供:SkyDrive/CARTIVATOR 2020)

2023年度、大阪の空を飛ぶ

「空飛ぶクルマ」の実現を目指し、2012年に作られた有志団体CARTIVATORから6年後、SkyDriveは設立された。さらに創業からわずか2年で有人試験飛行公開にまで至るスピードは、驚異的だ。CEOの福澤知浩氏に聞いた。

SkyDriveCEOの福澤知浩氏。 SkyDriveCEOの福澤知浩氏。

——有人試験飛行が公開され、また一歩「空飛ぶクルマ」の実用化に近づきましたね。

福澤:2018年にSkyDriveを起ち上げてロードマップに沿って進め、ここまでこぎ着けることができました。ただビジネスのところまでは行けていない。次の目標は2023年度。大阪で近距離の運航サービスを開始して、お客さんに乗ってもらえるようにしたいと思っています。そのためには、2人乗りにするとか、雨風に強くするとか、機体開発も進めていかなければなりません。

お客さんを乗せるとなると最も重要な課題は安全です。今運航しているボーイング、エアバス、ヘリコプターなどは同じ安全レベルです。最低限そこをクリアできないと、国土交通省の許可は出ず、運航サービスは開始できません。現状の機体とはまだギャップがありますが、2~3年のうちに埋めることはできると思います。

機体以外にも課題はたくさんあります。ひとつは離着陸ポート。目指している機体の大きさは全長4m幅3.5m高さ1.5mの垂直離着陸機なので、乗用車2台分ぐらいのスペースがあれば物理的には十分です。ただ旅客輸送となるとポートは必要で、すでに開発は進んでいます。

制度も大きな問題です。交通ルールをどうするのか、駐停車をどうするのかなど、制度上のさまざまな問題があります。SkyDriveだけでは解決できないので関係各省、他社を含め、毎月議論しています。国土交通省や経済産業省には関係部署がすでに設置されています。「空飛ぶクルマ」による旅客輸送は官民あげて取り組む課題の一つになっています。

2020年8月にメディアに公開された有人試験機「SD-03」の試験飛行。

良いものは必ず普及する

——2023年度以降についてはどう展開していく予定でしょうか?

福澤:2028年度に完全自動運転を可能にして、2030年には今の自動車と同じく日常生活に使えるようにしたいと思います。10年後の未来をイメージしたムービーも公開しています。

SkyDriveが描く2030年ごろの未来。

夢物語のように思われる方もいるかもしれませんが、必ず実現できると私は思っています。1964年の東京オリンピックのとき、前回の東京オリンピックのときの首都高速道路が開通するときに、あんなにせまい道路で100km以上出して数メートル間隔で走ったら絶対ぶつかるだろう、みたいな話はいっぱいあった。でも実際は気をつけて走れば問題なかった。携帯電話が普及し始めた頃も電波が脳に障害をもたらすはずだとか、いろいろありましたが、そういった事例はありませんでした。

交通手段として「空飛ぶクルマ」を考えれば、どう考えても空を飛んだ方が早い。3~5倍の速さで目的地に着くし、楽しいし、安全が飛行機レベルになるならば、それはみんな乗るでしょ、となるわけです。普及しないわけがない。イノベーションを恐れず、実験と実証を重ね、データを蓄積して課題をひとつひとつ克服していく。これからも地道にしかもスピード感を持って事業を進めていきたいと思っています。

スケールアップではすまない

クルマが人を乗せて空を飛ぶとなると、エンジニアリング的に克服しなければならない課題は多い。ただドローンを改良して人が乗れるようにすればいいわけではないのだ。航空機会社の副社長から2020年4月にSkyDriveのCTOへと転身した岸信夫氏に話を聞いた。

SkyDrive CTOの岸信夫氏。 SkyDrive CTOの岸信夫氏。

——現状の有人試験機SD-03はどんな機体ですか?

岸:形はドローンです。4カ所にローターが付いたクアッドローター。上下に付けた2個のローターが1セットになっていて、ローター数としては計8個あります。なぜかというと1つローターが壊れたり、止まったりしても、ちゃんと安全に飛行を続けられ、着陸できるように。スピードや方向は、ローターの回転数を変えることで変えています。うまく8個のローターのバランスをとって飛んでいる、そんな感じです。ただ、その調整が難しい。

「ドローンが飛んでいるのだから、それをスケールアップして人が乗れる大きさにすれば『空飛ぶクルマ』になるじゃないか」と一般の人からは思われがちですが、話は簡単ではありません。例えばドローンのように小さいと、どんな姿勢で飛ぼうと人は乗っていないので、問題ありません。極端にいえば、水平ではなく激しく傾いて飛んでも、ともかくローターが回っていればいいわけですが、たとえパイロットでもそんな乗り物に乗りたいと思う人はいないでしょう。機体も、ドローンのように小さくて軽いと多少ゆがんでも飛ぶので、材料にさほど気を使わず作れます。しかし、人が乗るサイズとなると、機体がゆがんだらうまく飛べません。機体には軽くて、強くて、剛性が高い材料を使う必要があります。

有人試験機SD-03。上下に付けられた2個のローターを1セットとして、4カ所に設置。計8個のローターで飛ぶ。 有人試験機SD-03。上下に付けられた2個のローターを1セットとして、4カ所に設置。計8個のローターで飛ぶ。

100年に一度の変革期

——2023年度の運航サービス開始に向け、機体も変わっていきますか?

岸:旅客輸送となると、快適だと思ってくれないとお客さんは乗ってくれない。例えば「激しい振動がある」「急発進・急加速する」では、お客様は怖くて乗れません。エンジニアとしては、飛ぶ機体が作れても、それを安全で、安心できるものにしなくてはビジネスとしては採算が取れない。まだまだ改良していく必要があります。

あと3年でそこまで持っていくのは簡単ではありませんが、SkyDriveの技術開発のスピードはかなり早いと思います。材料はどうする? ローターの羽根の形やフライトコントロールのシステムは? モーターは? バッテリーは? その辺りのことは素早く進められます。

ただ、できてきたものをなぜそれでいいのかきちんと説明できないと、国の審査は通りません。安全であるということを証明するには、自分たちがいくら「安全です」といってもダメで、一つ一つに審査があります。スピードだけでなく、戦略をもって技術開発していかなければなりません。技術開発戦略を策定することが、自分の役割の一つだと思っています。

2030年にはETCゲートのようなものが各地にあって、そこでボタンをポンと押すと、機体が浮いて空の道を進んでいく。そんなことができるようになれば、と思います。馬の代わりに自動車が世に出始めた1910年代、安全や安心は担保されていなかった。事故も多いし、快適な乗り心地とはいかなかったでしょう。それをエンジニアの力で100年かけてここまでにした。一方で100年も経ったのに自動車のイノベーションは少なかった。次の100年に向けて、今、誕生以来の変革期が訪れています。それが「空飛ぶクルマ」なんだと思います。

未来へ向けた空飛ぶクルマのコンセプトモデル「SD-XX」。 未来へ向けた空飛ぶクルマのコンセプトモデル「SD-XX」。

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