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Makerなら買わずに作れ! ハンドスピナーを自作してみよう

今年、2017年は異常にハンドスピナーが流行した。ネット通販から100均ショップ、祭りのテキ屋に至るまで、あらゆる場所でハンドスピナーが売られるようになった。ついにはベアリングメーカーが本気のやつを開発するなど、大人げない勢いで広がっている。これだけブームになってるんだから、既製品を買うのではなく、自作してみるのはどうだろうか。

ということで、今回自作ハンドスピナーに挑戦してもらったのは日本が誇るハードウェア・コワーキングスペース「DMM.make AKIBA」でテックスタッフとして働く椎谷さんと小泉さん。

メカ設計エンジニアの経験を生かして.make初期からテックスタッフとして活躍する椎谷さん(左)と大学生のころからロボット開発をたしなみ、部品メーカーで設計開発に携わったのちに最近入社したばかりという小泉さん(右)。二人とも多忙なお仕事の合間を縫って制作してくれた メカ設計エンジニアの経験を生かして.make初期からテックスタッフとして活躍する椎谷さん(左)と大学生のころからロボット開発をたしなみ、部品メーカーで設計開発に携わったのちに最近入社したばかりという小泉さん(右)。二人とも多忙なお仕事の合間を縫って制作してくれた

fabcross読者が唸る自作ハンドスピナーを作ってほしいというリクエストに応えてくれただけあって、オファーする前からハンドスピナーを買うだけでなく改造して遊ぶという強者だ。

椎谷さん「もともとハンドスピナーの中にあったベアリングをAliexpressで買ったセラミックベアリングに入れ替えたり、重りを真ちゅう削り出しのものに替えて、より重くしたりとか流行りはじめの頃にやってましたね。どれも割とありがちなネタですけど」

ありがち具合が伝わっているかどうか心配だが、既製品で全く満足していないところはさすがですね。それではさっそくハンドスピナーを見せてください!

※Aliexpress:中国の通販最大手アリババが運営する海外向けECサイト

残像で文字が浮かび出る! 光るハンドスピナー

椎谷さんが制作したのは既製品のハンドスピナーを改造し、残像で任意の文字が浮かび出るハンドスピナー

3つある羽根の中に、LEDと磁気センサーをはんだ付けしたマイコンボードとバッテリーをはめ込んでいる。中央から少し出っ張っているように見えるのは磁石で、1周するごとに磁気をセンサーが感知。1周当たりの秒数を基に、プログラムがあらかじめ登録しておいた画像を順繰りに表示する。

早い話がこういうことである。LEDの光を使って文字を描写する手法で、Persistent Of Vision(残像)とも呼ばれている 早い話がこういうことである。LEDの光を使って文字を描写する手法で、Persistent Of Vision(残像)とも呼ばれている

椎谷さん「磁気センサーは非接触で回転を検知するときに使う一番初歩的な方法です。マイコンの処理も複雑なことはやってなくて、すでに似たようなものを作っている人はたくさんいるので、参考になる情報も検索すればたくさん出てきますよ」

基板の設計図面。限られたスペースにギリギリ収まるサイズで設計されている。マイコンチップにはArduinoとの互換性がある「ATtiny」を採用。 基板の設計図面。限られたスペースにギリギリ収まるサイズで設計されている。マイコンチップにはArduinoとの互換性がある「ATtiny」を採用。
基板はDMM.make内の機材を使って製造、加工する。 基板はDMM.make内の機材を使って製造、加工する。

一番難しかった点は限られたスペースに基板やバッテリーを収めること。とくにはんだ付けは相当な高難易度。

椎谷さん「ボタン電池のホルダーもそのまま使うと収まらないので、かなり加工して収まるようにしてます。基板の実装も、もともと機械で実装することを前提にしているものを手で載せるというのは慣れていない人には難しいかもしれません。

