新しいものづくりがわかるメディア

RSS


1500サイクル後でも80%の充電容量を維持するナトリウム硫黄電池を開発

独マックスプランク・コロイド界面研究所(MPICI)の研究チームは2025年1月25日、ラベンダーオイルの主成分であるリナロールを利用して、ナトリウム硫黄電池の寿命と貯蔵能力を向上させる技術を開発したと発表した。風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーから発電した電力を、より効果的に蓄電できる可能性がある。

再生可能エネルギーで発電した電力を需要のないときにどのように蓄電するかは、重要な課題だ。大規模な蓄電池は有望な解決法の一つであり、ナトリウム硫黄電池にはリチウムイオン電池にはない利点がある。第一に、ナトリウム硫黄電池の材料はリチウムイオン電池よりもはるかに容易に入手できる。また、リチウムイオン電池の材料であるリチウムやコバルトは採掘に伴って環境を破壊するため、地域社会や政治に混乱を引き起こすこともある。

一方、ナトリウム硫黄電池には、重量当たりのエネルギー貯蔵量がリチウムイオン電池よりも少なく、耐久性が劣るという欠点がある。通常、ナトリウムイオン電池の蓄電容量は数回の充電サイクルで大幅に低下する。その主な原因は、正極で生成した多硫化物(polysulfide:ポリスルフィド)が負極に移動して負極と反応する「硫黄のシャトル効果」と呼ばれる現象だ。

そこで研究チームは、硫黄のシャトル効果を防ぐ戦略として、ポリスルフィドを炭素系ナノ材料のケージに物理的に閉じ込める手法を提案した。このナノ材料は硫黄とリナロールを反応させて生成する炭素と硫黄の複合体で、毛髪の太さの約10万分の1程度の細孔を持つことを特徴とする。ポリスルフィドはサイズが大きいため細孔を通過できないが、小さなナトリウムイオンは自由に行き来できるため充放電が可能となる。

実証試験では、1500回の充放電サイクル後でも元の充電容量の80%以上を維持している。さらに硫黄電極を取り囲むケージは、ナトリウム硫黄電池の耐用年数を延ばすだけでなく、貯蔵容量も増加させる。硫黄がケージに固定されるため、ほぼ完全に反応に利用できるためだ。

MPICIのグループリーダーであるPaolo Giusto氏は、「自然を創造的に見つめることで、エネルギー転換がもたらす多くの課題に対する解決策を見いだすことができます。私たちの開発は近い将来ますます注目を集め、この技術が研究室から実用化へ飛躍する日が来ると確信しています」と述べている。

研究成果は、『Small』誌に2024年10月13日付で公開されている。

fabcross for エンジニアより転載)

関連情報

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る