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個人で発注できちゃいました

基板にピッタリ! ゴムシートが個人で加工発注できちゃいました

個人で発注できる、さまざまな加工を試してみるシリーズ企画。

1~数個、お小遣いの範囲でどんなことができるのか? 国内、国外問わず、メジャーなものからニッチなものまで、個人のものづくりの幅を広げてくれる加工サービスを使ってみます。

今回はゴムの加工を試してみました。ゴムパーツはどこに発注できるのか、素材にはどんな種類があるのか、見積もりや入稿の仕方、価格など、実際に発注して確かめました。また、発注したものと自分で各種加工を行ったものとを比べ、ゴムパーツがほしい時にどうするのがベターか考えてみました。

作る背景と、どんなものを作るか

以前、自作キーボードを設計し、キット化しました。このキーボード、高さを低くするために底はゴムシートになっていました。これまでは両面テープを貼り、シートは手で切る方式だったのですが、どうしてもクオリティが下がってしまいます。そこで、今回はオリジナルのゴムパーツを作ろう! とゴムシートのカットを発注してみました。

基板に直接ゴムシートを貼ることで絶縁と保護をしている。普段使っているものなので汚れているのはご勘弁を……。 基板に直接ゴムシートを貼ることで絶縁と保護をしている。普段使っているものなので汚れているのはご勘弁を……。

発注概要

発注したのはゴムシートのカットです。表面にシールが付いたCRゴムを、約15cm×10cmのオリジナル形状(曲線あり)に加工してもらいました。2種の形状を各5枚、計10枚を発注。値段は5940円でした(1枚当たり594円)。注文前の見積もりは当日中に連絡があり、発注してから5日で発送されました。

発注先はゴム助を選択

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今回はゴム加工の通販サイト、ゴム助に発注しました。福岡県にある会社のようです。発注にあたり、少量での加工に対応してくれそうな会社をいくつかネットで探し、4社に見積もりを取りました。その際、連絡が迅速で値段も安かったゴム助に決定。

他に見積もりを依頼したのは以下の会社です。どこも1枚から対応してくれるのには驚きました。ただし、同じ条件でも会社によって価格は大きく異なります。50セット100枚の見積もりでは、最も安い会社と高い会社では2倍以上の値段差があります。また、依頼した中には返答が返ってこない会社もありました。見積もり時点では複数に依頼するのがよさそうです。

サービス提供元 価格(税抜)※1 見積もり形態 その他
ゴム助 6000円※2 ・フォーム(メール、FAX、電話も可)
・簡単な形状なら自動算出あり
 
ゴム・クッション本舗
(和気産業)
1万1000円 ・メール(FAX、電話も可) 加工にはR等を指定した図面が必要
ゴム通
(扶桑ゴム産業)
7800円 ・フォームより
・簡単な形状なら自動算出あり
 

※1 5枚×2種の見積もり。
※2 見積もり時と発注時で形状を変更したため、実際に支払った金額とは異なる。

ゴム助とゴム通にはパターンオーダーという仕組みがあり、簡単な形状であれば料金の自動算出が可能です。ブラウザ上でテンプレートを選び、サイズや穴の位置などを設定できるので、CADデータがなくても図面が引けなくてもOK。今回依頼した形状には利用できませんでしたが、即座に価格が分かり、条件を変えて試せるのはうれしいですね。

こちらはゴム通(ゴムキル)のパターンオーダー画面。天然ゴム(NR)なら5cm四方に穴4つで1枚685円。17枚なら1枚当たり467円。 こちらはゴム通(ゴムキル)のパターンオーダー画面。天然ゴム(NR)なら5cm四方に穴4つで1枚685円。17枚なら1枚当たり467円。

また、日本だけではなく中国の加工業者も少し調べてみました。しかし、良いサービスを見つけられず。Alibaba.comでも探してみましたが、最小ロットがだいたい1000から、少ないものでも100からだったので今回は断念。少量でもやってくれるところはあるとは思いますが、見つけられませんでした。

フォームの加工ができるサービスを見つけた。100個以上の注文が必要だが、いつかやってみたい。 フォームの加工ができるサービスを見つけた。100個以上の注文が必要だが、いつかやってみたい。

ゴム助での見積もりの流れ

ゴム助のオーダーカットのページから、近い形状を選びます。今回は「複雑形状」を選び、フォームから見積もりを依頼します。お問い合わせ内容に素材、枚数など必要そうな情報を入力し、加工データを添付します。この時点では価格が全く分からなかったため、複数の数量で見積もりを依頼しました。

