特別企画
『魔改造ロボット掃除機大相撲バトルロワイアル —fabcross杯—』
個人のものづくりを応援するfabcrossが、ロボット開発者やデザイナーなど、個人で活躍するクリエイターを集め、ロボット掃除機をベースにつくった相撲ロボットの大会を開催。クリエイターネットワーク「ponpoko」の番組レーベル「ぽんぽこステーション」によって映像化されました。各チームのユニークなアイデアにあふれた機体が火花を散らします。
「あらゆる物品について、本来の機能とは関係のない部分を過剰に改造する」ことを「魔改造」と呼びます。本記事では、映像内で実際に戦った魔改造ロボット掃除機や、開発者のコメントをご紹介。
どれもとがった見た目のロボットばかりですが、高専ロボコンやロボット相撲で優勝経験があるロボット開発のプロ、そしてネットで話題の旬なクリエイター達が本気で魔改造したものです。
なお、本大会で使用されたロボット掃除機は、学研「大人の科学Vol.33」の付録。なんと学研様にご承諾を得た公認企画となりました!
fabcross杯ルール
【概要】
学研「大人の科学Vol.33」の付録、卓上ロボット掃除機を魔改造して決闘してもらいます。
【バトルルール】
・50cm×80cmの机の両端から掃除機を放つ。
・敵を机から落とす、もしくは行動不能にすることで勝利!
・いつまでも決着がつかなかったらロボットではなく人間が相撲で対決。
・見た目がイイものは審査員特別賞として Julie賞!
・優勝者には秘密の景品が!
【改造ルール】
・改造費用は1万円までfabcrossが支給。自腹であれば、それ以上の改造も自由。
・横幅は直径18cm以内に収める。
・掃除機としてのゴミ吸引機構は残す。
・飛び道具、火薬を使った武器は危険なため NG。
・キットそのままの外見は NG
(派手な外見、マガマガしい武器を装備するなどの改造を推奨)
・リモコンでコントロールする場合は無線であること。
参加者プロフィール
チームスケルトニクス
チームは沖縄高専の出身者により構成されている。在学時に高専ロボコンに参加しており、開校5年目、他校と比べ30年以上の圧倒的歴史の差がある中で全国優勝を果たしている。
当時製作した恐竜型の二足歩行ロボットは、リンク機構を駆使することで自然な二足歩行を実現していた。
このとき習得した機構設計技術がスケルトニクス開発の土台となり、巨大ロボットに乗りたいという夢を実現するためにスケルトニクスの開発がスタートした。
現在はより多くの人に巨大ロボットに乗ってもらうためにプロジェクトを事業化し、特にエンターテイメント分野を中心に活動している。
http://skeletonics.com/
【機体名】
ル○バの動く城
[改造コンセプト]
「Julie賞ではなく優勝を取りにいく」
fabcross杯のルールを読み込み、対戦相手一覧からどのようなマシンが強敵になるか予想を立てた。今回、相撲による勝負ということで、相手を押す力、つまり“摩擦”と“重量”が効いてくると分析。前者に関してはノウハウが少なかったため、後者の“重量”を重視することにした。相撲ロボットコンテストのマシン重量を調査し、その2倍にあたる6kgのおもりを搭載した。
[強さのポイント]
部品点数の少ないシンプルな車体構成と、確実に動作する回路構成。
[印象に残った敵機体]
吉岡謙さん。試合前の慎重なセッティングはプロの空気を感じた。
[感想]
勝負にこだわるロボコンを経験していたため、負けたらすごく悔しくなることはわかっていたので、優勝して安心した。優勝賞品は保管しております。
森翔太
パフォーマー/俳優/映像作家。1983年生まれ。
舞台出演、映像制作、自主公演などさまざまなパフォーマンスを行う。
映画「タクシードライバー」にインスパイアされて制作したガジェット「仕込みiPhone」の動画が、MakeやGizmodoなどのブログメディアに掲載されたことにより、YouTubeにて約280万再生、国内外のテレビメディアで取り上げられた。
映像作家として2013年、□□□(クチロロ)「ふたりは恋人」のMV監督、国際リニアコライダー九州招致目的の映像「ILC脊振ハイスクール!」(W監督:古屋蔵人)、GAINAX企画による「Poke交換日記 —SF100景—」の監督を務めた。現在CM「Gクラスター」に出演中。
https://twitter.com/morisatoh
【機体名】
祭り
[改造コンセプト]
「和」
風車や東京スカイツリーのミニチュア、お立ち台で回るキューピーなどを使うことにより、日本的な「和」の精神をもった機体にしようとした。戦うことももちろんだが、それ以前に観る人を楽しませることを意識した。卓上ロボット掃除機自体には改造はなく、あくまでも自動操縦。風車を随所に使った理由は「風の吹くままに」という意味合いもある。
[強さのポイント]
相手を翻弄(ほんろう)すること。特に、リモコンを操る相手に予想できない動きをすることで、有利になるとも思った。
[印象に残った敵機体]
チームスケルトニクス。卓上ロボット掃除機を上につけているが、ダクトを下につけることで、本来の吸引機能もちゃんと生かしたという点。見た目的にも、階層になっていて、どこか九龍城を思わせてかっこいい!
