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分解して学ぼう! Makerに人気な「リズミカルなくまさん」のヒミツ

イワヤより販売されているロングセラー商品「リズムだいすき こぐまのトンピー」。丸太の切り株に座ったかわいいこぐまのトンピーが、リズミカルに太鼓をたたいて笛を吹くおもちゃです。メーカー希望小売価格は2600円で、大手ECサイトやおもちゃ屋さんで購入できます。

(メーカーサイトより引用) (メーカーサイトより引用)

このトンピー、子供たちにはもちろんのこと、ものづくり界隈でも人気者です。MakerFaireに行くと、必ずと言って良いほどトンピーを改造した作品が出展されています。また、テレビ番組「魔改造の夜」(NHK)でも取り上げられていたことから、その人気はどんどん加速しています。

その人気の秘訣は、かわいい動きでリズミカルに太鼓をたたく、その様子がとても魅力的だからだと思います。でも、一体どうやって動いているのでしょうか? 複雑なカラクリ機構があるのか、専用のプログラミングがされているのか。トンピーを分解して学んでいきましょう。

動きのポイント

まずは分解前に動かして遊んで、そのポイントを押さえておきましょう。トンピーは、単三電池2本で動きます。アルカリ電池など一般的な乾電池の電圧が1.5V、ニッケル水素充電池などは1.2Vであることを考えると、直列2本で2.4V~3V駆動が想定されたおもちゃです。電池は丸太の切り株に装着します。

リズミカルな動きがかわいいですね。 リズミカルな動きがかわいいですね。

電圧が高いほど速く動き、電池が弱まり電圧が落ちると動きが遅くなります。これは、モーターに対する電源電圧を上げると回転数が上昇するためです。ミニ四駆が電圧を上げると速く走るのと同じ原理ですね。きっとトンピーの中にも、ミニ四駆と同じようなモーターが入っているのだと思います。

トンピーの動きのポイントは以下の通りです。

  • 笛の音が鳴る
  • 腕が動いて太鼓をたたく
  • 頭が前後に、体が左右に動く
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一つひとつは単調な動きですが、それらがうまく組み合わさって、リズミカルになっています。それでは、それぞれの動き、またその組み合わせのヒミツを暴いていきましょう。

分解①「丸太の切り株」

最初に分解すべき箇所を決めます。トンピーをよく観察すると、丸太の切り株の底面に、2個のネジがありました。どうやらこのネジを外すことで、トンピーから丸太の切り株を外せそうです。

ネジを緩め丸太の切り株を取り外すと、プラスとマイナスの端子が出現しました。配線色は赤がプラス、黒がマイナスです。このようにして、丸太の切り株電池ボックスの電源を、トンピーへ供給してあげていたんですね。

単純ですが面白い設計です。 単純ですが面白い設計です。

こういった配線は、安価なおもちゃだと直接はんだ付けをされていて、分離できるようになっていない印象でしたが、きっとこの仕組みの方が組み立てやすいのでしょう。

また、分離できるような設計を考えると、専用のコネクターを使いがちです。しかしこのトンピーは、安価にうまく端子で接合できるようにしてあり、おもちゃ職人の創意工夫が感じられます。

分解② 「生地を外そう」

トンピーにはとてもかわいそうなことをしてしまいますが、中の構造をもっと知るために生地を外していきます。コツは縫い目部分のみをうまく切って、できるだけ丁寧に外すことです。

理由としては、残酷に外さないこともありますが、製造するときの手順を想像しながら分解したほうが、開発者目線に立てるからです。また、分解後に復元もしやすくなります。

このトンピーは比較的簡単で、上着を脱がせるイメージで、生地を上方向に引っ張っていけば外せます。ところが、所々にくっついて外れない箇所もありました。どうやらグルースティックのような、樹脂用接着剤でくっついているようです。こういった箇所はそのまま引っ張ってもなかなか外れないので、布側を切るか、接着剤を細いヘラやニッパーなどではがします。

布とプラスチックが接着剤でくっついています。 布とプラスチックが接着剤でくっついています。

トンピーの目と鼻だけは生地ではなく、中身のプラスチック部品側にくっついていました。見た目がちょっと怖いですね。

夜中に見たくない外見になりました。 夜中に見たくない外見になりました。

分解③ 「太鼓のなかみ」

次に、太鼓を外します。太鼓はツメで引っかかっているだけなので、細い工具でツメを押すと簡単に外れます。

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この太鼓も分解できます。底面にあった3個のネジを外し、周囲に貼ってある「こぐまのトンピー」のラベルもはがします。

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「太鼓の中には一体どんなヒミツが…!?」とテンション上げ気味で外してみましたが、中身は空っぽでした。しかしながら、和太鼓なども中身は空っぽなので、それが普通です。