また、ここでシール(両面テープ)が付けられることを発見。基板裏に貼り付けたいので、シール付きでお願いしました。実際に「問い合わせ内容」に書いたのは、以下の文面です。

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見積もりはフォームのほか、メールやFAXが利用できる。 見積もりはフォームのほか、メールやFAXが利用できる。

 

ゴムシートのカットの見積もりをお願いしたくご連絡しました。
試作のため少量ですが、ご検討の程よろしくお願いいたします。
・用途:キーボード下の絶縁/保護
・厚み:1mm
・材質:クロロプレンゴムシート(CR)〈硬度60〉
※厚みが1mmで色が黒であれば、他のものでも構いません。
より適当なものがあればご提案ください。
・片面に両面テープ
・個数:5セット、10セット、50セットで見積もりをお願いします。
不明点がございましたらご連絡ください。よろしくお願いいたします。

 

見積もりフォームから送れるファイル形式はDXF、DWG、PDF、BMI、IGES 、JIP/CL 、JWC 、JWWW 、EIA 、HP-GL 、GP-FL 、RLC 、BMP 、TIFF 、SGD 、SFC 、GIF 、PNG 、JPG。私は図面の描き方が分からないので、DXFのカットラインデータをそのまま送りました。きちんとした図面でなくても、不明点があれば先方からメールで質問がくるので、大丈夫でした。

申し込み後、即日担当の方からメールが届きました。サイズとシールを貼る面、カットラインの確認でした(データ不備で塗りつぶしが入っていたのですが、その取り扱いについて)。回答と共に、2種のデータが同じものとの誤解があったので、修正した図を送りました。

確認で帰ってきた図(左)と修正した図(右)。 確認で帰ってきた図(左)と修正した図(右)。

他の会社でも、サイズの確認は必ず入りました。DXFだけだと環境設定で大きさがずれることもありますからね。この後見積もりするときには必ずサイズを入れるようにしました。

見積もり時に迷ったのは、ゴムの種類

悩ましかったのがゴムの種類。ゴム助のオーダーカットで選べる素材は大まかな分類だけで20種類以上、さらに厚さや硬さのバリエーションを入れたら膨大な種類があります。キーボード下に敷くゴムで、一番の目的は絶縁と保護、色は基板に合わせて黒。それに適度なクッション性があり、滑り止めの役割も多少持たせたい。ゴムの特性ページとにらめっこしながら選びます。

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値段と相談すると、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が良さそうです。屋外用途ではないのでクロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴムの3つに絞り、実物を店舗で購入して比べてみました。

左から天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム。手前が1mm厚で奥が0.5mm厚。 左から天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム。手前が1mm厚で奥が0.5mm厚。

見た目はほぼ同じに見えます。強いて言えば、天然ゴムとニトリルゴムはペタッとした表面なのに比べ、クロロプレンゴムはマットで若干さらっとしている感じでしょうか。質感は、天然ゴムはしっとりした感じで、他2つはそれに比べるとしっかりした弾力がある感じ。ニトリルゴムとクロロプレンゴムは私には見分けが付きません。一番違いを感じたのはにおいで、天然ゴムはいかにもゴムというにおいがするのに対して、ニトリルゴムはにおいが弱く、クロロプレンゴムはゴム臭さをほぼ感じませんでした。机に押し付けたときの滑りにくさは、はっきり分かる違いはなかったものの、クロロプレンゴムが一番だと感じました。正直どれがいいかははっきり分からなかったのですが、クロロプレンゴムを使ってみることに決めました。

各ゴムの比較

  天然ゴム ニトリルゴム クロロプレンゴム
見た目 ペタッとしている ペタッとしている 若干マット
触った質感 しっとり 硬い弾力 硬い弾力
匂い 強いゴム臭 弱いゴム臭 かすかなゴム臭

同じ種類のゴムでも硬さや配合する材料によって印象が変わるので、あくまで今回揃えたものの印象です。

WEBページからスムーズに発注

この後、一度形状を変更し、5セットの発注をメールで打診します。

手書き&ハンコのスキャンで見積もりが来るので古い感じなのかな? と一瞬心配になったが、メールのレスポンスは早く、サイトや決済はシステム化されており、スムーズにやりとりできた。 手書き&ハンコのスキャンで見積もりが来るので古い感じなのかな? と一瞬心配になったが、メールのレスポンスは早く、サイトや決済はシステム化されており、スムーズにやりとりできた。

再見積もりが送られてくるとともに、発注用のURLが発行されます。このページでは入稿などはなく、購入のみ行います。クレジットカード、Amazon Pay、コンビニ決済、銀行振り込み、代金引換が利用できます。普通のネットショッピング感覚で支払いを完了できました。

