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「作る人をつなぐ場所を目指して」——地域に根ざした共同工房「もくもくはりねずみ」(東京都文京区)

日本全国のfabスペースを紹介するfabなび。今回は東京都文京区の「もくもくはりねずみ」を紹介する。

共同運営の工房として2023年7月にスタート。翌年10月に現在の場所に移転し、多彩な工作活動をサポートしている。運営する私市瑞希(きさいちみずき)さんに、もくもくはりねずみのコンセプトや特徴、そして今後の展望について伺った。

都会でDIYを楽しむための拠点として

もくもくはりねずみの原点は、東京でのものづくりの難しさだった。私市さんは大学でデザインを専攻。学内に自由に使える工作機器があり、学外にはファブラボも整っている環境で学生時代を過ごした。卒業後に東京に転居し、近隣で気軽にものづくりができる環境がない不自由さを痛感したという。

自宅にガレージや制作環境を作る余裕はなく、ファブ施設に行くにも電車で移動が必要——生活圏に工房がない不便さを周囲に話してみると、同様の悩みを抱える人が多いことに気付いた。

もくもくはりねずみ代表の私市さん。自宅から通える文京区エリアに工房を立ち上げた。 もくもくはりねずみ代表の私市さん。自宅から通える文京区エリアに工房を立ち上げた。

そこで私市さんは、工房を欲していた近隣の知人たちや、エンジニアとして働く夫と共にもくもくはりねずみを2023年7月にオープンした。共同運営で家賃や経費を折半しつつ、イベントや外部利用で得た収入を分配する運営形態を採用。工房オープン後、共同オーナー以外の利用者も増え、スペースが手狭になったことから現在の場所に移転した。

「スペースが広くなった分、運営コストも上がったが、環境が充実したことで新しい取り組みができるようになった」と私市さんらは移転を機に、新たなイベントやサービスの企画を進めている。

利用者が有料で使えるレンタルボックススペース。自身の作品の展示や販売が可能。 利用者が有料で使えるレンタルボックススペース。自身の作品の展示や販売が可能。

子どもから大人まで、自由な工作ができる場

施設の利用者層は、小学生から大人まで幅広い。「近所の子どもたちがふらっと立ち寄ってペン立てを作ることもありますし、大人が趣味の制作やプロジェクトの試作に利用することもあります」(私市さん)

「時間に追われずに制作に集中してほしい」という思いから、利用料は1日1000円に設定。18歳以下の利用者が無料で使えるよう、利用料を寄付できる制度も設けられている。「ペイ・フォワードの仕組みを取り入れることで、ものづくりの裾野を広げたい」という私市さんの思いが込められている。 「時間に追われずに制作に集中してほしい」という思いから、利用料は1日1000円に設定。18歳以下の利用者が無料で使えるよう、利用料を寄付できる制度も設けられている。「ペイ・フォワードの仕組みを取り入れることで、ものづくりの裾野を広げたい」という私市さんの思いが込められている。

中でも人気の機材は、ハンディ型レーザー彫刻機「LaserPecker」だ。スマホアプリで簡単に操作でき、初心者でも気軽に使えるのが大きなメリットだという。施設内では鍋敷きやスプーンといった日用品から、アーティストが手がける作品まで、さまざまな制作が行われている。

取材当日は、もくもくはりねずみのワークショップ講師2人も作業中だった。春日順哉さんは定年退職後に出会った木の玩具に魅了され、木材を使ったワークショップの講師として活動している。この日は地域のイベントで使用するスマートボールを制作。「デジタルなゲームやおもちゃに慣れた子どもたちも夢中になる魅力が、アナログなゲームにはある」と語った。

ティム・クィリアンさんは2005年に来日。大手企業でビジネス英語やプレゼンテーションの講師として活動する傍ら、もくもくはりねずみでDIYのワークショップを開催している。木工スペースに置かれた機材の多くはティムさんが所有するものだ。ここでは会員同士が機材を共有し、教え合いながらそれぞれのものづくりを楽しんでいる。

ワークショップ講師の春日順哉さん(上)、ティム・クィリアンさん(下) ワークショップ講師の春日順哉さん(上)、ティム・クィリアンさん(下)

作る楽しさを共有するために

もくもくはりねずみの運営方針には、「作る人をつなぐ」という強い理念が込められている。「工作室は道具を通じて人々が交流する場所でもあります。子どもから大人まで、自由にものづくりに挑戦し、自分の手で作る喜びを体験してほしいですね」(私市さん)

また、地域とのつながりも重視しており、商店街のイベントや地域資源を活用した活動にも積極的だ。「地域の方々と連携しながら、ものづくりを身近に感じられる文化を広げていきたい」との言葉からは、私市さんの施設運営に対する情熱が伝わってくる。

もくもくはりねずみは、都心に住みながらものづくりをしたい人々が集う場であり、地域をものづくりでつなぐコミュニティとして、これからも進化を続けていくだろう。

移転に併せて新設したキッチンカウンター。飲食の間借り営業やシェアキッチンとして提供する予定。私市さんは「ものづくりに限らず新しい挑戦を応援したい」と語る。 移転に併せて新設したキッチンカウンター。飲食の間借り営業やシェアキッチンとして提供する予定。私市さんは「ものづくりに限らず新しい挑戦を応援したい」と語る。

概要

所在地 東京都文京区水道2-3-21 久保田マンションB1F
営業時間 詳しくはウェブサイトまで
URL https://mokuhari.com
料金 1日1000円 ※消耗品が発生する工具の利用は別途追加料金が必要

機材

3Dプリンター 「AnkerMake M5」 3Dプリンター 「AnkerMake M5」
レーザーカッター「Creality Falcon2」 レーザーカッター「Creality Falcon2」
レーザー彫刻機「LaserPecker 2」 レーザー彫刻機「LaserPecker 2」
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木工スペース(機材講習を受講の上で利用可能) 木工スペース(機材講習を受講の上で利用可能)

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