夏休み突入! 子ども向けワークショップ運営で気をつけるべき3つのこと
皆さんこんにちは、やじまかすみです。7月も下旬になり、もう夏がやってきましたね。夏といえば……そう、ワークショップシーズンです!
私は受託案件などでものづくりをしている傍ら、電子工作のワークショップ講師をすることや、主宰している乙女電芸部でもワークショップをたくさん開催しています。主な対象年齢は小学校1~6年生で、LEDを使った光るアクセサリー作りや、振動モーターを使って動く生きものを作るワークショップなど、電子工作の第一歩を踏み出せるような内容を教えています。
2016年は延べ65回、663人に向けてワークショップを行いました(60分以上の長時間ワークショップのみ)。そんな私が子ども向けワークショップに関して気を付けていることを以下にまとめました。これからワークショップを開く方の参考になれば幸いです!
※今回はワークショップ時のオペレーションにスポットを当てています。会場探しや集客、イベント後のフォローなどワークショップ前後のことに関しては触れません。
子ども向けワークショップで重要な3つのこと
- ファシリテーション
- 道具への配慮
- 子どもの意思を徹底して尊重すること
上記が私の考える子ども向けワークショップでの重要なポイントです。それぞれを具体的に説明していきます。
1. ファシリテーション
ファシリテーターとは
ワークショップは授業ではなく、参加者が主体的に動いたり考えたりすることで、経験を持ち帰ってもらうものです。
そのため、ワークショップ講師は先生になってはいけません。あくまで参加者と同じ目線に立つことが必要です。
ワークショップの講師はしばしばファシリテーターと呼ばれます。英語でfacilitateは「容易にする・促進する」などの意味がありますが、ファシリテーターはいわばワークショップを導く人という感じでしょうか。参加者それぞれに目を向けて、みんなが今何を考えているか、何につまずいているかを観察して考えながら、ヒントを与えることもあれば、参加者の反応によって時にはワークショップ内容をガラリと変えることもあります。
ワークショップに正解はない
ワークショップに慣れていないお子さんは、つい学校の授業と同じように、どこか緊張して参加していることが多くあります。発言を求めると何もしゃべれなくなってしまったりすることも。そのため、ワークショップは学校の授業とは違うんだよ! 質問に正解はないし、思っていることをなんでも話して良いんだよ! ということを感じてもらわなければなりません。
ファシリテーターは、気軽に感じてもらうための空間作りはもちろん、子どもの緊張を取り払う話し方や態度をとることが必要です。友達感覚で接してもらえるように、子どもたちと同じ名札をしたり、ワークショップ開始前に子どもたちと雑談をしたりします。空間作りに関しては後述します。
スライドには「今やるべきこと」しか書かない
ワークショップをデザインするときには、タイムラインを書いて、そのとき学んでほしいポイント、気づいてほしい事柄を書き出します。
スライドを作るときも、細かいポイントについて書きたくなってしまうのですが、手を動かすときには、お子さんが集中できるように一言しか書かないようにしています。
何かものを触ったり、考えをめぐらせてしまうと、「今なんの時間だっけ?」と分からなくなる子は少なくありません。そのため、「今やるべきこと」を常にスライドに一言で表示するようにしています。
2. 道具への配慮
安全性の担保
ワークショップで一番重要なことは、なんといっても安全に行うことです。
特に普段使い慣れない道具を子どもに持ってもらうときには、注意が必要です。アシスタントのファシリテーターを付けたり、道具の専門スタッフを付けたりします。また、乙女電芸部では「おゆまる」というお湯で柔らかくなる樹脂を使うこともよくあるので、その際は小さな子が近づかないように鍋の場所を周知するようにしています。グルーガンなどを使う際は、もしやけどしてしまっても大事に至らないように保冷剤ややけど薬を用意しています。
大きく身体を動かすワークショップなど、けがの危険性が高いワークショップを開催する場合はレクリエーション保険を組むのも良いと思います。
イベント内のけがに対する傷害保険や賠償責任保険がかけられます。イベントの参加人数や内容によって金額が決まります。
年齢と使える道具
ワークショップの対象年齢を考えるときは、必ず使用する道具を念頭に置きます。
「はさみ」は多くのワークショップで使われる道具だと思いますが、子どもにとっては扱うのが難しい道具です。幼稚園や家庭でたくさん練習をしていて、低年齢でも慣れている子はいるのですが、小学校低学年でも苦手な子は多くいます。そのためはさみを全員に配るようなワークショップでは、募集を小学校3年生以上にするなどしています。
また、私が行うワークショップは、道具が使えるようになることに重きを置いているわけではないので、部品を最初からレーザーカッターで切っておいて、道具を使う必要がないように準備しておくこともあります。
楽しそうな空間づくり
「ワークショップに正解はない」でも触れましたが、子どもが気軽に発想してもらえるような空間作りはとても重要です。
座席の配置などはもちろん、使う道具や素材は子どもが楽しくなるような色使いのものを並べます。紙とペンも白い紙と鉛筆ではなく、カラフルな付せんとカラーペンを用意して、スケッチを書くのが苦手な子には色とりどりの素材を見せて発想してもらうと、スムーズにものづくりが進みます。
子どもの目への刺激
私が行うワークショップは、60分や90分と学校の授業に比べると長いものが多いです。前半では、その日使う電子部品や技術について説明し、後半でそれを使って作品を作ってもらいます。説明だけだとどうしても飽きてしまうので、お子さんの目に刺激を与えるような実験器具を用意しています。LEDについての話なら、ルーペでLEDディスプレイを覗いてみたり、振動モーターについての話だったら、モーターと重りで振動モーターをその場で作ってみたり。眠そうだった子の顔が一気に明るくなります。
3. 子どもの意思を徹底して尊重すること
子どもが何を達成したいのかを寄り添って考える
作るものやテーマは与えますが、ゴールは子どもが設定します。
スケッチにしたり、言語化してくれる子もいますが、多くの子はものづくりしているうちにゴールが変わっていったり、自分でも訳が分からないままものづくりが進んでいったりします。あまりに発散している子や、手が止まっている子にはアドバイスをするのですが、その際に、その子が何を達成したいと思っているのかを表情や会話から察知して、一緒に考えていきます。
嫌なことやこだわりに気づく
一緒に考えても、子どもの意思に反したアドバイスをしてしまうことがあります。
あるとき小学3年生の女の子を泣かせてしまったことがあります。私のアドバイスが彼女の達成したいことをねじ曲げるものだったからです。泣いている状態でなぜそれが嫌なのかを聞き出し、達成したいことは変えないまま実現方法を変えるアドバイスをしたところ、ピタッと泣き止みました。子どものこだわりは徹底的に尊重すべきです。
以上が私が子ども向けワークショップをするときに気を付けていることです。たくさんのワークショップを経験して気付いてきたポイントがほとんどなので、今後また変わっていくかもしれません。ワークショップ内容のデザインについてはあまり触れていないので、内容の組み立ての参考にはならないと思いますが、運営の参考にしていただければ幸いです!
お知らせ
そして、この夏も子ども向けワークショップをたくさん開催予定です!
かわいいものを作っていたら、いつの間にか電子工作を学んでいた! というラインアップになっております。是非お越しください。
Maker Faire Tokyo 2017でのワークショップは大人の方にもご参加いただけます。
ご興味のある方は是非お越しください。