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納品物が到着、チェックしてキーボードに貼る

購入から5日後に発送連絡が来て、およそ1週間後に到着しました。きれいに梱包され、思ったよりしっかりとした重みがあります。

梱包を開くと美しくカットされたゴムが! 正直ゴムはキーボードのサブ的なパーツのため、加工を外注することでそれほど大きな変化が出るとは期待していませんでした。届いたときも「ゴム来たな」ぐらいのテンションでした。が、開けてみるとやはりきちんと加工されたものは良いですね、美しい。思いのほかテンションが上がってしまいました。

断面もきれいですし、シートの曲がり、ゆがみもありませんでした。以前使っていた両面テープ付きゴムシートは丸めた状態で届くため、どうしてもシートの曲がりがあったのですが、それが解消されたのも良かったです。

小さい方(左)のサイズを実測してみたところ、横146.99mm(データは146.98mm)、縦106.20mm(データは106.19mm)と0.01mm差。ノギスの押さえ方次第ではぴったり。 小さい方(左)のサイズを実測してみたところ、横146.99mm(データは146.98mm)、縦106.20mm(データは106.19mm)と0.01mm差。ノギスの押さえ方次第ではぴったり。

いよいよキーボードに貼ってみます。曲線部分がぴったりと重なるのがうれしいですね! ただ、ほんのわずかですが基板よりゴムの方が大きい。ゴム側はサイズぴったりで、基板側が少し小さかったようです。基板に貼りたい方は基板を実測して依頼するのがベターかも(今回は基板が届く前にゴムを発注したのでこうなりました)。

曲線のラインがきれいに一致して気持ち良い。 曲線のラインがきれいに一致して気持ち良い。

自分で加工した場合と比べてみた

ゴムカットは自分で加工するという選択もあるため、いくつかの加工法を試してみました。ハサミで切ったもの、レーザーカット、カッティングプロッターでの加工を比べてみます。

まずハサミで切ったもの(材料は注文したのと異なるNBRゴム)。器用さが試されます。直線はがたつきがあるし、曲線もカクカクしてしまっていますね。また、シートが円柱状に巻かれていたため、波打っています。クオリティはいまいち。

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次にレーザーカットしたものです。形はきれいに出ていますが、すすがたくさん出てしまいました。特に切り口は、拭くのに使った紙が真っ黒になるくらいすすが出ています。拭きとった後は、ぼそぼそした感じもなくきれいです。ただ、テープの剥離紙が少し焦げて茶色くなってしまっている部分がありました。

また、拭き取った後は、少しですがゴムが焦げたにおいもあります。レーザー用のゴムであれば焦げやにおいは抑えられます。しかし、後処理や焦げなどは、自分用の試作品であれば気になりませんが、頒布などには厳しい印象。

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そして、より期待をしていたのがカッティングプロッター。しかし、自宅のカッティングプロッター(CAMEO3)では、一番強力な設定にしても1mmのゴムは切りきれませんでした。ゴムの種類ごとに試してみたのですが、CRゴム、NBRゴム共に切れ目は入るものの完全につながっていました。唯一NRゴムは歯が貫通しているところもあり、引っ張るとちぎれて取り外せました。0.5mm厚のシートはカットでき、切り口もきれいでした。厚さによってはカッティングプロッターを使うのが良さそうです。

1mm厚はどの種類のゴムでも切れなかったが、刃の種類によっては切れるという情報もあった。 1mm厚はどの種類のゴムでも切れなかったが、刃の種類によっては切れるという情報もあった。

オリジナルパーツの選択肢にゴムが加わる

ゴムは、自分で加工しようとすると案外難しい素材というイメージがありました。特に厚みがあるものはきれいに加工できず、これまでは既製品で使えそうなものをなんとか探して使っていました。しかし調べてみると、1枚から加工を発注できることが分かりました。自分で加工したものより完成度の高いものが得られるし、値段も、本音を言うともう少し安いとうれしいですが、この数量での特注と考えると安いと思います。

今回のような特殊形状の場合、Webのみでは完結せず、メールで担当者とのやり取りが発生するので多少抵抗感があったのですが、やってみたら対応は早く、面倒さは感じませんでした。

1~5枚程度の試作であれば、薄めのゴムを使ってカッティングプロッターで自作、それ以上であれば発注する、というのが今回やってみての自分の結論です(家にカッティングプロッターがあることが前提になりますが)。なにより、自分のものづくりにオリジナルのゴムパーツという選択肢を持てたのが収穫でした!

完成度が増した自作キーボード「Hatsukey」。 完成度が増した自作キーボード「Hatsukey」。

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