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スニーカーを全シーズン対応に改造!「空冷&ヒータースニーカー」

ある夏の日、靴の中が暑いわ蒸れるわ、さらに靴を脱げばムワッと匂いが立ち上り…。「このままではまずい」と、靴にファンを付け風を送る、空冷PCならぬ空冷スニーカーを作ることを決意しました。さらに季節は巡り、冬の足冷え対策にヒーターも追加。モバイルバッテリーにつないで、夏はひえひえ冬はポカポカ、オールシーズン快適を目指してスニーカーを改造しました。

靴底から空気を送る靴を作る

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私は仕事中靴を履いているのですが、足が不快だと集中力が下がるんですよね。耐えられず休憩中に描いたのが上の絵です。

やることは単純。空気の通路を開けた特製の靴底を作り、靴の外側に取り付けたファンから送風します。送風路付きの靴底は柔らかいフィラメントを使い、3Dプリントで作成。靴のアッパーは市販のものをそのまま使います。扇風機に足を当てているような快適なシューズになりそうでは?

そして「サイバーパンクスニーカー」を裏テーマにします。空冷靴はファンやバッテリーを付けるのでゴツゴツしがち。それなら逆にゴツゴツをかっこよく見せてしまえ! 折しもNETFLIXで『サイバーパンク エッジランナーズ』というむちゃくちゃかっこいいアニメが配信され、サイバーパンクなデザインがマイブームに。未来っぽいイメージで作っていきたいと思います。

風の通り道付き靴底をモデリングする

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今回の肝である靴底をモデリングしていきます。靴の本体部分は既製品を使用するため、そのサイズと形状に合うように作る必要があります。靴底の写真をベースにしてモデリングしてみたものの、立体的でカーブもある形状なのでやはり靴底と本体にずれが出て隙間が空いてしまいました。そのため、靴を3Dスキャンし、そのモデルに添わせる形で3Dモデリングをしました。

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一度縮小版を作ってテストしてみました。靴の本体部分ともうまく合いそうです。靴底はサイズが大きく、またスピードを落として印刷する必要があるフレックスフィラメントを使うため、実寸での印刷は10時間以上かかります。縮小版で確認できる送風口の位置やかかとの形状などは実寸印刷前に修正しておきます。

TPUフィラメントで靴底を3Dプリントする

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さて、いよいよ実寸サイズで印刷します。が、その前に印刷のパラメーターを調整しておきます。今回はSainSmartのTPUフィラメントを使います。以前TPUフィラメントを利用した時は、サポートを剥がすのがとてもとても大変でした。サポートを取れやすくするために、サポートとモデルの隙間を大きくし、サポートの上の層を厚めに設定します。また、今回使うフィラメントは透明の蛍光イエローなので、より透け感が出るように調整します。温度が高いと気泡が入り透明度が下がるため、温度を低く設定し、さらに積層を厚くすることで透明感を上げます。SainSmartTPU用のデフォルト設定を利用した時に比べ、調整後は内部が透けて見えやすくなり、サポートも簡単に剥がせるようになりました。

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きれいに印刷できました(写真はサポートを剥がした後です)。が、全体にサポートを付けてしまい、送風路をふさいでしまうという痛恨の凡ミスをやらかしてました。送風路の中に付いてしまったサポートは外せない…。再度プリントし、靴底の送風口から息を吹き込むと、穴の開いたつま先部分に風を感じます。やった、勝利だ!

風がちゃんと出るかテストする

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ファンを取り付けてテストします。スイッチオンするとつま先からフワーっと空気が出てきます。強風とまではいきませんが、そよ風のような、柔らかいけれど確かに感じられる風です。初めはなかなかいい感じに風が出ず、試行錯誤しました。

初めに使った3cm角のラズパイ用ファンでは風量を全く感じられず、3Dプリンターによく使われる送風ノズルがあるタイプのファンに変更。また、風が出る穴の数を減らしたり、送風路を太くしたりと修正して、なんとか風を送れるようになりました。

のんびり作っていたら冬になってしまったのでヒーター機能も付ける

ところが修正しているうちに、足が蒸れてつらい季節が過ぎ、涼しさが感じられる季節になってしまいました。これでは使えないし記事にもできない! と慌て、寒い時期でも使えるようにいっそ全季節対応型にしよう、と追加機能を盛り込みます。なんといっても冬は足が冷えますからね。足裏を温めるヒーターフィルムを仕込みます。

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ヒーターフィルムは中敷きの下に敷くだけで簡単に使えるため、これからの季節に最適です。ただし、ただし、低温やけどの可能性もあるので長時間使わないように注意。

