新しいものづくりがわかるメディア

RSS


midiglue開発者インタビュー

試作開発をオンラインで集まりながら1カ月半で実現——MIDI/CVコントローラー&エフェクター「midiglue」

本業を続けながらサイドプロジェクトを進めるのは難しいと聞くことがある。メンバーが増えると、時間も合わなくなり、場所も離れているので、モチベーションを維持するのが困難になってくる。

「midiglue」のプロジェクトメンバーは、筑波大学と東京大学出身の学生や新社会人が中心だ。メンバーのほとんどがサイドプロジェクトとして参加しているにもかかわらず、決められた時間の中、決まって集まるような場所もなく、着想から1カ月半という期間でプロトタイプを完成させている。

2018年6月にKickstarterで製品化を目指すための資金を募るキャンペーンを開始し、目標金額の4倍を超える出資を集めることに成功した。現在は、indiegogoで追加の支援を募集している。本業があるにもかかわらず、どのようにして、限られた時間の中で開発を進めて進捗を共有し、短期間でプロトタイプまで開発することができたのか。sigboost代表取締役の青木海氏とエンジニアの野崎悦氏にお話を伺った。(撮影:加藤甫)

1台あればライブセットが構築できるプログラマブルな楽器を開発

「sigboost」は2015年に、筑波大学情報学群情報メディア創成学類出身の先輩とともにスタート。アーティストによる芸術表現の可能性を広げるためのプログラマブルな楽器の開発を目指し、情報処理推進機構(IPA)の未踏IT人材発掘/育成事業(以下:未踏)に採択される。筑波大学や東京大学出身のメンバーを増やしながら、プロジェクトを進めてきた。

そして2018年、製品として販売を目指すために、sigboostで構想していた研究領域から機能を一部切り離した「midiglue」プロジェクトを新たにスタートする。

——midiglueを始めようと思ったきかっけは?

青木

青木さん

「昔からMax/MSP(映像、音楽、3Dグラフィックス、フィジカルコンピューティングを実現するためのプログラミング環境)でプログラミングして、楽音を合成する電子楽器シンセサイザーを作るのが好きでした。あらかじめ作られたCPUコアと周辺回路でシンセサイザーのソフトウェアを組むと、細かく複数の処理を回さないといけないときに時間が掛かって大変です。アルゴリズムの処理よりも、ソフトウェアの処理の高速化に気を使います。

その後、FPGA(論理回路を書き換えて任意の処理をハードウェア化できる半導体デバイス)でシンセサイザーを作ってみました。必要な機能だけ並列化して高速化できるので、複数の処理に掛かる時間を気にしなくても良くなりましたが、今度はFPGAのプログラミングが大変でした。その時に楽器をソフトウェアのようにプログラミングで組めるけど、ハードウェアのように動作するものがあったら面白いなと思ったのがmidiglueのきっかけでした」

sigboost代表の青木氏。 sigboost代表の青木氏。

 ——midiglueはどのような特徴がありますか?

青木

青木さん

「midiglueは、MIDI、USB-MIDI、CV/GATEといったコントロール信号をルーティングさせたり、それらにエフェクトをかけたりすることができます。本体のプリセットでエフェクト処理も用意してありますが、ユーザーがソフトウェアエディタで新しいエフェクトを追加し、複雑なルーティングを作成することも可能です。

高価で単一機能しかないコンバーターやガジェットを購入したりしなくても、midiglueを1台用意すれば、ライブセットを構築できるようになります」

midiglueの試作品rev1。3枚の基板を重ねて3Dプリンターで作った外装で制作している。 midiglueの試作品rev1。3枚の基板を重ねて3Dプリンターで作った外装で制作している。
製品版に向けて筐体デザインとマイコン、バッテリーを変更した試作品rev2。 製品版に向けて筐体デザインとマイコン、バッテリーを変更した試作品rev2。

一部機能を切り出し、使い方を明確にした「midiglue」

——midiglueの開発を始めたのはいつ頃でしょうか?

青木

青木さん

「2018年3月にSXSW Trade Showから帰ってきて、メンバーで集まって話し合い、sigboostで構想した機能を切り出して、ユーザーにもっと分かりやすい楽器を作ってみることに決まりました」

野崎

野崎さん

「FPGAベースで開発していたsigboostに対して、midiglueはマイコンベースで開発しています。sigboostの一部機能を切り出したといっても、ほぼゼロからの再スタートでした」

——機能を切り出した理由は?

青木

青木さん

「sigboostは壮大なテーマの研究で、すぐに実装できるものでもなく、開発を進めていても進んでいる感じがしませんでした。製品の完成までに時間が掛かってしまうとモチベーションを維持するのも難しくなってきます。そして、sigboostを展示会でユーザーに実際に触ってみてもらったとき、機能が多すぎるというフィードバックが多かったこともあり、sigboostのテーマで実現したかった機能を3つの分類に分けて、その一つをmidiglueとして形にしました」

midiglue用にコンパイルできるソフトウェアエディタ。ビジュアルプログラミング言語でエフェクトを組むことができる。 midiglue用にコンパイルできるソフトウェアエディタ。ビジュアルプログラミング言語でエフェクトを組むことができる。

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る