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STEM教育用マイコンボードmicro:bit v2の新機能を作例で紹介

マイクとスピーカーでバージョンアップ! micro:bitの進化が止まらない

イギリスのBBCが中心となって開発し2015年にイギリスの小学生に向けて無償配布が始まって以来、STEM教育用マイコンボードとしてスタンダードとなった感のある「micro:bit」の初めてのメジャーバージョンアップ版が、2020年11月末に日本で発売された。小学生でも手軽に扱える、安価で多機能なボードは新たな進化を遂げた。日本の正規代理店であるスイッチエデュケーションのCTO、宗村和則氏に具体的な作例を示してもらいながら、語ってもらった。

機能強化で使い勝手がアップ

教育用教材としてのmicro:bitの強みは、各種センサーや通信などさまざまな機能を持ちながら、価格が2000円ほどと比較的安価な点だ。子どもでも直感的に対応できるプログラミングソフトは、Webブラウザー上で動くのでネット環境も問わない。こういった従来の優れたポイントを押さえつつ、新バージョン「micro:bit v2」では、どんな点が変わったのだろうか?

——バージョン2といいながら、見た目は今までと変わらないように思うのですが……。

宗村:確かにオモテ面の形状は、大きくは違わないですね。下部のエッジコネクターに、ワニ口クリップなどを挟みやすいよう、わずかな切れ込みが入ったことぐらいでしょうか? ただ、ウラ面には新しい部品が載ってだいぶ変わりましたね。

オモテ面の比較。左が旧版、右が新版のmicro:bit v2。 オモテ面の比較。左が旧版、右が新版のmicro:bit v2。
ウラ面の比較。左が旧版、右がマイクとスピーカーの付いた新版。 ウラ面の比較。左が旧版、右がマイクとスピーカーの付いた新版。

——最も大きな変更点は何ですか?

宗村:スピーカーとマイクが付いた点ですね。スピーカーについては、発売当初から教育現場の要望が強かった機能です。光はオモテ面のLEDで扱えますが、音はパソコンから出すか、別のスピーカーなどと接続する必要がありました。付属スピーカーの音は大きくはありませんが、数人で聞くには十分です。ただ教室中に響かせるとなると別のスピーカーを使った方がいいかもしれません。

マイクについては、作例(後述)のような音をトリガーとした作品が作れるようになりました。音の入力を示す新たなLEDもオモテ面に追加されています。ただ残念ながら、マイクに入力した音を「保存して再生する」「同時に付属のスピーカーで出力する」といったことはできません。

——その他、v2で変わった点は何かありますか?

宗村:新機能ではないですが、タッチセンサーの使い勝手がずいぶんと良くなりました。旧版は抵抗式で、エッジコネクターとグラウンドを2本指などで同時にタッチすることが必要でした。micro:bit v2では、静電容量式も搭載して使えるようになり、1本指でタッチすれば検知します。抵抗式、静電容量式はブロックで 切り替えられます。また、オモテ面のmicro:bitロゴマークが、エッジコネクターと同じくタッチセンサーとして機能するようになりました。

——電源周りも変わったようですね?

宗村:ウラ面に電源のオン・オフを示すLEDが追加されました。また、給電した状態でも電気の消費を抑えることができるよう、スリープ機能も付きました。SDGsなど環境問題を扱うことが多い教育現場で、エネルギーの無駄を省く工夫がされていることは、大事なんじゃないでしょうか。

——プログラミングソフトであるMake Codeも変わったのですか?

宗村:micro:bit v2専用のブロックがいくつか追加されています。新ブロックは、やはりスピーカーやマイクに関するものが多いですね。音を検知するブロック、音量を判定するブロックなどは、新機能を使うにあたって子どもたちが迷わないよう改良されています。

スイッチエデュケーション・CTOの宗村和則氏。 スイッチエデュケーション・CTOの宗村和則氏。

プロトタイピングに使える可能性

——プロセッサー自体も新しくなったようですね

宗村:はい。「Nordic Semiconductor nRF51822」から「Nordic Semiconductor nRF52833」へと変更されて強力になっています。それに伴って、CPU周りの機器も変わりました。旧版では、1つのタイマー回路で「音を出す」信号、「サーボを動かす」信号を作っていました。そのため両方を同時に使うと、音を出した瞬間にサーボが小刻みに動くという現象が起きました。「プログラムは正しいのになぜサーボが変な動きをするのか」と混乱した人もいたと思います。

当時はスピーカーが付いていなかったので、同時に使うことは想定されていなかったのでしょう。今はタイマーが別系統になったので、音を出しながら自然にサーボを動かすということができるようになりました。

——教育用に開発されたmicro:bitですが、簡単なプロトタイピングに使われる場合もあります。その点で便利になったと思う点はありますか?

