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電気を通す絶縁体——超高速電子デバイスを実現する新しい材料構造を発見

UW–MADISON PHOTO BY SAM MILLION-WEAVER

米ウィスコンシン-マディソン大学の研究チームは、絶縁体でありながら電気は通すという相反する特性を、相転移によって示す新しい材料を作製した。原子構造の変化を伴わないため、相転移に必要な時間は電気伝導性を担う電子の動きが支配的になり、超高速動作が可能な電子デバイスへと応用できる可能性がある。研究成果は2018年11月30日付けの『Science』に掲載されている。

銅や銀といった金属は電気を通し、ゴムやガラスといった絶縁体は電気を通さない。しかし、金属と絶縁体間の相転移が可能な材料もある。例えば二酸化バナジウムは、室温においては絶縁体だが、熱すると電気を通す金属となる。金属の状態ではルチル型(正方晶系)、絶縁体の状態ではモノシリック型(単斜晶系)と呼ばれる結晶構造をとるが、通常こうした相転移には原子と電子の配置の変化を伴い、一般的に原子の再配置は電子のそれに比べて非常に遅い。

もしも原子と電子の動きを分離し、原子構造を変えることなく電気伝導度を変えることができれば、超高速でスイッチングする電子デバイスの開発が期待できる。「金属と絶縁体間の相転移は、1か0しかもたないロジックデバイスやスイッチにとって非常に重要だ」と研究チームは語る。

研究チームは、二酸化バナジウムの転移温度が、物質中の酸素の量に依存して変化することに着目した。転移温度がわずかに異なる薄い2層の二酸化バナジウムを互いに重ねて、転移温度付近まで加熱する。温度によっては一方の層が構造を変えて金属になるが、もう一方の層は転移温度に達しないためにモノシリック構造の絶縁体のままだ。一般的にモノシリック構造の物質は電気を通さないが、ルチル層に隣接したモノシリック層は、電気伝導性を持つことを確認した。

他の研究チームでも電気伝導性のある絶縁体を作ろうと試みたことはあるが、特性を維持することができていない。今回発見した材料は安定性があり、特性も維持することができたという。その鍵となったのは、重なった層構造だ。それぞれの層はとても薄く、2つの材料の界面はシャープだ。この界面が層全体の振る舞いを支配すると考えられる。

研究チームは今後、界面の構造についてさらに掘り下げ、新しい材料の創造につなげたいとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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