ユニロボットインタビュー
パートナーの個性を学習して家電を拡張するAIロボット「unibo」——スタートアップが大企業と連携するコツ
深センで苦労した量産製造
——量産は海外ですか?
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酒井
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量産製造は中国の深センの工場で行い、量産試作は日本の浅草ギ研さんにお願いしました。初めての量産製造でしたので、計画通りに進むことはありませんでした。 当社側の仕様の設計漏れもありましたし、中国とのコミュニケーションの難しさや、各製造工程でも品質面での隔たり等もあり、リリースの延期も経験しました。それでも深センで工場を経営しているJENESIS HOLDINGSさんを中心としたパートナー会社のお陰で、量産までこぎつけることができました。
——製造部品も海外で調達していますか?
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三瓶
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どうしても中国で調達できない部品がいくつかあり、一部の部品は日本から送っていますが、ほとんど中国で調達しています。
中国での部品調達は、とても苦労しました。中国の部品メーカーのなかには、品質を確保した部品を提供しようというよりも、とりあえず部品を出荷して、納品先から問題の指摘があれば対策や返品対応するというスタンスのメーカーもいます。
そのため、部品を使う側としては検品や動作確認を適切に行い、品質の良し悪しを選別する能力が必要ということになります。実際にuniboの中国生産で、その必要性を痛感させられました。
ただ、JENESISさんには、部品の調達から検品方法までアドバイスをいただき、生産が始まってから発覚した設計変更要件に対しても、小ロット製造にも関わらず対応をしてくれました。スタートアップと何度もお仕事をして実績があるJENESISさんだからこそ柔軟に対応してもらえたと思います。
法人向けの販売から開始
——家庭向けではなく、法人向けの販売を先に開始したのはなぜでしょうか?
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酒井
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家庭向けはマーケットの予測が難しいんです。なおかつ、ロボットの価格はそれなりにしてしまうので、販売予想を立てにくい。サービス内容は家庭向けも意識して開発していますが、アルメックスや富士通など、法人向けの販売チャネルを持つ企業が弊社の株主にいることもあり、まずは法人向けに販売しようと事業計画の段階から考えていました。
——大手企業と連携した経緯を教えてください
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酒井
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商社勤め時代に、各業界のトップや、大手企業と連携する大切さを学んできました。その経験も踏まえて、信用力や、リソース、企業価値などスタートアップのステージそのものを引き上げてくれるのが大手企業との連携の持つ価値だと感じています。スタートアップ同士での連携は、お互いリソースが足りていないことが多いため、無理はしないで、タイミングがあえば連携していくスタンスでいます。
また、大手企業との連携は、黎明期であるコミュニケーションロボット市場を考えると、販売面でも協業していくことで、一緒に市場を開拓していけるメリットがあると思っています。一方で、大手企業は決済承認まで時間がかかりますし、スタートアップと連携して相乗作用があるのか、細かく確認が入ります。そこはしっかりと最後までフォローして進める必要があります。
家電にもuniboのAIエンジンを搭載
——今後の展開について教えてください
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酒井
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uniboに自分の名前を呼ばれて、毎日会話をしていると、そこに愛情が芽生えて感情移入してきます。自分のことを分かってくれる、探してくれる、話しかけてくれる。高齢者から手放せなくなったという声を聞いています。家族との思い出サービスとして、過去の写真を表示することも考えています。思い出にふけることは、心理療法のひとつである「回想法」にも良いとされています。
米国では、AIスピーカーが1000万台以上も売れていて、日本でも普及し始めていますが、日本人はスピーカーに話しかけることに抵抗や恥ずかしさを感じるという声も少なくありません。日本人はアニメに慣れ親しんでいるからこそ、最初に受け入れやすいAIのインターフェイスは、アトムやドラえもんのようなヒューマノイドロボットじゃないかと私は考えています。uniboも親しみやすいように、ヒューマノイドロボットとしてデザインしました。ヒューマノイドロボットと会話することでAIに慣れ、いずれはスピーカーと会話することにも恥ずかしさを感じなくなる。現在のuniboは、ヒューマノイドロボットで、音声会話からネットワーク経由で接続した家電を操作できますが、将来的には、家電そのものにuniboのAI/クラウドエンジンを搭載し、例えば、冷蔵庫や洗濯機、お風呂場のリモコン等が利用者にパーソナライズされる未来を描いて開発を進めています。