常磁性体で熱を有用なエネルギーに変える新しい方法——パラマグノンを使って熱を電気エネルギーに変換する研究
2019/11/24 09:00
オハイオ州立大学、ノースカロライナ州立大学、中国科学院、オークリッジ国立研究所の科学者たちによる国際研究グループは、熱を電気に変換する新たな方法を発見した。研究成果は、2019年9月13日に『Science Advances』に掲載されている。
熱を電気に変換する熱電学は過去約20年にわたって研究されているが、非効率的で、得られるエネルギーが少なすぎるという課題があった。今回の研究は、この課題を解決できる熱電変換素子の新しい設計方法に関するものだ。
熱からエネルギーを集めるものとして、磁石は重要な要素だ。なぜならば磁石の片側を熱すると、反対側(冷たい側)の磁気が強まり、スピン流の駆動力を生じる。スピン波は磁石内の電子を押し、マグノン(注:スピン波の量子化表現)誘起熱電効果によるエネルギーを生み出す。(注:スピンゼーベック効果として知られている)
ところが磁石は熱されると減磁してしまい、常磁性体に変わってしまうため、一般的に常磁性体ではエネルギーを集めることができないと考えられていた。
今回、同研究グループは、磁石ではないが、磁束を伝えるパラマグノンと呼ばれる小さな粒子に着目し、LiドープMnTeの熱電効果を測定したところ、特に3%リチウム添加には900Kまで、十分な熱エネルギー変換効率が得られたという。
この発見により、従来よりも多くの電気エネルギーを熱から作り出すことができるはずだという。これは、自動車の排気装置、惑星間宇宙探査機、産業プロセスなどにおける、熱からのより効率的なエネルギー生成を可能にするかもしれない。
(fabcross for エンジニアより転載)