そしてヒーターを足したことで一点問題が。ヒーターフィルムもモバイルバッテリーで温められるのですが、ファン用のバッテリーではパワーが足りず動きません。が、ヒーターフィルムが使えるレベルのバッテリーは大きく、靴に付けるのは難しいしちょっと怖い。ポケットに別のモバイルバッテリーを入れて使うか、自席で電源につないで使うことにしました。

靴底を剥がしてパーツを組み立てる

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組み立て前にスニーカーの靴底を剥がしていきます。縫い目をほどいたのちにヒートガンで温めながらマイナスドライバーを使って剥がしました。合成皮革とポリウレタンと思われるこの白いスニーカー、靴底はぐにゃぐにゃになったものの、本体にはダメージなく靴底を剥がせました。

ちなみにこの方法、スニーカー愛好家たちの情報を参考にしています。古いスニーカーは靴底の一部が加水分解してしまうため、スニーカー愛好家は2つのスニーカーを使いソール交換をするそう。動画ではアッパーを使う靴をレシピエント、靴底を利用する靴をドナーと呼んでいました。今回はドナーがいないので、いわば人工臓器手術でしょうか。ただ、本番前に数百円の安いスニーカーで試したところ、本体部分が化学繊維だったため溶けて穴が開いてしまいました。実験で一足殺してしまった…。

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パーツ類がそろったら組み立てです。靴底を剥がしたスニーカー本体、ファン(約400円)、ヒーターフィルム(約1000円)、モバイルバッテリー(約2000円)、ベルトを用意しました。さらに靴底、バッテリーホルダー、ジョイントを3Dプリントしました。使用したフィラメントが大体1000円分くらいでしょうか。各パーツを接着し、縫い付けます。

完成! 暑くても寒くても足快適な近未来シューズ

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完成です! 暑いときにはモバイルバッテリーのボタンをオンすれば、蒸れた足先にファンが風を送って不快さを吹き飛ばし、足が冷えたら足首のコネクターを電源につなげば足がポカポカに(なるハズ)。近未来風スニーカーが出来上がりました。

ちゃんと暖かい&涼しいのか? 実際に履いてみよう

では実際に使ってみます。ちゃんと動いて私の足環境を良くしてくれるのか!? まず足を入れ、そのまま歩いてみると少しフワフワとした感触。靴底内部に空気が入っているので、エアクッションのようになっているのでしょう。普通の靴としては合格です。ただ、ヒーターを外で使おうとするとポケットからコードがプラプラしますが、そこはご愛敬。ひっかかりそうなのでヒーターは自席で座っている時専用かな。

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ではいよいよヒーターオン。電源につないで5分くらいで暖かくなってきます。15分後にはしっかり暖かくなり、足に少し汗をかくほどでした。温まった足を冷やすべく、すかさずファンをつけて風を送ります。靴下に遮られて裸足のように直接風を感じることはありませんが、ひやっとする感覚があります。汗が気化熱で冷えて涼しいです。

やった! どちらもしっかり働いています。とはいっても感覚だけでは分かりにくいですね。見て分かるように、サーモグラフィカメラを使ってみましょう。

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FLIRという、スマートフォンに装着して使える簡易型のサーモグラフィカメラを使います。自撮りをしてみると、肌が出ている部分は明るい黄色、眼鏡や髪は紫色になりました。しっかり温度が測れています。

サーモカメラで検証、暖め編

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左がヒーターをつけていない状態、右がヒーターをつけて10分後の様子です。ヒーター有りは明らかに暖かくなっています。一番差がある部分を比べると、ヒーターなしが19℃ほど、ヒーター有りが23℃ほどで4℃くらい差がありそうです。体感的にはもっと差がありました。おそらく靴の外側から映しているためで、靴の内側ではさらに差があるのではないでしょうか。

サーモカメラで検証、冷やす編

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次にファンの効果を見てみます。足を温めてから靴を履いて1枚目を撮影し(左)、ファンをつけて10分おいた後にもう1枚撮影しました(右)。風が送られているつま先部分は暗い色になり、温度が下がったように見えます。

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横から見てみると、ファンの回転部分だけが熱を発しているのが目立ちます。全体的にはファンを回している方が温度が低そうです。ただし、気温の影響で時間がたつとファンなしでも冷めてしまうため、きちんとした比較実験にはなっていないことをお許しください。

子どもの頃からの足の不快を工作で昇華できた

「足が蒸れて耐えられない!」から始まった今回のスニーカー改造、なかなかいい結果になったのではないでしょうか。水虫の不安におびえ、しもやけの痒みに耐える日々はもはや過去のものです。

ところで、実験中、ヒーターで温めて送風で冷やして…とサウナの交互浴のように繰り返していて、子どもの頃しもやけ対策でお湯と冷水に交互に足をつけるのを親にやらされたなぁと思い出し、懐かしい気持ちになりました。

お母さん。私、大人になって、お母さんがやってくれたあれができる靴を作れるようになりました。

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