[感想]
小型卓上ロボット掃除機同士の対決の白熱具合が、想像を超えていました。特にチームスケルトニクスと吉岡さんの重量対決や、ニコラ、チームバードウオッチング・森の、軽妙ながらも想像のつかなさは、全体的に勝者が予想できなくわくわくしました。
正直、半数以上がちゃんと操縦機能を搭載していて、自動操縦の(というか卓上ロボット掃除機自体を全く改造していない)自分は「まずい……」と思い、戦い直前まで「装飾で勝負するしかない」とデコレーションに力をそそぎました。終わってみて思うのは、「音」にこだわればよかったと後悔しています。
もし第2回大会が今後あれば、スピーカーをつけて、カラオケ機能を搭載してひたすら卓上ロボット掃除機の横で熱唱したいと思っています。
吉岡謙
過去のロボット相撲大会にて10kg級デモストレーションにて優勝。第16回、および第25回の全日本ロボット相撲大会 関東大会にて優勝し、2004、05年には、書籍「必勝!ラジコン型相撲ロボット製作テクニック」を執筆、オーム社から刊行。
[機体名]
「DKRS-1」
[改造コンセプト]
「製作費用とかける工数を最小限にした、機動性の高い機体」
土俵のサイズより、操作に最適な機動性をも確保した機体である。製作にかけられた時間が2日間、予算が1万円というくくりがあったため、工数をなるべくかけず製作出来るよう全体の構成案を考えた。掃除機ロボをRC操作にしたほうが有利に展開できるため、まずは安価なトイラジコンを改造しRC化を行った。
また、駆動系が弱いため、ギヤードモータを採用し駆動系の強化を図った。通常のギヤードモータは1個につき値段が5000円前後するが、秋葉原のガード下で1個1000円で販売されていたため、これを活用し全体を組み上げた。
また、駆動輪への荷重を増やすため、鉛のおもりを搭載。相手の下をすくいあげる工夫として、焼き入れ鋼板でブレード状のものを製作しサイズ内に収めるよう搭載している。外観デザインについては、大会開催時がちょうどハロウィンの時期だったのでハロウィンのぬいぐるみを載せてみた。
[印象に残った敵の機体と理由]
鳥地獄。忘れたくても忘れない。なぜ地獄なのか名前が印象に残った。
[感想]
ロボット相撲の全国大会前に土俵の上で対戦するという久々の緊張感が味わえて良かったです。
ニコラ (Nicolas Sordello)
パリ出身。日本とフランスで活躍するマルチタスクビジュアルデザイナー。Webサイト、雑誌、インスタレーション、Tシャツのデザインなど幅広い分野で制作を行っている。
http://www.sordello.net/
【機体名】
Moving Chili Pepper
[改造コンセプト]
「戦わないロボット」
戦争は嫌いで平和のほうが好きなため、敵機体を倒さないロボットを考えた。でも鉢が重いから強いと思う。
[印象に残った敵機体]
全部めちゃ凄いねと感じた。
[感想]
とても面白かった。全員に感謝。
チームバードウォッチング協会(市原えつこ&藤野裕之)
市原えつこ
インタラクションデザイナー、夜の研究者。男根崇拝、秘宝館、スピリチュアルブームなど、日本の奇妙な文化にテクノロジーを掛け合わせてデフォルメする活動を行う。妄想の産物として、大根が艶かしく喘ぐデバイス「セクハラ・インターフェース」や、Webに散らばる煩悩を脳波祈祷で鎮める神社「@micoWall」などがある。
http://etsukoichihara.tumblr.com/
藤野裕之
フリーランスのロボットクリエイター。行政に参画する一方で、ロボットクリエイタコース講師として高校生への教育も行う。川崎市産業振興財団かわさきロボット競技大会 20 周年記念事業推進委員に就任。「ロボット技術検定」立ち上げにも携わる。
【機体名】
鳥地獄
[改造コンセプト]
「暴れ鳥」
かわいい鳥が凶暴かつ縦横無尽に動き回る様を再現。暴れ馬ならぬ暴れ鳥を生産したかった。
[強さのポイント]
無線操縦による機敏さと、遠心力を利用した鳥アタック。「必勝」の力強い言葉による鳥のメンタルコントロール。
[印象に残った敵機体]
ル○バの動く城。勝負のルールを理解して、確実に勝つための方法を徹底的に実現したのが凄い。(今回だとパワーと重力)あとはニコラさんの平和すぎるロボット。本人のキャラと相乗して、脱力感が逆に最強だった。
[感想]
相撲バトルが予想以上に楽しく、そして敗退したのが予想以上に悔しかった。後、鳥地獄の地獄ぶりをさらに拡張する魔改造をしたい。キマイラを作ろうと決意した。
司会/コメンテーター
井下好井
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ。2006年11月結成。共に大阪府枚方市出身。略称「いのよし」。芸人がさまざまなことにチャレンジするサイト「彩りの間」からゲスト参加。
http://irodorinoma.com/
Julie Watai
アイドルとして活動した後、24歳で単身イタリアに渡り、イタリアの美術書籍出版社DRAGO社からフォトグラファーとして「SAMURAI GIRL」(2006年)を出版。NYのMOMAにも置かれるなど世界で累計120万部を売り上げる。
帰国後も、カラフルポップなCG加工が高評価を受け、フォトグラファーとしての活動をしながら、「天野あい」名義でタレントとしても活動を始める。mishmash*JulieWataiとしての音楽活動や、iPhoneアプリの開発に携わるなど活動は多岐にわたる。アキバ系クリエイターとしてオタク文化への功績は評価が高い。
http://juliewatai.com/