バッテリーもなるべく薄くてマイコンが動くものということで、ボタン電池のCR2032にして、表面側に部品を固め、裏側は電池だけで機能するようにしています」

苦労のかいが伺える基板 苦労のかいが伺える基板

一度はやってみたい? 削り出しハンドスピナーの世界へようこそ

一方、小泉さんはメカニカルなハンドスピナーを制作。

名付けて「飛び出すスピナー」
真ちゅう製の部品を二枚のアルミ板で挟んだハンドスピナーで、回転すると中から真ちゅうのパーツが露出する。

ほら、飛び出す! 内側の真ちゅうと外側のアルミと色が違うので、回転した時に内側が露出していることが分かりやすい。 ほら、飛び出す! 内側の真ちゅうと外側のアルミと色が違うので、回転した時に内側が露出していることが分かりやすい。

飛び出す瞬間をスローモーションで見てみると……。

確かに回転と同時に真ちゅうのパーツが出ている。

小泉さん「遠心力で変形する『遠心ガバナー機構』を使っています。割といろいろなものに使われている機構で、スクーターのクラッチや一昔前の車のエンジンにも使われています。遠心力で外に出ようとする力と、スプリングなどを使って内側へ引っ張る力がうまくバランスを取って回転を安定させたいときに使われています」

制作過程はFusion360でデータを設計し、それを卓上CNC「kitmill」で5時間ほどかけて切削した。見た瞬間「でも、お高いんでしょ」と言いたくなるが、簡単に手に入る素材とファブ施設で使える機材で仕上げている。

実はこのハンドスピナー、この仕様に行き着くまでには紆余曲折があったとか。

小泉さん「遠心ガバナー機構を使うことは最初から考えていたのですが、まず原理試作ということでアクリル板をレーザーカッターでカットして作ったのがこれです」

完成形とはかなり違う見た目ですね。

小泉さん「金属をCNCで削ると時間がかかってしまうので、アクリルとレーザーカッターを使うことで加工時間を短くし、仕様をある程度固めてから金属で加工しました」

ここから金属の重さを再現するため、スチールボールを埋め込んだものを作り、内側の機構がうまく動作するか検証した。

小泉さん「当初は外側が開いて中身が出てくるものを目指したんですけど、回転している最中は開いたかどうかわからないという問題に気づき、外側は動かずに中身が出る仕様に変えました」

一番の難所は加工と組立時の精度。どちらかの精度が悪いと回転時にうまく真ちゅうが露出しない。

小泉さん「金属の厚みが少しでもずれると、うまくスライドしないし、加工の段階でもベアリングがきれいに収まるよう、トライ&エラーを繰り返しながら加工していました。この企画のおかげでプラスマイナス100分の2ミリの誤差で加工できるようになりました(笑)」

材料費は驚きの安さ。お金をかけずにアイデアと技術で勝負

いずれもエンジニアの技術力の詰まったハンドスピナー。さぞかし材料費のほうも高いんでしょうと思われがちだが、実は2つともおこづかいレベルの安さ。

光るハンドスピナーは400円のハンドスピナーに200円のマイコンチップと50円程度のセンサーを使っている。その他、細々としたパーツを組み合わせても1000円前後。一方、飛び出すハンドスピナーはアルミ、真ちゅう、ベアリング全部ひっくるめても500円以下だ。

今回は日本にあるファブ施設の中でも、最も機材が充実しているDMM.make AKIBAで制作したが、レーザーカッターやはんだごて、kitmillのようなCNCは小規模なファブ施設でも使えるところは多い。

既にネット上には100均で買えるものだけで作るハンドスピナーや、作り方を紹介する動画もたくさん公開されているので、ぜひ参考にしてほしい。

撮影中、それぞれのハンドスピナーの回転をチェックする二人。ハンドスピナーを回すとき、人は無言になる。 撮影中、それぞれのハンドスピナーの回転をチェックする二人。ハンドスピナーを回すとき、人は無言になる。
制作・取材協力:DMM.make AKIBA

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