宗村:メモリーの容量が256kBから512kBに増えた分、プロトタイピングで大きなプログラムを動かす人には便利になったと思います。もちろん、普通の電子工作で使うには、従前の容量でも問題ありません。その他、使えるエッジコネクターのピンが1本増えたのも朗報ではないでしょうか。ピンは全部で25本ありますが、付属のLEDと共用でしたので、ピンによっては使うとLEDの表示がおかしくなるという現象がありました。いっぱいあるように見えて、フリーで使えるピンは実は少なかったんです。

micro:bit v2ではLEDの配線方式が変わって、1本だけですがフリーのピンが増えました。今まで「ピンが1本足りなくて、LEDと被っちゃうなあ」と思っていた人にとってはありがたい。僕自身も「これを拡張したいけどピンが1本足りないなあ」と思ったことは何回もあります。もちろん本格的なプロトタイピングには、Raspberry Piなどの方が有利です。ただRaspberry Piでは明らかにオーバースペックという場合もあります。micro:bitの今回のバージョンアップで、使える可能性は広がったと思います。

micro:bit v2ではGPIO専用端子が3本から4本に1本増えた。 micro:bit v2ではGPIO専用端子が3本から4本に1本増えた。

マイク機能を使った作例を紹介

micro:bit v2の新機能、マイクを使った2つの作品を例として宗村氏に作ってもらった。いずれも音をトリガーとしてサーボモーターを動かす仕様になっている。

<作例1>拍手で作動する自動スイッチ

宗村:最近はAIスピーカーなどを介して、音声で家電や照明を操作するスマートハウスも当たり前になってきました。micro:bitのマイクでは、音声の内容を判別するのは難しいのですが、音をトリガーとして利用することはできます。マイクで音を拾い、サーボモーターを動かして切り替える、簡易的な自動スイッチを作りました。

作り方はサーボモーターにネジで付属の軸を取付け、固定パーツで留めました。見栄えを考えて3Dプリンターで作りましたが、要は軸が動いたときにサーボ本体がズレなければいいので、テープで家庭のスイッチ部分に固定してもかまいません。配線には弊社のワークショップモジュールを使いました。ワークショップモジュールは電源とmicro:bit v2用の出力基板が一体化されているので、サーボモーターなどをつなぐとき、使い勝手がいいです。

スイッチエデュケーション製の「ワークショップモジュール」。 スイッチエデュケーション製の「ワークショップモジュール」。

宗村:パン、パンと連続して2回手を叩くとサーボモーターの軸がシーソーのように動き、スイッチを押します。1回目の拍手音から0.5秒以上1秒以内に2回目の拍手音がするとサーボモーターが動き、1回目の拍手音から1秒以上経過すると拍手カウントがリセットされるようプログラミングしてあります。2回連続して拍手するのは、1回だけだと誤動作の発生頻度が高すぎるためです。2回の音が決められたリズムで入力されるかどうかを判断することで、誤動作を減らしています。

家庭によってスイッチの形状もいろいろだと思います。形状に合わせ、サーボモーターの軸の動かし方を変えましょう。プログラム上はサーボモーター出力ブロックの角度を変えることで調整できます。
ポイントは家のスイッチ部分に取り付けるとき。サーボモーターの軸がスイッチの中心に重なるように固定することですね。

拍手で作動する自動スイッチ。 拍手で作動する自動スイッチ。
家庭のスイッチに取り付けて使う。 家庭のスイッチに取り付けて使う。

プログラムは以下の通りです。

<作例2>逃げる目覚まし時計

宗村:アラーム音が鳴ると枕元から逃げ出すユニークな目覚まし時計の装置です。作り方は、モーター付きギアボックスと前述のワークショップモジュールを固定パーツなどに取付け、目覚まし時計を載せるだけです。固定パーツは、どんな素材で作っても構いませんが、シャフトを通し、タイヤを取り付ける工夫が必要です。

逃げる目覚まし時計。 逃げる目覚まし時計。

プログラミングは以下の通りです。

宗村:設定したしきい値よりも大きいアラーム音が鳴ると、LEDのハートマークがつき、モーターが作動して目覚まし時計ごと直線的に逃げていきます。アイコンを点滅させたり、前進と停止を繰り返させたりなど、動きはいろいろアレンジできます。応用として、マイクに入力される音の大きさを調整し、いびきの回数を数えてくれる「いびきカウンター」なども作れるでしょう。

2つの作例で新機能の具体的な使い方をイメージしていただけただろうか? これだけの大きな変更がありながら、旧バージョンと同じ価格というのが驚異的だ。もともとmicro:bit教育財団は利益より普及を目的にこの事業を展開している。価格面の魅力は動かしがたく、慢性的な予算不足に悩む教育現場では特に有利だ。機能面も充実し、教育用マイコンボードとしてのスタンダードの地位は当面ゆるがないだろう。

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