宝箱の中が空っぽだったような喪失感がありますね。 宝箱の中が空っぽだったような喪失感がありますね。

簡単に取り外せたので、この部分だけをオリジナル太鼓に交換できそうです。3Dプリンターで自作するのも良いかもしれませんね。また、生地よりも先に太鼓を外した方が分解しやすいことに、後から気づきました。分解には手順書もないので、経験を積むことが大事ですね。

分解④ 「笛の音のヒミツ」

続いて、笛の音のヒミツを探っていきましょう。まず、ネジが見えるところから順番に外していきます。最初は手元の太鼓バチを外しました。

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次にネジ3本を外し、頭を分解しました。すると、中から不思議な形状のものが出現しました。どうやらこの部品に笛の音のヒミツがありそうです。

真ん中に穴が空いています。 真ん中に穴が空いています。

ここを押すと、中から空気が出てきて音が鳴ります。これは形状こそ異なりますが、ブーブークッションの仕組みに似たものです。中の空気が外に押し出され、そのときに口の膜の共振による音が響きわたります。モーターの動きと連動して押されることで、音が鳴るようです。

この不思議な形状の部品は、紙のような材質です。 この不思議な形状の部品は、紙のような材質です。

となると、笛の方はどうなっているのでしょうか? 分解した頭の部品を取り出し、笛を観察してみます。すると、こちらには穴も何もなく、ただの飾りであったと判明しました。笛の音のヒミツは、分解してはじめて分かるところにあったのです。

笛には穴がありません。 笛には穴がありません。

分解⑤ 「動きのカラクリ」

さらに、トンピー自身の動きのヒミツにも迫っていきます。お腹のネジも外して中身を観察すると、バネやギアがありました。これらが複雑にからみあって、トンピーを動かしているようです。

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しかし、一目見ただけではどんな仕組みか分かりません。そこでこの状態でバッテリーをつないで、動いている様子が見て分かるようにしました。

なんだか怖いですね… なんだか怖いですね…

これでなんとなくイメージはつきましたが、まだ理解するのは難しいです。そこで次にギアボックスの中身を観察することにしました。DCモーター1つに対し、何個ものギアが連動していると分かります。また、全てのギアに、動きを滑らかにするグリスが塗られています。

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続いて、トンピーの腕が動いて、太鼓をたたく仕組みについて考えます。この部分は間欠ギアと引張バネで実現されていました。モーターの回転が間欠ギアに伝わり、1回転で3度だけ腕が上に上がります。そしてその都度、バネの力で下へ戻ってきます。

左右同じ仕組みで動きます。 左右同じ仕組みで動きます。

頭が動く仕組みは、リンク機構にあります。回転運動を往復運動に変換するリンク機構で、自動車のワイパーの動きに近いです。この動きで頭を動かすとともに、音を鳴らせるのです。

面白い機構ですね。 面白い機構ですね。

腰が動く仕組みも、他同様にギアの動きが連動して実現しています。こういったさまざまなギアのカラクリにより、トンピーはリズミカルに動くのです。

また、それぞれの動きに緩急があるのには、このギアが一役買っていました。自動車のトランスミッションのようにギアがスライドすることで、動力伝達する対象を切り替えているのです。

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おもちゃを分解して学んだこと

トンピーの全ての部品は、以下の写真のとおりです。外側のカバーは比較的単純ですが、リズミカルな動きの要であるギアは、複雑で面白い機構が数多くありました。一方、中にマイコンや基板などの電子部品は存在せず、乾電池の電源がモーターに直結しているだけでした。

思ったより部品点数は少なかったです。 思ったより部品点数は少なかったです。

メイカームーブメントにより、Arduinoをはじめとしたマイコンや、3Dプリンターを活用することで、似たようなおもちゃを自作できるかもしれません。でもきっとそのほとんどが、たくさんサーボモーターをつけて、がんばってプログラミングすることになるでしょう。トンピーのように、マイコンを一切使わず、1つのモーターだけで複雑な動きにするのは、実はとても難しいのです。

このように、仕組みを知るために買ったものを分解する人は多くいると思います。家電やロボットを分解すれば、最新のコンピューターや、高性能な電子機器について学べますが、おもちゃを分解すると、熟練されたカラクリや、安価にものづくりをする創意工夫の秘訣が学べるでしょう。

日本古来のカラクリ人形のように、少ない動力で多くの動きを実現する仕組みは、とても魅力的なものづくりのひとつです。

でも意外とその技術の多くは、現代のおもちゃに色濃く受け継がれているのかもしれませんね。今後もさまざまなおもちゃを分解して、より多くの技術を学び、どんどんヒミツを暴いていきましょう。

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