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自宅で金属3Dプリント”ぽい”ことができるようになった

3Dプリンターはここ数年で低価格化などが進んでいる。ものづくりが好きな人やフィギュアなどの模型を作るfabcross読者の中には、自宅に3Dプリンターを所有している人も多いだろう。中には私のように個人で用途別に2台3台と複数台の3Dプリンターを所有しているような人もいるかもしれない。

ただ、金属の3Dプリンターとなると産業用の3Dプリンターの中でも、まだまだ高額な機材だ。個人でも購入できる低価格の光造形3Dプリンターの中には、鋳造用のワックス素材を出力することができるものもあるが、主にシルバーやゴールドなどのジュエリーに特化したものだ。

そんな中、FLASHFORGEの「Adventurer3X」は本体価格が8万9000円(税別)ながら、金属フィラメントを出力可能な、日本限定販売の3Dプリンターだ。

金属フィラメントで出力した造形物は金属そのものではないが、後述する後工程で焼結することで実際の金属になる。今回はこの金属フィラメントをAdventurer3Xで出力して焼結までの流れの体験をレビューしていきたい。

3Dプリンターと金属フィラメントの概要

Adventurer3と比べて筐体が全部ブラックに! Adventurer3と比べて筐体が全部ブラックに!

3DプリンターはFLASHFORGEの「Adventurer3」の後続機であるAdventurer3Xであるが、こちらはAdventurer3の外装をブラックに変更し、新しくカーボン製のプラットフォームを搭載している。

左:通常のプラットフォーム 右:カーボンプラットフォーム 左:通常のプラットフォーム 右:カーボンプラットフォーム

Adventurer3とハードウェア上のスペックの差はあまりないものの、保証期間が1年から2年に延びているのでより安心して長く使える3Dプリンターだろう。

これが出力した金属フィラメントだが、ラベルがABSになっているのはサンプルで提供いただいたからだと思う。 これが出力した金属フィラメントだが、ラベルがABSになっているのはサンプルで提供いただいたからだと思う。

使用した金属フィラメントに使われている金属はステンレス316Lで、耐食性に優れていて金属のアレルギーなどが出にくいとされ、医療用工具などにも使用されている。焼結前のフィラメント、造形物の状態ではステンレス316Lのほかにバインダーなどが含まれているため、色はグレーで光沢感などはない。

金属フィラメントを3Dプリントしてみよう

それでは金属フィラメントで実際にいくつかのモデルの出力を行っていく。金属フィラメントは通常のPLAやABSとは違う、モデル作成や出力にあたって気をつけなければならないことが2点ある。

(1)作成するモデルの条件を確認する。
(2)出力時にパラメーター設定、スケールをする。

中身が完全に詰まった設定なので出力には時間がかかる。 中身が完全に詰まった設定なので出力には時間がかかる。

(1)の作成するモデルの条件だが、プリンターで造形可能な最大サイズとは異なり50~100mm角である。これは後工程の脱脂や焼結の機材に依存する条件なのだろう。また、サポートが付けられない形状や、肉厚5mm以上などの推奨形状などが指定されていて、これらの条件(詳細は金属フィラメントのページへ)に注意してモデル作成を行う必要がある。

(2)の出力時のパラメーター設定などだが、後工程の脱脂と焼結で造形物が収縮してしまうので、スライサー上でXY軸方向に16.5%拡大、Z軸方向に20.5%拡大しなければいけない。また、金属フィラメント専用の出力条件のパラメーターはフィラメント購入後にFLASHFORGEから案内があり、この条件で出力する必要がある。

指定の出力条件で金属フィラメントを出力してみると、内側が詰まった密度の高い状態で出力されているのが分かる。ABSやPLAなどは造形物の充填率を下げて軽く出力することが多いのだが、金属フィラメントは100%内部を埋めないといけないようである。

  左:収縮分を考慮して拡大出力した金属フィラメントモデル 右:実寸で出力したPLAモデル 左:収縮分を考慮して拡大出力した金属フィラメントモデル 右:実寸で出力したPLAモデル

出力後はFLASHFORGE の販売代理店であるApple Treeの脱脂・焼結サービス窓口へ送る。今回はサービス開始以前に試したので直接郵送したが、実際に利用する際には事前に造形物の画像を送り見積もりなどを取る必要がある。

造形物の送付から焼結したものが返送されるまでには約1カ月待った。サービスのWebページにはコロナの影響で遅延する場合があると注意書きがあるものの1カ月以内とあるので、サービスが安定すれば到着時間の短縮は期待できそうだ。

金属プリントがついに完了!!

焼結が終わって返送されてきた造形物がこれだ。サイズはひと回り小さくなり、色はグレーに変化している。中身は詰まっているのでずっしりとした重みを感じる。

表面がマットなので光沢はないのだが、磨くと金属光沢が現れる。ただし、3Dプリント特有の積層跡を消すためには、段差がなくなるまでしっかりと磨く必要がある。そのため入り組んだ形状が多い造形物では、完全にきれいに磨くのはかなり根気がいる作業になるだろう。

作ったものをちょっと使ってみる

今回作成したのは仏像と、エレベーターを非接触で使うグッズのパーツだ。仏像は使うと言っても飾ることしかできないので飾ってみる。

観葉植物の鉢に置いてみるとかわいい 観葉植物の鉢に置いてみるとかわいい

もう1つの非接触グッズはエレベーターのボタンなどを直接触れずに押せるグッズなのだが、別に用意している3Dプリントパーツと100円ライターと組み合わせて完成する。出力した金属パーツでエレベーターのボタンを押して、ライターの火で接触した箇所を加熱殺菌をするようなツールだ。これさえあれば直接エレベーターのボタンを触ることもなく、ツール自体も都度殺菌されるので常に安全に持ち運ぶことができる。

火であぶられているところが出力した金属パーツ 火であぶられているところが出力した金属パーツ

個人で金属フィラメント使うには……

現在のところWebサイトでは、販売/サービスの提供は法人のみとなっている。そして金属フィラメントが3万3000円(税別)、脱脂/焼結サービスが1回あたり8万5000円(税別)という価格だ。個人向けの展開に関しても予定していると記載があるが、個人だと気軽に頼める価格ではなさそうだ。個人向けサービス開始時にはランニングコストも下がっていることを期待したい。

後工程はサービスに任せることになるとはいえ、実際にステンレスの造型物をデスクトップ3Dプリンターで出力できる経験は新しく、これまでの産業用の3Dプリンターを使ったものに比べいくらか手軽になった。金属フィラメント出力前にABSやPLAのフィラメントで同じ3Dモデルを出力して形状確認をすれば、費用を抑えながら試作と本番で形状はほぼ同じ物に仕上げることができる。例えば繰り返し金属パーツの試作を行うような事業者などには、初期費用を抑えて金属3Dプリントを導入することができて良いのではないだろうか。

かなりチャレンジな商品/サービスのAdventurer3Xと金属フィラメントではあったが、直近では透明の筐体の「Adventurer3s」や乾燥剤を発売するなど面白い商品を出し続けているFLASHFORGEを、今後もチェックしていきたい。

取材協力:FLASHFORGE、APPLE TREE

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